ねぇ、メガネ、かけない? -4- | 嵐の勿忘草

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入り口のドアを抜けて、ドアが閉まった途端。
外の音が消えた。
車の走る音、子供の声、井戸端会議の声、自転車のベルの音、救急車のサイレン、商店街の呼び込みのおじさんの声、ギターを鳴らす音、ピアノの音。
いろんな音がごっちゃになって聴こえていたのに。

ピタっ、っと……雑音が消えて。
シン、と静まり返った店内に響くのは、時計が刻む……音だけ。

薄暗い店内は……お化け屋敷みたいな雰囲気があって。
怖い、怖い、怖い!!
だから!苦手なんだってば!お化けとか幽霊とか!!

サトシは店の中をキョロっと見渡して。
クンって鼻を鳴らした。


「サトシ……だい…じょうぶ…なの?」

そこの隅からわーーーっ!とか言って…なんか出てこないかな?
サトシの背中に隠れられないかな?
サトシの方が……ちょっと小さいかも?これじゃ隠れられないか?
それでも、一人でポツンと立ってるよりは、絶対マシ!
サトシの背中にくっついて、離れないように肩につかまった。

「ただいまぁ~」

サトシがのんびりした声で奥の方に声をかける。
え?ここ、サトシんちなの?
疑問を挟む間もなく、サトシが奥へと歩き出す。

店……なのに…見やすく整理整頓されてるとか…なくて。
いろんなものを避けながら、行かないと辿りつけなさそう。
人のことは言えないけど…お店ならもうちょっとなんとかした方が…いいんじゃないかな?

油断してるとサトシに置いていかれそうになる。
スタスタと奥に進んでいくけど……なんで、こんなに奥までが遠いの?
ずいぶんと踏み込んで来た気がするけど……。


壁一面に時計。
鳩時計、振り子時計。からくり時計。
カチカチと音がなってて…不規則になってるように聴こえる。



店の一番奥に大きい机があった。
俺らに背中を向けて作業している、その背中は…おじいちゃんの姿を思い出させた。


古いカメラを手入れしていたイナカのおじいちゃん。
仕事で使っていたという外国製のその小さめのカメラは…おじいちゃんの仕事の相棒だったんだよ…って、教えてくれたことがある。
小学生の俺にそっと持たせてくれて…使い方を教えてくれた。
大切に大切にしてたんだろうなって…おじいちゃんの手つきだけでわかった。
いたずらばっかりしてたけど…おじいちゃんのそのカメラにはそれきり手を触れることはなかった。
ホントに大事にしてるものは子どもにだって分かるものなんだよ。


サトシのおじいちゃんなのかな?
何か作業しているのか…俺らに背を向けたまま。

「ただいまぁ~」

サトシがまたのんびりと声をかけた。


「あぁ。帰ったのか?」

椅子をキーっと回してこちらを向いた…あれ?若い?
このお店から想像してたより……ずっと若い人だった。

サトシの…おとうさん…よりも若そうな?男。


まだ、サトシにつかまったままの俺をちらっと見た。

「こ……こんにちは……。」

しりすぼみに消えた声にかぶせるように…その男が言った。


「そのメガネかけてるってことは、この子を選んだのか?」
「うん!ショウくんっていうの」

男は俺を上から下まで観察すると…

「じゃあ、試験を受けてもらわないとね?」





☆★☆


続きお願いします〜(笑)
方向性…どうでしょう?




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