勉強法の講演会が続くのだが、よくある質問で学校のやり方と合わないときにどうすればいいかというのがある

最近、日本中に私立の中高一貫校ができているし、増えている。あるいは、もともとあったどちらかというとボンボン学校、お嬢さん学校が、生き残りのために進学に特化するというケースもある

ゆとり教育に対抗して、というか、日本の中学と高校のカリキュラムのバランスが悪い(たとえば中学では英単語を1000も習わないのに、高校だと5000はやらないとまともな大学に入れない)ことの補正として、多くの学校が前倒しのカリキュラムを作り、それに合わせたテキストを用意したりしている

多くのものは、進学実績のいい学校、たとえば灘校などのカリキュラムを参考にして、これをやればいいはずと思って作っているようだ

ただ、このやり方では、それをクリアするくらい地頭のいい学生でないとなかなかうまくいかないだろう

確かにできのいい学生だけの学力が上がって、何人かは東大に入ったり、医学部に入り、それによってさらに生徒集めがしやすくなるかもしれない

ただ、灘と同じカリキュラムをやるには、いくつかの点で条件が悪い

一つは、中学入試のハードさが違うので、基礎学力に差があることがある

私もいわきで初めての中高一貫校のお手伝いをしているが、中学受験という発想がない地域のために、計算力や読解力があまりに東京の子供たちと違いすぎる。だから、その補正もカリキュラムに組み入れている

勉強が好きで、自分からやる子が少ないというのもハンディだろうし、理解力も劣っているだろう

せっかく前倒しでカリキュラムをやるのなら、そういう子でもやる気になるようなわかりやすい本(実況中継や、マセマなどなど)がいっぱい出ているのに、それを使おうともしない

そういうフォローをちゃんとやらないから、せっかくゆとり教育に対抗できるようなカリキュラムを作りながら、逆に落ちこぼれを大量に作るなどということになりかねない(それなりに補習はしっかりやってくれることが多いのが救いだが)

私が勉強法の本を書き続けるのも、結局のところ、個人が自分にあった勉強法を見つけていくのがもっともいい打開策になると思うからだ

つまり、私は自分の信者を求めて勉強法の本を出しているのでなく、その中から自分に合いそうなものを選んでほしいから出している。ほかの人の書いたやり方のほうが合うならそのほうがいいだろう

私は、東大生を遣って受験勉強法の通信教育を主宰しているが、これにしても、マニュアル通りにやらせるのでなく、スタートレベル判定テストの結果や、本人の置かれている状況のシート、そして志望校を聞いて、それに合わせたやり方を一人一人作るようにしているし、それに関してなるべく講師の自主性も尊重している

ただし、その生徒がその宿題ではやってくれなかったり、難しすぎたり、易しすぎたりとうまくいかなかったときには、その対処はきちんとさせている

教師というのは、まじめな秀才の多い職業なので、どうしても強迫的なものの考え方になりがちだ

極論を言えば、数学が苦手な子なら、数学が0点とは言わないが20点(東大入試だと相当できない子でも枝問でそのくらいとれるようになっている――もちろん、それなりの努力は必要だが)でも東大に浮かれる方法を考えるのが受験勉強というものだ

私も国語は80点満点で20点で東大理Ⅲに入る方法を考えることで合格できた

実は、名門校とそうでない新興校のいちばんの違いは、こういうことを自分で考える生徒が多いかによる

灘の場合、学校のいうことを聞いていたら浪人するとみんなで言っていた(少なくとも私の在学中は)

だから、灘のカリキュラムの通りまねしてもダメなのだ

自分でどうやったら受かるかを考える能力を身に付けさせることができたら、学力以上の大人になって使える能力を得ることになる

私は偉い教育学者でなくて、一介の受験屋でいいと開き直っている理由は、そういう力の教育をほかの人よりやってきたつもりだし、そう言ってくれる多くの合格者や卒業生がいるからだ