ブタインフルエンザとその診療拒否が問題になっている。

医師としてのモラルの問題が問われ、医学部はペーパーテストだけで入り、面接をやらないからだという暴言まで飛び出している。

入試で面接をやって、「新型インフルエンザの患者がきたらちゃんとみますか?」と聞かれて、「いいえ」と答える受験生がいるのだろうか?面接はうそつきを作るだけで、モラル教育にはならないだろう。どの大学も面接廃止の方向に向かっているのはその反省からだ。

むしろペーパーテスト学力や知的レベルの低い医者が多いことが診療拒否につながっているのではないか?まともにWHOのHPなり、一般的な情報を得ていれば、明らかに弱毒なのはわかる。考えようによっては、弱毒のうちにかかっておいたほうが、このタイプのインフルエンザに対する免疫を獲得できるから、強毒に変異したときに助かるかもしれないくらいだ。この見解をたまたま同窓会にきていたウィルス学者(けっこう偉い)に聞いてみたら、基本的には合意してくれたが、このブタインフルエンザについては、強毒化する可能性は低いと見られているとのことだった。

WHOも大げさな反応に頭にきているようで、権益は無意味、そんなものをするならWHOにエビデンスを提出せよ、旅行者の権利と尊厳をちゃんと守れとはっきりと声明を出している。

http://www.who.int/csr/disease/swineflu/frequently_asked_questions/travel/en/index.html
(この情報を提供してくださった東大医科研の上先生には感謝します)

この一件で診療拒否をするのは、悪いのは医師の側の学力なり不勉強であって、モラルの問題ではない。

では、本当の強毒の新型インフルエンザが来た場合、医師は診療拒否をしてはいけないのか?

きれいごとの世界ではそうかもしれないが、結果的に、それを強制すると、今度は呼吸器内科とか、小児科の医療崩壊が起こるだろう。医師だけでなく、ナースだって離れていきかねない。

また、日本のように待合室に患者が一杯いる国(先進国ではあまり見かけない光景だ。日本の医者は薄利多売のようなビジネスモデルで、診療報酬の安さを数をこなすことで収入確保している)で、病院や診療所のほうが感染源になりかねない。

心ある医者だけが、治療に望み、その中の高い割合で死ぬということなら、逆にブームがさってからの医者の質は悪くなる。

あるいは、町や村に医者が一人しかいない、少数しかいないところで、その医者が死んだらどうなるというのか?

やはり、感染対策を十分やったセンターみたいなところで、疑わしいケースを集めるほうが現実的だろう。

救急医療だって、自信がないから受けなかったら診療拒否といわれ、自信がないのに治療してうまくいかなかったら刑事告訴や逮捕までされてしまう。

診療拒否とはいわないが、診療を辞退できるガイドラインを作るほうが、モラルの問題を語るよりはるかに現実的だと私は信じる。