2010-02-27 11:19:14

第2回・軍用動物の種類

テーマ:軍用動物とは
第二次長沙作戦の目的を完遂せし各部隊は新墻河畔に集結して昭和十七年〇月〇〇日同地出發、新墻河を渡河せんとせし際、急に友軍の側背に迫りし敗敵は小癪にも行軍序列を目標に射撃し来れり。
此の時第〇〇隊の駄馬三頭負傷せり。
而して病馬を直ちに敵弾死角内に収容して治療に任しありし時、又々飛来せる流弾は不幸にも島田軍曹の左胸部を貫き彼は軍馬に施すべき繃帯を堅く握り締めた儘莞爾として寒風戎衣を吹く新墻河畔に壮烈なる戦死を遂げたり。
故島田曹長は一昨十五年九月〇〇山砲兵〇隊に獣医部下士官として赴任以来、席の温まる遑なき連続的作戦に常に勇躍して参加し、部隊馬衛生向上の為日夜真摯なる努力を続け来り。
實に模範とするに足る下士官なりき。

「陸軍獣医團要報」より 昭和17年

日本軍の定める正式な軍用動物は、馬、鳩、犬、象、驢馬、騾馬、駱駝、馴鹿。
軍用動物の運用管理には多大な労力と費用と物資と、そして犠牲を要しました。
「国費で調達された軍の装備品」ですから、粗末に扱われていた訳ではありません。
以下、日本陸軍の馬学教程(昭和16年)を基本に解説していきましょう。

【軍用動物】
軍事上、馬以外の動物を使用するは、一は馬の不足を補ひ、一は任務上却つて他の動物を有利とする場合にして、輓用、駄用、及特種の任務に應用せらるるもの少なからず。就中世界各國軍に於て使用しあるものは、驢、騾、牛、水牛、駱駝、象、馴鹿、犬、鳩等とす。
我が國に於ては明治二十七、八年戦役及明治三十七、八年戦役に際し驢、牛及駱駝を、又支那事変に於ては現地所在の各種大家畜(驢、騾、牛、黄牛、水牛、駱駝等)を代用し、輓駄用に使用せり。
近時更に犬及鳩を軍事上に用ふるに至れり。
将来戦に際しては益々之等の動物力を利用せざるべからざる場合少なからざるべし。

【ウマ】
平時の軍馬は其の保管區分に従ひ、部隊保管馬、軍馬補充部保管馬及び貸付豫備馬に分たる。
軍馬は其の用役を乗馬、輓馬及び駄馬に分ち、便宜上騎兵機関銃、同通信駄馬を乗馬、輜重輓馬を駄馬として取扱ふところに定めあり(軍馬管理規則)。
戦時は軍馬の所要数著しく増加す。其の大部は民間より徴発又は購買せる馬匹を以て充足せられ、平時保管馬は直ちに基幹馬たる地位を占むるものとす。
而して爾後の補充は内地より追送(主として徴発又は購買馬)せらるるか現地取得の馬匹を以てせらるるものなり。
我が國産馬は素質未だ所望の域に達せざること遠しと雖も、平時保管馬は多数の地方馬より資質優良なるものを厳選の上補充せられ且調教を完成しあるを以て其の能力も亦可なるも、
編成の主體たる徴発馬は其の體格に於て将又調教鍛錬に於て平時保管馬に比し遠く及ばざるのみならず、集團的馴致不良にして取扱困難なるもの尠からず。
従来の戦例に徴する徴発馬は、平時保管馬に比し発病竝損廃著しく大なるのみならず、入隊當初屢々危険なる傳染病の媒介を為すことあり。


帝國ノ犬達-日除け帽
日本軍の兵站も馬が支えていました。写真の軍用輓馬は、日除けの陣笠を被っています。

軍馬に関しては、日中戦争時も二千頭程が戦地から帰国していました。敗戦時は一頭も帰れなかった訳ですが。



【ロバ】

性稍〃頑固なるも慣るれば従順にして、能く粗なる飼養管理に堪へ、體格小なるに比し負担力竝に持久力強大にして事に嶮道の歩行に巧なるを以て、経済的駄獣として愛用せられ、世界大戦に際しては山地及塹壕等に於て賞用せられたり。
本邦内地には殆ど見ざるも、中央亜細亜を中心として其の四方の國々に最も濃厚に分布し、支那大陸には至る所に飼養せられ、各種の軽易なる用途に服す。


【ラバ】

温和にして粗なる飼養管理に堪へ、、體格に比し輓曳力竝に持久力に富むも快速なる運動には適せざるを以て、世界大戦に於ては山地に於ける輓用竝に駄用に賞賛せられたり。
驢を飼養する地方には殆ど必ず騾を有し、欧米地方には體格甚だ偉大なるものあり。満蒙地方には約八十一萬頭を有し、其の體格一・四〇~一・五二米位のもの多く、黒褐色の毛色を主とし、騾線を有し、蕃殖力を有せず。
其の飼養管理法は概ね支那馬に同じ。

帝國ノ犬達-驢馬
中国戦線にて、軍馬と軍ロバ。 昭和12年


【ラクダ】

駱駝は古来西剌比亜、満蒙及亜剌比亜地方に於て主として輓駄用に利用せらるゝものゝ外、其の被毛は繊維物材料に供せられ、埃及阿弗利加、印度に於ては軍用として用ひらる。
我國にては西剌比利亜出兵當時兵站部に一部使用せられ、軍用價値を認められたり。
欧州大戦に於て英軍は一九一七年七月パレスタイン方面の作戦に於て総数三萬餘頭の駱駝輜重隊を使用し、初期に於ては取扱法の失宜、駄鞍の不完全に基き一箇年に約一、五〇〇頭の斃死と七、八〇〇頭の入廠を見たるも、駄鞍の改良により一九一八年以降は著しく其の故障を軽減するを得たり。

帝國ノ犬達-ラクダ

日本陸軍が配備していたフタコブラクダ。


【トナカイ】

寒地に於て輓用に使用すること得。其の能力は二頭曳にて一〇〇乃至二〇〇瓩を積載し、一時間に四乃至八粁の速力を有し、一日約四〇粁の行程を数日間連續し得べし。

帝國ノ犬達-トナカイ

トナカイはロシアや北欧の軍隊で運搬用に使われていました。

写真は雪原を疾走するドイツ軍のトナカイ橇。1943年

【ウシ・スイギュウ】

牛は役用として輓曳又は駄載に用ふるの外、乳肉用としても亦軍事的價値大なり。而して役用としては役牛又は役肉兼用牛を用ふ。
朝鮮及支那に於ては牛を使役するもの多く、本邦に於ては主として西半部に多く、其の総数約百五十三萬頭に達す。
牛は抵抗力及力量に富み、管理比較的容易なり。能力は種類及體格により一様ならざるも、重輓用に適し普通四五〇乃至六〇〇瓩を積載し、一日三〇乃至五〇粁の行程に堪へ、駄用としては八〇乃至一〇〇瓩を負担し、毎時三粁を通過し得べし。
然れども速力遅きを以て部隊に踉随すること困難なれば、別箇の指揮の下に動作せしむるを可とす。南亜戦に於ては水牛を以て代用し、其の結果良好にして又欧州戦に於ては英軍は獨領東阿弗利加遠征に重砲野砲の輸送に水牛を使用し大なる効果を修め得たる實例あり。

帝國ノ犬達-軍牛
荷物を運ぶ軍牛。中国戦線にて

【ゾウ】
アフリカ及東南亜細亜に産し、主として駄用に利用せられ四〇〇乃至五〇〇瓩を駄載し、一時間五乃至六粁の速力を有し、一日六乃至七時間の行動を普通とす(過労ニカカリ易シ)。

帝國ノ犬達-軍象
第1次大戦にて、作業に従事するドイツ軍の象。


【イヌ】

犬を基礎的に訓練し軍用に多用せしは欧州大戦に於ける獨軍にして、爾来各國の注目を引き競つて軍犬の教育訓練の研究をなすに至れり。
我が軍に於ては大正八年以来陸軍歩兵学校に於て之が研究中なりしが、満洲事変を動機として實戦的價値を認められし結果、昭和八年陸軍歩兵学校及関東軍に軍犬育成所を設置せられ軍犬の蕃殖、補充、訓練等を行ふこととなれり。
我が國に於ける軍用適種犬と認むべきものは約一萬頭にして、之を米國の二十萬、獨國及英國の十五萬、佛國の十萬に比すれば尚遜色甚だしきを知るべし。


帝國ノ犬達-軍用犬


【アシカ、アザラシ】
アメリカ海軍の軍用アシカは、イラク戦争などで敷設機雷の捜索などに使われています。
第2次大戦時のスウェーデン海軍では、ドイツ軍の潜水艦対策として自爆アザラシを研究していました。

日本軍による海獣の軍事利用としては、皮革資源としての扱い程度。


帝國ノ犬達-オットセーラー

海軍グラフ(※お堅い軍事雑誌です)掲載 「おっとセーラー」より 昭和12年

【イルカ、ベルーガ】

冷戦時代、米ソ両軍が盛んに研究していました。

掃海作業や海没した航空機や艦船の捜索などが任務。
中には、敵フロッグマンの呼吸装置破壊訓練を受けた「殺人イルカ」も存在するとか。


【ハト】

極めて古く既に西暦紀元前四十三年モデナ城攻囲戦に於て防者は鳩通信に依り救援軍の得たる記録あり。
又普佛戦争に於ては巴里包囲の際鳩が城の内外の連絡したることは裕なりなる事實なり。
爾来各戦役には必伴の動物なりしが、無線電信の出現と共に漸次其の要度を減せしも、欧州大戦に至り之等科学的通信機関の完備と同時に之等を破壊妨碍する手段案出せられ、茲に再び通信機関として世界各國の陸軍に於て必要缺くべからざるものとなれり。
我が陸軍に於ては大正八年東京中野に軍用鳩調査委員を設置し、佛國より権威者を招聘し調査研究を開始せり。
當時鳩は極めて少数にして其の能力も貧弱なりしが、最近は五萬羽に及び飛翔能力六〇〇粁に発達し、殊に鳩車に依る移動通信は世界一を誇る米國をして日本の模倣をせしむるの現況なり。

帝國ノ犬達-軍用鳩
日露戦争で伝書鳩を使うロシア軍。戦時画報より、明治37年。


【タカ】
明治21年の朝日新聞に、「敵の伝書鳩を狩る為、ドイツ軍が日本及び朝鮮産の鷹を購入計画中」との記事があります。
これにヒントを得たのか、日露戦争末期には対伝書鳩用の鷹と隼が宮内省(鷹匠を管轄)の協力を得て訓練されました。

訓練地域の転換などに手間取り、結局は実戦投入前に戦争は終結。

日露戦争中は、吉兆として猛禽類を飼っている日本海軍艦も幾つかありました。


帝國ノ犬達-軍用鷹
日本軍による軍用鷹訓練を伝えるニュース。明治38年


これら軍用動物のうち、機械技術の進歩と共に馬と鳩などは退場。

新たに、掃海任務用のアシカやイルカといった海獣が参入しています。


その中で、紀元前から現代まで廃れることなく使われ続けているのが軍用犬。

古代の白兵戦用戦闘犬から近代的軍用犬へと進化した彼等は、今なお爆発物捜索などで活躍中です。


次回は、「制式の軍用動物」以外の愛玩用、食用、実験用の動物たちについて取り上げます。

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