ここ最近に観た映画の話…#49 『ナラタージュ』 | 歌もinstも大好き…ratchはかく語りき

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★音楽に関係有あったり無かったりの七転八倒・紆余曲折を、笑いも涙もちょっぴりで味付けしてお送りしま~す!

音楽ブログのつもりなのに、映画とかどーなの?…って思ってたんですが…
読んでくださってる方もいらっしゃったと知り、意外と嬉しくて調子に乗った結果…

前回、前々回と、あまり新鮮じゃない(そんなに古くもないけど…)映画の話しを載せてしまいました。
これ以外にも、実は結構行っとります。
もう全部は無理(笑)


と言いつつも…
今回は、先日、上映終了間近になってやっと観に行って来ました。


『ナラタージュ』


行定監督だし、純粋な恋愛モノだし、有村架純さんが出演してるってゆーんで、公開前から気にはなってたんですが、

オッサン1人で行ったもんかどうか…
ちょっと悩んでたんですが、夜の回にこっそりそそくさと観て参りました。










※※※※※※※※《⚠️ネタバレ注意!》※※※※※※※※











原作が2005年発表の同名小説、最初の映画化構想から12年もの間、温められ続け、やっと形に出来たと言う行定 勲監督の思い入れタップリの作品です。

有村架純さん(…さん付け!)の演技は、同じ世代の女優さん達の中でも、群を抜いて素晴らしいです。

この女優さんと同じ時代を過ごせてるのが嬉しい!幸せだ…と、敢えて言いましょう!

ある局面を演じてる瞬間の、シーンの向こうに感じられる役の背景を、余白で魅せる様に引き込んでくるところなんかは、もうベテラン俳優の域にあると思います。

若手の役者は、普通…振り切った演技が出来るようになった…その先に、溜めたり枯れたりの奥深さを身に付けるもんだと思ってたけど、

有村さんはもうその領域を越えてます。

高校三年生から大学二年生、そして社会人(何年生?)までの、少しずつ…ホントに少しずつの違い、成長の差を演じ分ける佇まい…。

後半の、夜の橋の上のシーンでの、怒りと哀しみと愛しさが、混ざり合い噴き出した表情…

ラスト近くの路面電車での、振り払うと決めても尚、愛しさはぬぐえずに涙する表情…


時間軸がたまに跳ぶんだけど、演じ分けでハッキリ判るし、…特に笑顔の微妙な違いや種類が、主人公の心情のみならず、そのシーンの状況さえ表情から伝わるって…、スゲ~わぁ。


おっと、有村さんばかりじゃなんですからね。
嵐メンバーの松本 潤くんも、かなり良い演技してましたよ!

部品が大きくて力強いのを逆手に取って、基本、表情の薄い…目で語る系の演技で魅せてくれました。

パンフにもあったけど、出番が全体の3割~4割くらいなのに、物語の中での存在感はとっても強く…役者陣の演技もスタッフ陣の演出も、全てが彼の存在感を印象付けるのに一役買ってたようでした。

彼を配役した先見の明に拍手!


あと坂口健太郎くん。
いつも通りの爽やか人物なんだけど、嫉妬心ちょっと強めな設定を加えて、不安定さから来る緊張感を旨く出してました。

一つのコンビニ袋を二人で持つって言う場面が劇中に二回あるんだけど、最初のほのぼの場面と同じ画ヅラなのに、後半では状況や心境の違いでこうも緊迫感に変わるか…って辺り、

さすがは行定監督。

子供っぽさが覗く坂口くんの表情を、大人に成り切れてない情緒不安定な人物として旨く表していて、彼の演技で、なんか…スティーブン・キングの映画とかが頭をヨギッちゃった(笑)


どの俳優さんの役も、個性がありつつも偏りを作らず、誰しもが持ってるダメさ加減をバランスよく配された演出になっていて、要らない役は無いって感じ。

後半に悲しい事件が起こるんだけど、前半に無理なく張られた伏線が、回収されるのと同時に物語に局面を迎えさせる様に作られていて、嫌な引っ掛かりがまるで無く、す~…と物語が入って来る。

それが出来てるから、始めから終わりまでが静かな印象で通せるんだなぁ…と。

引っ掛かりがあると、ガチャガチャしちゃって静けさも薄れますよね?


変な話しだけど…、いわゆる濡れ場も静か。
むしろ美しくて…
そーゆーシーンなのに、ちょっと泣けちゃうんです。
主人公達に感情移入しちゃって。

恋愛物語って、ドラマでも映画でも劇的な展開ばかりがモテハやされちゃって、「うわぁ~!」とか「ヒャ~!」とかって反応に陥りがちだけれど、

この作品は違う。
始めから終わりまでジンワリ染みる…。

ドタバタの後…最終的には予定調和で落ち着くと言う類いの話しじゃなくて、

人間って…恋すると、ダメな部分が浮き彫りになって、哀しくてせつなくて…でも忘れられなくて、思ってる事と反対の事をしたり言ったりしちゃって…また泥沼になって…振り払えなくて…

結局は…距離や時間、違う関係性に頼る事になって、自力では薄められなくなる…。
そして思い出になった頃に、やっと輝きはじめるんだよねぇ…。

渦中にある頃から輝いてるのって、実は恋に恋してるだけの場合が大半だと思う。

だって、100%分かり合えるなんて…気持ちの全部を相互に向け合って、外野は遮断…でも寛容である…なんてムシが良すぎる話し、一般的だとは到底思えないもん。

誰の胸の中にも、これ程に大きな振り幅じゃないにしても、多かれ少なかれある…矛盾と葛藤に満ちた恋心…
それに寄り添うよう…、静かに描かれた映画『ナラタージュ』…

心の中に、色々な輝きの雨が降り注いでます。

日射しも、曇りも、雨模様も、…ベールの掛かった恋心には、等価なんだと気付かせてくれた映画でした。