このリンク先の写真、歴史的 
 ポーランドの国会議員らが、ポーランド大統領がACTA条約に署名したことに反対するために、99%の代表者的存在アノニマスやウィキリークスのシンボルとなっているイギリスの革命家「ガイ・フォークス」のマスクでを付け、自らの意思を表明しているところです。

1月30日 【venture Beat】 http://venturebeat.com/2012/01/28/what-is-acta-and-why-are-thousands-of-europeans-protesting-it/

「ACTAって何ですか?どうしてヨーロッパで何千人も反対しているんですか?」

 ヨーロッパ人の頭がおかしくなってしまったんでしょうか?アメリカ人が今まで聞いたこともない貿易協定が海の向こうで激しい憤りや反対運動を引き起こしています。

 1月26日、27か国あるEU加盟国のうち22か国が東京でACTA(模倣品・海賊版拡散防止条)に署名しました(日本外務省HP)。その反応として、何千ものポーランド人が街頭を行進し、ポーランド国会議員がガイフォークスのマスクを着け、EU議会の議員が抗議活動として辞任しました。

それとは対照的に、アメリカ大統領バラクオバマはUSを代表して2011年10月1日にACTA条約に署名していますが、それに気づいた国はあまりありません。しかしその翌月に、SOPAというよく似た法案が国会で提案された際には、最終的に1月18日の世界中のインターネットで抗議活動を起こすという巨大な対立を引き起こしました。SOPAはほとんどひん死状態ですが、ACTAはまだ生きています。

 ではACTAとは一体何で、こんなに怒っている人たちがいるのはどうしてでしょうか?ちょっと見てみましょう。

ACTAって何?

 この模倣品・海賊版拡散防止条約とは、参加国に対し、 著作権の侵害やその他の知的所有権の盗難を阻止する権限を与えるものです。これにより国際的な法的枠組みを構築し、異なる国々がお互いに協力し合って連携することができるようになります。ACTAの全文についてはこちらをお読みください。(日本外務省の推薦リンク・日本語)

どうしてヨーロッパの人たちは怒っているんですか?

 ACTAに署名した国々は、その交渉をほとんど秘密裏で行ったことが、主な理由の一つです。欧州議会は完全には関与しておらず、署名国の国々は国民に対してこの条約に対する意見を尋ねていませんでした。辞任した欧州議会のフランス人議員、Kader Arif氏はACTAに対する反論として次のような怒りの声明を出しています(ZDnet UK)。

   「私が非難しているのは、条約を署名までに導いた全体的なプロセス、つまり市民社会との話し合いの場ももたれておらず、交渉の開始時から透明性に欠けており、説明もないまま条約への署名も何度も遅れており、何度も欧州議会の決議で表明されている申立てを無視していることです。・・・この条約は私たちの国民に対して重大な影響を与える可能性がありますが、それにもかかわらず署名されているためEU議会にはもう何も言うことができません。私はこのシャレード(なぞなぞ遊び)に参加する意志はありません。

アメリカではどうなっていますか?

 Ron Wyden上院議員は、上院議員の3分の2以上の同意を得ずにアメリカ大統領が条約に署名を行うことは憲法違反であるとして、オバマ大統領がACTAに署名を行ったことに対して反対意志を表明しています。オバマ大統領は議会の意見を聞いていませんので、ACTAが合法的に署名された条約でないと考える相当の根拠もあるようです。

ACTAによって著作権保持者に認められる権利は何ですか?

 ACTAに署名した政府が誓約した内容(英語)は次の通り。

・著作権侵害の疑いのある場合に、著作権保持者がインターネット・サービス・プロバイダーに対して個人情報を要求する手段を認める(令状が必要)。

・著作権保護もしくはデジタル著作権管理技術を迂回しようとした疑いのある個人を法的に追及する権利を著作権保持者に対して認める。

・著作権侵害のコンテンツを含む疑いのある物件を国境で差し押さえる。

 それに加え、ACTAにより、著作権保持者に対して違法コンテンツの市場価格に相当する被害総額を徴収する権限が与えられることになります。言い換えると、15ドルで販売されているアルバムや50ドルのゲームをコピーすると、その金額分を支払うことになります。

その他にみんなが怒っている理由はありますか?

 アメリカの著作権法やデジタルミレニアム著作権法(DMCA)とは異なり、ACTAには公正使用条項が含まれていません。例えば、MDCAのもとでは、個人用のバックアップを作成するためにコピー防止技術を破壊することは認められており、また著作権一般においても、教育用や学術的な目的のためにコピーを複製する例外が認められています。ACTAにはそのような条項が含まれていません。国際条約ですので、国内法に優先することになります。そのため、アメリカではこの条約が合法的に承認された条約かどうか、ということが重要になってきます。

じゃあ、私が音楽の著作権侵害をしていなければ、心配することはないんですよね?

 そうでもありません。ACTAは特許権にも適用されますので、もし、あなたが持っている薬品が、たまたま通過した国では特許権が認められている場合など、ある意味で「グレー・マーケット(半合法的市場)」となっている薬品全般の所有に関しても犯罪とみなされるようになる可能性もあります。また、税関や国境警備職員が、知的所有権の侵害にあたるかどうかを判断する義務を負うことにもなります。あなたがどこか新しい国に飛行機で着地した場合や、カナダの国境からドライブしてきた場合、どのような結果になるかを想像してみて下さい。

 さらに詳しく知りたい方はMike Masnick on TechDirtM. Scott Fulton on ReadWriteWebなどでご確認ください。