私の勝利を祝福しないでください ユリア・リプニツカヤ | WFS JAPAN

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Julia Lipnitskaia: “Do not congratulate me on the victory”
By Vladislav Luchianov


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先日行われた2013ロステレコム杯で優勝を納めたロシアのユリア・リプニツカヤ。参戦したGP2戦のどちらともで勝利を納めるという完璧な結果を持って、彼女にとって初めてのGPファイナルへ出場することが決まった(前回は怪我の為に欠場)。そんな彼女は今回のロステコレムでのFSに対し、とても厳しい見方をしている。

記者達が彼女に祝福の言葉を述べ始めた時、彼女は自分に対し非常に厳しい意見を口にした:『どうかお祝いを言わないで下さい。祝福していただけるようなことは何もないのですから。』当然のように記者達が発した『それは何故?』という質問に彼女は、クリーンなパフォーマンスがあってこそ勝利に値し、今日の彼女のパフォーマンスは彼女のキャリアの中でも最悪なものであったと言ったのだった。

歴代3位のSPスコアとなる72.24ポイントを受けた、あのように素晴らしいSPを見せることが出来たことを考えると、ユリアの気持ちも理解できるのではないだろうか。15歳の彼女は本当にFSでもそれと同じくらいのレベルのパフォーマンスを見せたかったのだ。その上でスケートカナダからの勝利を繰り返したかったのだ。

しかしスポーツはやはりスポーツであり、そこでは何でも起こりうるものなのだ。それでも、彼女のように歳若い選手から、そのように自分に厳しい言葉が出るのは特別な尊敬に値するのではないだろうか。それはユリアがどれ程このスポーツに対し真摯であるかを物語っており、今回のFSは問題外だったということを認める言葉だった。

記者会見で彼女は、プログラム冒頭のコンビネーションジャンプが決まらなかったことが、FSがクリーンにならなかった大きな原因であると言った。そしてロシア版Sovsportとのインタビューでは、トレーニングセッションで物事は更に悪い方向へ向かったことを認めた。

『練習の時に一度、私は2回連続でコンビネションジャンプを失敗したことがあったのですけど、その時私はちょっと取り乱し、全部放り出してリンクの隅に行って泣いたんです。それから少しして落ち着きを取り戻して、またプログラムを滑りました。でも大会では放り出すことも出来なければやり直すことも出来ません。私は危機的状況の時のどうすべきか、そしてミスの後にはどう立て直すかを学ぶ機会を自分で奪ってしまったのです。』そう彼女は告白した。

それでも彼女はロステレコムで、自分を取り戻し戦いを続けることが出来たと言った。

『幸いにも私は感覚を取り戻し、コンボを3-2と単純化してこれが私を正常値へと導きました。今はその全てを評価するのは難しいですが、でもコーチと私は今回のケースについて話し合い、今回のようなコンボミスという不愉快な驚きがあった場合にどう対処するのかを決めたいと思います。』とリプニツカヤ。

ユリア・リプニツカヤは初めてのGPファイナルに出場する。彼女がモスクワで優勝したことによって、同じくロシアのエレーナ・ラジオノワもまたファイナルへの出場権を手に入れることが出来た。よってファイナルに出場するロシア女子達は:リプニツカヤ、ソトニコワ、ポゴリラヤ、そしてラジオノワの4人。彼女達はアメリカのアシュリー・ワグナー、そして2度の世界女王である日本の浅田真央と日本で顔を合わせることになった。


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ユリアに関するこのアーティクルの続きとして、私は彼女のプログラムとその設定についての詳細をいくつか述べたいと思う。ポイントは、どちらのプログラムもユリア自身が選び、そして深夜に振付されたということだ。

どちらのプログラムも---SPはマーク・ミンコフの“You Don’t Give Up on Love”(愛はまごころ)、FSはジョン・ウィリアムスの“Schindler’s List”---はどちらも2002年オリンピック銀メダリストのイリヤ・アベルブフによって振り付けられた。彼はとても優秀な振付師ではあるのだが、自身でも様々なショーに出演したりと多忙を極める人でもある。そんな彼がユリアの為に持てた振付の時間は真夜中しかなかったのだ。

ユリアが語ったところによると、深夜に開始された振付だがSPが終わったのが3時、FSが終わった時には朝の6時になっていたという。勢いのあるシーズンを過ごしている今、その深夜の作業も価値があったと確信を持って言えるのではないだろうか。

今シーズン、そのような感傷的かつ悲劇のイメージのユリアを期待していた人はほとんどいなかったのではないだろうかと思う。しかしどちらのプログラムもユリアにとても合っているというだけのものではなく、それらは彼女の身も心も、そして魂をも映し出している。

私達は“Schindler’s List”のテーマについては良く知っているが、“You Don’t Give Up on Love”に関してはロシア人以外には馴染みが無いのではないかと思う。

それを作ったマーク・ミンコフはソビエト/ロシアの作曲家である。彼の作品はいくつかのオペラやバレエ、そしてステージパフォーマンスや映画の中でフューチャーされている。1970年代後半にミンコフは彼の作った“You Don’t Give Up on Love”を歌手のアラ・ブガチョワに提供した。彼女が歌ったことによって曲は広く知られるようになり、今でもロシアやその周辺諸国で最も良く知られている曲の1つである。歌詞は詩人ヴェロニカ・トゥシュノワによって書かれた。


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残念ながら、今現在この歌の歌詞の一般的に認められている英訳がない。しかし私は、Evgenia Sarkisyantsによって書かれた最も最適だと思われるバージョンの1つを見つけることが出来た。それを読んだ後には、ユリア・リプニツカヤが彼女のSPで見せているものをより完全に理解出来るのではないだろうか。そう望んでいる。

この記事の最後には美しいオリジナルパフォーマンスの動画も添えている。歌を楽しんで。そして愛する人、愛するものを諦めないで!



You Don’t Give Up on Love  ~ 愛はまごころ ~


誰かを愛する時、それを否定しないで

人生は明日の朝終わったりなどしない

私は一人あなたを待つのを止めるわ

そしてあなたは何の前ぶれもなく戻ってくるの


あなたはブリザードの音にのって

夜が雪混じりの混乱をもたらした時

あなたがその長さを思いだす時

お互いの場所はまだ冷えたまま


あなたは私の温もりを望むでしょう

一度も魅力を見つけなかったこの温もりを

公衆電話に並ぶ3人の列

あなたが耐えるには長すぎるかしら


時はカタツムリのようにゆっくりと

汽車でも 電車でも ゆっくりと

そして雪は進路を隠す

出入り口までの遠い淵


さらさらと音を立てる本 かちかちと刻む時計

早くもない おかしくもない 私の時を過ごす

私の心があなたのノックを感じる時は

あなたの心はまだドキドキしているかしら


愛の為に わたしは全てをする

私は激しく信じる

あなたを待たざるをえないから

1日中 戸口のそばで そこから離れずに