私が生活保護費のカットに否定的なブログを書いたら、学校の教師の方から、かなりひどいお金の使い方をしている保護家庭や、その子どもに就労意欲、勤労意欲、勉強の意欲がまったくない現実のレポートを詳細に寄せていただいた

私自身、精神科医をしているので、生活保護の人に出会うことは多い

うつ病でこれは絶対に打ち切ってもらっては困るという人もいるし、飲んだら打ち切りという厳しい対応をしてもらいたいようなアルコール依存症の人もいるし、ワーキングプアや昔の安い年金では、生活保護のほうが生活がずっといいという現実も実はよくわかっている

ただ、そもそも論をいうと、生活保護というのは、最低限の生活を保障するという趣旨のものだ

日本が豊かだったころに算出されたせいか、「最低限の生活」のレベルが高いのは事実だ

東京の場合、母子家庭の3人世帯(子供が二人いる場合)なら月額26.4万円。これが手取りの上に、医療費もただだから、年収400万円くらいの人並みか、それ以上の暮らしということになる

実は、手取り収入なのか何かわからないが、所得があってもこの26.4万円に足りない母子家庭の場合は、保護費の申請はできるはずだ。たとえば、障害者などが作業所で働いて、月に5万円くらいしかもらえないというような場合は、当たり前に生活保護を受けている

建前上、生活保護以下の生活はないはずなのだが、(もちろん貯蓄があれば、それは受けられないが)人々の無知につけこんで、それを払わない

そして、生活保護の人のほうがいい暮らしをしているという怨嗟や嫉妬を生むようにして、生活保護に対する反感を強めるというのが行政やマスコミのやり方だ

マスコミだって、実は、このレベルの暮らしが、日本国に生まれ、消費税も含めて、税金を払っている以上、基本的人権として保障されているのだから、収入が少ない人は、堂々と申請しましょうと言えばいいものを、収入もないくせに、働かない癖にこんな暮らしをするのを許せないという風に論じるのが通常だ

企業が従業員にきちんと給料を払わずに利益を出せば、それを法人税で吸い上げて、給料が生活保護以下なら、その差額を国が支給するというシステムのはずが、働いている人が安い給料なので、生活保護の人はもっと下げよという話に置き換わっているという問題はある

ベーシックインカム論でもなんでもそうだが、この消費不況の中で、人々が安心して消費をさせるためには、実はローコストのやり方だ

生活保護の場合、保護費をためこんで貯金がばれると(タンス預金の調べようがないが)、言っていい錠の貯金になった時点で、保護費が打ち切られるから、100%消費に回る(それが周囲から腹立たしく映るのだろうが)

人に月に20万円お金を渡すのに、公共事業で雇用するなら、そのために100万円政府の支出がいるが、保護費で渡すなら20万円で済む

その上、役人の利権も生じないし、公共事業の経営者たちに儲けさせることもない

さらに20万円の給料の場合は、そのうちいくら貯金して、いくら消費に回すのも自由だが、保護費の場合は、100%消費に回さないといけない

国に金がなく、消費が冷え込んでいるときには、実は有効な対策ではある

ただ、確かに、勤労意欲は確実に奪う(すべての人ではないが、ある一定の割合の人は)

生活保護を受けている場合は、子どもは寄宿制の学校に入ってもらって勉強してもらうことを義務付けるとか、なんらかの方法論は考えてもいいと私も思う

アルコール依存やうつ病で生活保護を受ける場合には治療義務を設けるとか
(もちろん、憲法上は基本的人権の保障だから、条件をつけることは憲法違反だが)

ただ、生産があまり、消費が足りない時代には、勤労意欲のない消費だけしてくれる人の存在も実は社会の害毒とは言えない

そういう意味では、働かない高齢者だってありがたい存在なのだ

アリとキリギリスとか、働かざる者食うべからずという発想でこりかたまってしまうと、消費不況はいつまでも改善されず、貯金ばかり増えて金の回らない国になってしまうので、発想の転換が必要だということも一面の真実だ

問題は、この国では、生活保護への反感ばかりが高くて、この手の議論が(私の主張が正しいと言いたいわけでなく、こういう意見が無視されるという意味で)、一切論じられないことではないのか?