160526_1224~01.jpg

著者:宮下 奈都
出版:双葉社


内部告発によって、贈賄の罪が明るみに出る前に失踪した男性と、その男性の周りの人々の話です。
オムニバス形式で、それぞれの物語は男性の妻の視点での話、娘が視点の話、浮気相手、姉、同僚・・・と全部で六話。

だけど、失踪男性自身を主人公にしたお話はないんです。面白いですよね。

明らかに、その失踪男性を軸にした関係性なのに。
その男性が、結局何を思い、何をしたのか、本当は何を考えていたのか?明確な正解と言うべき答えは出てこないんですが、それぞれの話の背景を考えると少し読み取れるようになっています。


優しくて残酷で切なくて。
人の弱さと、それでも強くありたいと思う気持ちが悲しくて。

初めて読む作家さんですが、とても透明感のある文章だなぁと思いました。
本の表紙のように、柔らかな風が吹きぬけて行く感じが合っているな~と思いました。


最近少しだけ、嫌なことがあって、気分転換に偶然手に取った本ですが・・・。
気分転換どころか、どっぷりと負の感情が押し寄せてきて(笑)
泣かないように笑っていよう・・・と思ったのに、まさかの『涙』が物語の隠された主軸だし。
あ、でも泣いてはいませんよ。
偶然か必然か・・・。
まとまった時間がなくて、最近は読むといっても漫画や雑誌が多かったですが、こうなったら、この人の他の本も読んでみよう!
そう思います。


たくさんの登場人物の中で、クロダトウタ君という高校生が出てくるんですが、この本の登場人物の中で一番好きです。
私的には彼の存在に救われました。
クロダトウタ君が出てこなかったら、ただ悲しいだけの物語になっていたかも?


次は何を読もうかな~。