私のブログの読者は知的レベルが高いらしく、ベーシック・インカムについてどう思うかというメッセージをもらった。

基本的には、これまでのブログを読んでいただいた人ならわかると思うが、賛成としかいいようがない。

もとより、私は経済というのは、内需が支えるもので、くだらない外需頼りにしてしまったから、日本が破滅の道をたどることになったと思っているし、また、今の世の中、先進国では、生産が消費を上回る消費不況が慢性化している。要するに、(内需を拡大したいなら)今必要なのはリストラなどで生産性を上げることより、消費を増やすことである。貧富の差を小さくしろというのは、金持ちほど、収入に対する消費の比率が小さくなるからで、累進課税の強化や最低賃金の引き上げで、ナチス・ドイツも、ルーズベルトからトルーマンの時期のアメリカも、景気が回復し、製造業が勃興している。もちろん、高度成長期の日本もそうだ。歴史から学ばない限り、日本の景気回復はない。

その際、最低賃金を上げると、体力のない企業がそれを雇えないから失業が増える。そういう場合、これまでの基本的な考え方は、公共事業で、彼らを吸収し、最低賃金以上の給料を与えることだった。これによって、アメリカのフリーウェイ網、ドイツのアウトバーン、日本の地方の開発などが進んだ。

しかし、これは意外に金がかかる。たとえば、工事労働者に年間200万円保障しようとすると、道路建設費を2000万円使わないといけない。最低所得保障に公共事業を使うというのは、インフレ整備が遅れているとか、税収が豊かだとか、失業者が比較的少ないとかいう際には、やりやすい手だが、実は公的支出としては生活保護が一番効率がいい。200万円の保障に200万円プラス公務員などを使う手数料ですむからだ。

あるいは、介護のような労働集約型の公共事業にしたら、おそらく200万円の人件費を使うための公的支出は400万円程度ですむだろう。

私は、格差社会がなぜまずいと思うかは、国力が衰えるからであって、貧しい人に同情するような優しい人間ではない。だから、働かない人間に金を渡すのも消費を増やすための手段と考えているから抵抗がない。

もちろん、ベーシック・インカムの考え方は、働いてもベーシック・インカムより収入が少なければ、差額は公が払う形になる。すると、介護のような官製ワーキングプアの職種については、結局公が残りの所得を保証しなければならなくなるが、お金の問題で介護職をやらないという人は少なくともいなくなる。競争力が弱く、十分なペイを払えない産業を結果的に公が保護することになるが、保護主義という批判を受けない大義名分にもなる。

金額は、どの程度が妥当かということだが、少なくとも貧困にならないレベルということだろう。日本の世帯所得の中央値が448万円。224万円だと相対貧困率を計算する貧困にカウントされる。おそらく一人暮らしなら150万円、家族が一人増えるごとに100万円くらいがベーシックインカムの妥当な線ではないか?

では、財源はという話だが、もちろんベーシック・インカムが確保されるのであれば、消費税が少々高くなっても消費への悪影響が少ないだろうが、私の基本的な発想は、格差の小さい社会ほど、消費も製造業も栄えるという立場なので、できれば、累進課税の強化、あるいは相続税の大幅増税(とくに金融資産に対して)、脱税の徹底的な取締りと懲罰的課税が基本になるだろう。

民主党が財源論で、無駄遣いをなくすとか言っているが、あまり絞りすぎるとセーフティネットにかかわり、ベーシックインカムと逆の方向になっている。

なぜ脱税を取り締まるといえないのか?

数年前京都のほうで、年売り上げ65億円で、3年で79億円の所得を隠したパチンコ屋が摘発されたが、どうしてあのときに、徹底的なパチンコ屋の税務調査をしなかったのか、パチンコは30兆産業、もし売り上げの4割もの所得隠しができる業種だったとすれば、みんながやっていなくても5,6兆円の所得をあぶりだして、2、3兆の税収を引き出すことができる。消費税1%分である。ヤクザの総売り上げが10兆という話を聞いたことがあるが、警察もやくざを脱税であげていけばどうなのか?もちろん、脱税は諸外国では重要な犯罪とみなされている。

民主党になっても、脱税をしっかり取り締まらないなら、財源など、そうは出てこないだろう。

もちろん、金のない人間、収入の少ない人間は、もともと税金がかからないのだから、脱税のしようがない。脱税こそが格差を拡大できる最大の要因ともいえる。

脱税をどの政党も取り締まろうとしないなら、やはり、脱税した表に出せない金が、彼らに流れていると疑われても仕方がないだろう。