トヨタが来春の決算の見通しを赤字に修正し、社長も交代して、創業家に大政奉還するという。

創業以来の危機意識から大政奉還という話になっているようだが、私はひがみっぽいのかもしれないが、そうは思えない。売り上げ減、円高、設備投資の三つが重なって赤字になったということだが、前二者はともかくとして、設備投資については、どの期に計上するかはある程度裁量できるはずだ。

株価や景気への影響などを考えれば、その裁量で、黒字決算の体もとれたはずだ。実際に、もっと経営状態の悪い自動車会社が黒字決算の形をとっている。

ただ、それをやると次期にしわ寄せがくる。大衆心理に冷や水を浴びせて、車がよけいに売れなくなっても、株主の動向をそれほど気にしなくていい会社だから、膿を出し切ろうということだろう。

もちろん、これによって、社内や下請けの引き締め効果を狙うという意味もあるかもしれない。

しかし、なぜ今のうちに膿を出し切るという話になったかというと次期社長が創業家出身だからということのほうが大きいのではないか?

当期黒字にしておいて、時期の社長になったとたんに赤字なら、無能社長ということになるし、逆に当期赤字で、次期社長になったら黒字ということになれば、さすが創業一族という話になる。また十分な引き締めを今のうちにやっておいたほうが、次期社長は楽になる。

そこまでして、世襲を成功させたいということなのだろう。
(これまでのトヨタ自動車の創業家からの社長は、初代の東京高商卒――これだって今の一橋だ――の利三郎―娘婿―を除き、すべて東大か名古屋大学卒なので、私大出の彼はそれだけ信頼されていないということなのかもしれないが)

かくして、大臣の3分の2が世襲というこの国では、経営トップも世襲でいい、あるいは世襲のほうがいいのだという話になる。

こんなことで人々が勉強する気になるのだろうか?

あきらめが蔓延している上に、トヨタまで赤字ということになれば、さらに景気が悪くなるかもしれないのに。

日本の世襲社会化は止まらない