「唐突ですが、どうしても和田先生にお聞きしたいことがありました。
和田先生は五体満足の自殺志願者への安楽死についてどうお考えでしょうか?
行政や医師もその苦しみから救う事が出来なかった場合です。
私は安らかな死の保証がどれだけそういった人達の救いになるかと思っています。
しかし安楽死が認められないのは、後味が悪いからとか安価な労働力がなくなるからとか、そういった強者への配慮からなのかなと思いました。」(引用終わり)

というメッセージをいただいた

私は、どんな場合でも生きていてほしいという立場だというしか言いようがない

これは強者の論理ということではない

多くの場合、五体満足でも苦しみのどん底にいるというのは、うつ病のような精神状態であろうし、おそらく、その中で、仕事ができなくなり、「安価な労働力」であるどころか、生活保護という形で、財政に悪影響を与えているという人も少なくない

そういう人がいるので、生活保護批判をいい加減にやめてほしい。彼らだって好き好んでうつ病になっているわけではないし、苦しみに耐え、生きているのではない。生活保護批判で、自分が人に迷惑をかけていると思わせてしまうと、死への背中を押すことにしかならないと私は考えるから、どんなにボロクソに言われるメッセージを送られても、生活保護批判と闘っているのだ

実際、うつ病に本当にかかってしまうとつらいようだ

ある人は、39度くらいの熱を出しているくらいだるい状態が熱もないのに続いているという

来る日も来る日も同じくらいだるいのであれば、絶望するのももっともだ

あるいは、自分が生きていてはいけない迷惑な存在だという想念に苦しめられ、それが絶えることがないから苦しみのどん底にいるという

確かに行政も医者もその苦しみから救えないことはある

それでも、もっと生きろとは言いづらいこともある

でも、いつかは治すことができると信じて治療を続けるしかないし、私のために生きてくれということもある。お手上げになってほかの医者を紹介することもある

私のメンツのためとか、私が後味悪い思いをしないですむためとか言われるかもしれないが、その通りかもしれない

それでも生きていていただくために頑張り続ける。こんなに苦しくて、つらいのに、私のために生きていてくれるのだから、そうしないと失礼だ。生活保護を叩く連中は、鬱の人の苦しみなど絶対にわからない人たちだろう。こんなに苦しい中生きていてもらえるだけでもありがたいのに、そういう中で不正があるかもしれないから、やめてしまえとか、本当は働けるだろなどとは口が裂けても言いたくない

おかげさまで、89年に患者さんに病棟で首を吊られて以来、私の患者さんについては自殺はない。これが私の医師としての最大の誇りだ

答えにならないかもしれないし、この方もものすごく苦しんでおられるのだろう

その上、これ以上は、ベストを尽くせるだけのキャパシティのない状態なので、新たに患者さんとして引き受けることもできない

無責任な返事になったが、これは私の本心というより本音である

さて、実は、私は桃が大好物である

それを知ってか知らずか、毎年、何件か桃をお中元にいただく

ダントツでおいしいのは、尊敬する作家の先生からの山梨の桃である

山本益博さんも、いちばんうまいのではないかと言う

気を遣って、千疋屋の特選とか、百貨店でも一番いい奴とか、すごい桃をいただくのだが、残念ながらイマイチだ(贈って下さる方には申し訳ないが)

で、今年もそんな感じだったのだが、私が大学院の博士課程の人たちと、福島原発の後始末で働く職員の心のケアのボランティアをやっていたら、その社長が福島の桃を送って下さった

これは、逆転ホームランという感じの桃だった

福島の桃おそるべしである

高級感というより、当たり前に甘く(私は実は甘いものが嫌いなので、甘すぎはダメなのだ)後味もすっきりだ

福島と言うだけで怖がる人も少なくないのだろうが、もちろん娘たちにも食べさせた

おいしい、おいしいと口をそろえる

こんなにおいしいものを、医学的根拠もないのに、排斥するとしたら日本人はバカだと言いたい

私は、今後は福島の桃はうまいと言い続けるだろう

ということで多くの人に知ってほしいので、今回は全員に公開にする