「塩の種類と濃度により異なる、肉のうま味成分の生成量」 by 成瀬宇平先生 | 橋本三奈子のSalt Revolution(わじまの塩に魅せられて)

「塩の種類と濃度により異なる、肉のうま味成分の生成量」 by 成瀬宇平先生

雑誌『男子食堂』のウェブ版に、「男子食堂ブログ」として、医学博士・成瀬宇平先生の「調味料こぼれ話」が連載されています。

雑誌『男子食堂』は廃刊になってしまうそうで、ブログの連載も最終回ということ。

そのブログの記念すべき最終回に、「塩の種類と濃度により異なる、肉のうま味成分の生成量」という記事が掲載されました。

成瀬先生のブログ


「わじまの海塩」「わじまの水塩」の酵素分解の働きが紹介されています。引用して、ご紹介します。

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食塩の違いや食塩水を鶏の胸肉に振りかけた場合のうま味成分(グルタミン酸として)の生成量を調べた結果を紹介します。

実験は、鶏の胸肉に何種類かの食塩と食塩水を振りかけ、冷蔵庫で30分間放置した後に冷凍。

生肉を低温で貯蔵した場合、生肉の中のたんぱく質分解酵素(プロテアーゼ)が働き、たんぱく質が分解し、ペプチドとなり、さらにアミノ酸を生成します。

食品中のアミノ酸の種類と量は、うま味に関係していて、うま味成分の指標としてはグルタミン酸が測定されることが多いのです。

図は、冷凍した肉を粉砕して得た水溶液中のうま味成分の指標として、グルタミン酸量を測定した結果です。

水溶液を振った胸肉の中のグルタミン酸量が、食塩を振った胸肉に比べて多いことがわかります。

これは、食塩そのものを振った場合は、肉中に存在しているたんぱく質分解酵素の活性を抑制し、食塩濃度の小さい食塩水はプロテアーゼの働きを抑制しないからと推測できます。

「わじまの水塩」を振りかけて肉中のアミノ酸量が最も多く検出されているのは、「わじまの水塩」のミネラル成分は他の食塩や水塩に比べてマグネシウムイオンが多く含まれているとも推測できます。

生体内の代謝においてマグネシウムイオンは、酵素反応を促進する働きがあるからとも推測できるのです。

グルタミン酸

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グラフを補足しますと、たんぱく質分解酵素の働きを活性化させるマグネシウムの多い「わじまの水塩」では、精製塩の117%、グルタミン酸が多くなっています。

ナトリウムとマグネシウムの比率が血液の比率と似ている「わじまの海塩」では、精製塩の113%、グルタミン酸が多いという結果となっています。

先週は、麹の生成する酵素の働きについて、詳しくご紹介しましたが、酵素の働きを助けるのがミネラル。

善玉菌を与えなくても、ミネラルバランスのよいお塩によって、食材に対して、酵素による分解が起きるので、それが甘味の元となり、うま味の元となり、そして、消化しやすく、健康機能を持ったグルコース(ブドウ糖)や、ペプチドやアミノ酸になるというわけなんですよ。

成瀬宇平先生のプロフィール:

1935年、福島県生まれ。日本大学農獣医学部卒業。
同大、同学部講師、東京大学微生物研究所研究生を経て、鎌倉女子大学教授(食品学)。医学博士。

「図説魚の目きき味きき事典」、「すしの蘊蓄旨さの秘密」以上(講談社)、「応用調味料の事典」(柴田書店)など著書多数。