我が家では、爪の垢ほども脳みそがないと認定されただんご。
でも、優しく人なつこく我慢強いのが美点。
子どもたちにいじられてもじっと相手をしてくれる。
うちは、お釜でご飯を炊いている。
自動炊飯器のように、好きな時間にご飯が炊きあがるような便利さはないが、ひとつだけ、美味しいものができる。
それはおこげだ。
うちでは夫もお釜でじょうずにご飯を炊くのだが、上手すぎてすべて真っ白いご飯、おこげはできない。
私はがさつなので、必ずといっていいほどおこげができてしまう。
しかし、このお釜の底のおこげをこそいで、おしょうゆをたらして塩むすびにすると、ほんとうに香ばしくて美味しい。
私の好物だ。
私の子どもの頃は、自動炊飯器が普及する直前で、母はよくおこげでこうしておむすびを作ってくれた。これが欲しくて、私と妹は、ご飯が炊きあがるたびに「おこげない?」と、母につきまとった。
あれから40年。
うちの子どもたちも、おこげのおむすびが大好きだ。
私がご飯を炊くときには、必ず「おこげできた?」と、聞く。
それまでは、おこげができないようにこまめにガスの火を見ていたりしたが、このごろは、わざとぞんざいに炊く。
「おこげおこげ」と、できた塩むすびは奪いあいで、私の口にはひとつぶも入らない。
子どもは、こういう素朴な食べ物が好きな生き物だ。
サンドイッチを作るときに出る、パンの耳も大好きだ。
あの、ちょこっとだけバターがついていて、ハムや卵の切れはじがわずかについているものが、美味しいのだ。
私も子どもの頃、サンドイッチのパンの耳も好きだった。
そういえば、太巻きのはじっこも子どもの好きなものだ。
おうちで料理するときに出る、あまりものや切れはじをつまみぐいする子どものぜいたく。
こういう食べ物が、意外に一生の記憶に残るのだ。