生年月日 不明 山東省青島生まれ

犬種 シェパード

性別 つがい

地域 千葉県

飼主 陸軍歩兵学校

 

大正8年、日本陸軍が最初にテストしたシェパード。

その後の主力犬種選定において、この二頭は多大な貢献をしました。

 

恵須と恵智

 

大正九年一月度
一、現在収容犬数 

六頭

 

内訳
【獨逸番羊犬】ニ頭 
恵智號(牡)、恵須號(牝)

※日本で「ジャーマン・シェパードドッグ」に呼称が統一されたのは昭和3年のことです。

それまでは「獨逸番羊犬」「セッフェルフンド」「ポリスドッグ」「アルサシオン」などと名称が混乱していました。


【土佐種とコリー種雑】一頭 
久浪號
【内地雑種犬】三頭 
嚆矢號(牡)、華號(牡)、不二號(牡)

 

本月中に於ける主なる調教課目並其成績左の如し。
A.傳令犬
1.恵智號(獨逸番羊犬牡)
イ、昼間遠距離(千米乃至千三百米)に於ける両地間の往復。
主に、道路に據り遠距離両地間を往復する事を教育せしに、其成績甚だ良好にして叢林中に於ける小経等屈折復雑せる道路に於ても両地間の往復を実施せしむるを何回にても確実に行はしめ得たり。
而して昼間に於ける犬の傳令速度は千米を行ふに概ね三乃至五分を要する如く距離の延伸に伴ひ此経過時間を累加す。
ロ、夜間に於ける傳令
犬の嗅覚が夜間に於て頗る其鋭敏製をを増加する事、途中に於て犬の心気を散漫せしむるものなき事等は却て昼間勤務に比し其能力を増進せしむるが如し。
本月中に於て行ひたる此種演習は、教育準備の不備と犬が充分に夜間の疾走に馴れざりし為、未だ著しき効果を挙ぐるに至らざりしも、然も昼間に比し少くも其確実性も増加する事は確かに認むるを得たり。
殊に其速度に於ては昼間に比し著しく迅速にして千米を一分三十秒にて所命の地点に到達したる事婁々なりき。
ハ、通信位置の移動する場合の往復傳令勤務。
目下短距離に於て相互通信所の位置を移動し、且つ稍〃多数の人馬の往來する道路を往復する事に就て練習中にして、本練習を終了せば傳令犬として概ね完全せらるべしと信ず。
2.恵須號(獨逸番羊犬牝)
主として通視し得ざる道路上の二地間(距離四百米以内)の往復に就て練習を行ひつゝあり。
其成績概して良好なり。
B.輓曳犬
1.嚆矢號(雑種犬、牡)
輓曳及弾薬運搬嚢を附して二点地間を往復すべき練習を行ひつゝあり。
其結果概ね良好なるも、本犬は好吠癖を有し、且つ頑固なる恐銃癖を有す。
将来実用に適せざる事前報告の如し。
2.不二號
概ね嚆矢號に準じて練習を実施しつゝあり。
然れども、他の興味に引き込まれ任務を忘れる等の習癖ありて其動作稍不確実なる点あり。
目下矯正中なり。

 

陸軍歩兵学校のレポートより