おはようございます。
到知3月号より、スポーツドクター辻 秀一さんの世界を紹介します。

フロー理論、がある。
フローとは、外部環境に関係なく、その状況に即した最高のパフォーマンスを発揮できる心の状態を指す。
いわば、“揺らがず・とらわれず”という精神状態で、常に機嫌のよい感じとでも言えばよいだろうか。

スポーツ心理学でいわれる「ZONE」の概念に近いかもしれない。
野球ならボールが止まって見える、ゴルフならカップが大きな穴に見える、といった心の状態である。

「揺らぐ」とは、ムカつく、がっかり、不安といった、感情が揺れ動いている状態。
「とらわれる」は、過去の経験に基づいて脳が勝手に意味づけをし(「認知」の脳)、思い込みをつくり出している状態。

最大の敵は、相手ではなく、自分の中にあるとらわれ。また目標へ向かう間に揺らぎが生じると、そこへは到達しにくくなる。

フロー状態をつくり出すにはどうするか。私がトレーニングで実際に行うのは次の三つ。
一、 自分の心の状態に気づく力をつける。認知の脳は普段、「天気が悪い」「電車が混んでいる」など、外側の出来事のほうばかり向いている。そこで脳を内側に向かせ、自分の感情に気づく練習をまず徹底的に行う。
二、 フローでいることの価値を認識する。例えばノンフローよりもフローのほうが、仕事の効率がよくなる、夜ぐっすり眠れるなど、フローが起こった先にどんなよいことが待っているかを考えてもらう。
三、 なぜ人間はノンフローになってしまうのかという仕組みをよく理解する。先述したように、人間の脳はあらゆることに自分勝手な意味づけをしようとする。例えば雨が降れば、「嫌だなあ..」という意味づけをし、ノンフローな心を生みだしてゆく。この意味づけをしてしまっている自分自身に気づく力さえあれば、出来事に心が支配されず、そのとらわれからも離れることができるのである。