原口総務大臣が、「関係者によると」などという表現で、ろくに裏を取らない検察側からのリーク情報を公共の電波で流すのが不適切だという発言をして物議を醸している。

鳩山首相は権力でメディアをゆがんでしまうのは望ましくないと火消しをしているが、現実には原口氏のいうことのほうが正論だ。

前から問題にしているように、日本は検察や警察のリーク情報を垂れ流し放題の上、弁護側に取材しないし、弁護側の主張を報道しないので冤罪の温床となっている。冤罪を減らす努力をしないと重罰化が難しくなるから、社会防衛上も問題だし、第一、刑事訴訟法や憲法の精神にも反する。

ただ、今のタイミングでいうから小沢氏をかばうためという話になってしまうのだろう。

昨年は、菅家氏の事件や富山のレイプ冤罪事件のような冤罪事件が表面化した。その際に、かつての報道がいかに一方的に検察情報を垂れ流していたかの調査委員会のようなものを原口氏が総務大臣になったときに作っておけばよかった。小沢氏や鳩山氏に対して、選挙で勝っても検察が仕留めにくることは十分予期できたことだ。それまでに、報道のガイドラインを、この手の冤罪事件をネタにして作っておけば国民だって文句が言えなかったはずだ。

しかし、小沢氏のことだけをかばうから、「政治的」と言われてしまうのだ。

韓国のような国でも、容疑者は原則実名報道しないそうだ。日本はおそろしく遅れている。

もちろん、自分たちが被害者になって初めて、日本の報道のあり方や検察や警察のあり方が前時代的なものかに気付くのだろう。

でも、それは悪いことではない。自分の妻が殺されて、ある弁護士が初めて、被害者の気持ちがわかるようになったのと同じで、人間としても法システムとしても進歩なのである。

代用監獄がいまだにどうどうとまかり通っていることも含めて、この機会に法務大臣が、別の形で指揮すべきことはいくらでもある。

また、日本のマスコミ、とくにテレビマスコミは、世界中の先進国で唯一、自殺報道のガイドラインを守らず、そのせいも一因となって、日本の自殺率は先進国最悪だ(先進国最悪なのに、自殺報道のガイドラインを守らないと言うほうが正確だろうが)。

また、やせすぎモデルばかりをブラウン管に出し続けて、毎年100人の若い女性が拒食症で死んでいる。

このように日本のマスコミ、とくにテレビマスコミは、やり放題で人の命を奪い続けている。

こういうことの規制こそ原口氏に期待したい。

原口氏も心理学を大学で学んだのだから、先にそういう大義名分をかかげて、外堀をうめておけば、こんなに批判を受けずにすんだはずだということはわかるはずなのだが。

私も原口氏と対談をしたこともあるし、人格的にも買っている。

たまたま彼の選挙区の佐賀にいって聞いた話だが、やはり偉くなって、人の話を聞かなくなったという評判がすでに生じている。忙しいのはわかるが、偉くなるほど、この手の態度に気をつけないと、その後の応援が途絶えてしまう。

これも心理学では鉄則なのだが。

ただ、もしかすると原口氏は、小沢氏を結果的に見殺しにすることで、自分が次とか次の次になったときに仕事をやりやすくするという心理学からの深慮遠望なのかもしれない。読みをしているのかもしれない。