酒井若菜オフィシャルブログ「ネオン堂」Powered by Ameba-101104_2109~01.jpg


これは先日書いた記事です。
ある人に「いつも一人でいるよね」と言われました。
言いたいことは、こうに違いありません。
孤独じゃないのか。
よく聞かれること。
その質問に対しての私の答えはどうも間が抜けていて、自分の感性の乏しさに虚しさをおぼえます。
が、なかなか揺らいでくれないその考え。
人といるから孤独になるんだ。
最初から一人なら、孤独なんて感じない。
だって、人といる楽しさを知らないのだから。
つまらない考え方だと、我ながら。
そんなことを喫茶店でコーヒーを飲みながら一人で考えていました。
「孤独」という言葉を書いたのは、たぶん初めて。
私は昔から歌でも本でも、孤独という言葉を見つけるとその瞬間にスッと心が離れてしまいます。
一気にさめてしまう。
孤独なんざ恵まれた人が言う簡単な言葉だ、と思ってしまうんです。
私は嫌味が大嫌いで絶対に言わないのだけれど、この時ばかりは嫌な考えになってしまう。
いかんいかん。
ということで、こんな時は太宰に限る、とガサゴソと鞄を漁るも、何故か見当たらず。
仕方ないので本の代わりに、ケータイのネットでニュースをぼんやり読みました。
あるニュースに目が留まりました。
私が最も好きな本を書かれた太田さんが、初小説を出されたとのこと。
しかも今日。
慌てて立ち上がり、すぐ近くにある本屋へ飛び込みました。
『マボロシの鳥』!
あった!
見つけただけで何かが報われました。
購入した本を鞄に詰めて、心が満たされました。
そして、家に帰った私は買ったばかりの本を早速開きました。
○○さんの文体に会いたい!って具体的に欲する時期がありましてね、例えば司馬さんなんかは、1ページ目から頭の中でドン!ドッ!ドッ!ドッ!って和太鼓が鳴るような「来た来た来た!」って引き込まれるような感覚になるのですが、どうやら今の私は太田さんの文体を猛烈に欲していたようです。
ほんっとにどうしようもないくらい好きなんです。
そして、エッセイやコラムなど文章には色々ジャンルがありますが、太田さんが書かれる文章の中で私が特に好きなのは物語なんです。だから、今回小説を出されると知った私は、もう嬉しくてたまらなくて。
夢みたい。
1ページ目を開いて「どうやらほんとに小説っぽい」と、物語が始まり次第泣きました。
文体の安心感と、新作が読めるワクワク感と、単純に嬉しいのと、何故か緊張と。
いや、本当にそこにあるのは、たぶん私の過信、依存が主なのでしょうけれど、そんな風に無条件に心が反応するまでには、そこに至るまでの私なりの過程があるので、ね。
泣きたかったのかもしれない。
今までもそう。ある尊敬している友人に出会ってから、私はその人の優しさのおかげで泣き虫になってしまったのだけれど、基本的には、本の前以外では泣きません。
子供の頃から本が好きで、本屋に勤めたり、小説を書いてみたりしたけれど、特に泣くようになってからは一層本にのめり込むようになりました。
私の理解者は、常に活字だったから。
だから気に入った本は何度も読み返し、2,3冊ずつ買ったりしているの。
たぶん、今日読み始めた『マボロシの鳥』も、そうなる。
あ~、早速文庫化されたりしないかなぁ。持ち歩きたい。

と、先日ここまで書いていたのですが、それから数日後の今日。
マネージャーからふと手渡されたのは、なんとその『マボロシの鳥』。
出版社のかたが、何故か私宛てで事務所に送ってくださったみたいです。
わあ!もう2冊になっちゃった。
またまた夢みたい。
嬉しい嬉しい、超嬉しい。
先日、物語を読み始めると同時に泣いてしまうという、とんちんかんをやらかしてしまった私ですが、今はちゃんと読ませていただいています。
だけど、やっぱり泣いてしまう。
1ページ目から。
それはちゃんと、文章を読んだ上で。
短編集なのですが、1つずつの話をつい何回も繰り返し読んでしまうので、次の話に進むのが遅い遅い。
だからまだ全部読めていないけれど、今のところね、最高に面白いです。

宝物になっちゃう。
だけど、人にすすめたいかどうかは別。
独占したいんだ。

“この小説の魅力は、私にしか理解できない”。
そう思いたくなる本。

ずっと読みたかった本。
でも、1つだけ。
太田さんの本を読んでいると、私は本当は、自分が孤独だと知っているのにそれを受け入れられていないんじゃないか、と思ってしまう。
バカみたい。
孤独とか、くだらない。
一人がいい。
これからも、極力一人でいたい。
そう思うのに、だったら適当に放っておけばいいのに、なんで異様なまでに拒絶する。
人の本を一冊読んでいるだけで、なんでこんなに報われた気持ちになる。
誰にも言えない思いを、どうしてこの作家さんは知っているの。
嬉しい。
哀しくなるくらい、嬉しい。
こんな文章を書いてくださるかたがいるのなら、私はまだ大丈夫だと、思える。
もう少し頑張ろう、と思えた。
そして、
いつか私も、こんな文章が書けるようになりたい。
夢が一つ増えた。
そんな嬉しい日。

ちなみに、最近の私のブログ、ちょっと書き方がいつもと違ってきてるけれど、気にしないでくださいね。
次の役の影響ですから。

みなさんいかがお過ごしですか?
私は絶好調です。

明日も良き一日を


ごきげんよう