夏が来れば思い出す♪という童謡がある。この季節は一年の中でも特別で、輝く太陽がいつも見る風景もより光を浴びる。せみの声、読書、夏の服装・・・そのときふと思い出に浸る瞬間がある。


私の年齢になると中学高校時代に過ごした年頃を懐かしく思う。しかも海外に住み、生活習慣や文化がぜんぜん違う国に住んでいると、人生の半分をすごした日本で繰り返し脳裏に浮かぶ日々とリンクするイメージには当時読んだマンガ、そのマンガをアニメ化されテレビ放送されていた頃観たものが、なぜか記憶に良く残っているものだ。






「巨人の星」
二人兄弟の弟である私は、野球には関心がなかった。兄があまりにも野球少年だったことや、子供の頃から兄は、自分が好きなことは私には譲りたくなかった。その影響があまりにも大きく残っているからだ。このアニメが登場したとき、兄が主人公星飛馬の年齢なのに対し、3つ以上年下の私は、野球にかける情熱を独り占めしている兄をみながらもまだ小さかった。
ただこのアニメはあまり好きではなかった。なぜかというと・・・

1)主人公はピッチャーとしてまるで一人で野球をしているかのような設定である。
2)巨人に入団することだけが人生で、他の球団の選手はその敵役でしかない。
3)野球の試合内容よりも、各球団に一人ずついるライバルとの勝負と心の葛藤に使う時間が長すぎる。

他にもこれに似たマンガやアニメがあった。どれも同じように好きではない。団体球技をまるで格闘技でもあるかのように描写するなら、いっそ格闘技をテーマにしたマンガの方がスッキリして気持ちいいのだ。




「ドカベン」
上の条件とは逆に、主人公はピッチャーではなくキャッチャーであることや、作者は巨人ではなく、パ・リーグの南海をモデルにした明訓高校を描いているし、9人全員で試合をやっている感じ、それにアナウンサーの声も入っていてまるでテレビで試合を観ているかのような臨場感が味わえ、このマンガのおかげで野球が面白く観られるようになった。

キャラの設定も絶妙で、大阪弁でハチャメチャな岩鬼やズウズウ弁の殿馬は音楽の天才と、それまで野球にしか興味ない人間ばかり登場するマンガとはまるで違う、山田太郎はマイナスだと思われる人材を使いこなす、会社での管理職の見本のような人間ができている。
こういう人物こそ、社会に出ても成功する。

ネットYOUTUBEで検索してみると、連載アニメが丸ごと観られるので、山田太郎が中学生の頃柔道部を建て直して、のち野球部も立て直す、ゼロから起業する精神も見せてくれる、第1話から、1年生ドカベンの明訓高校が夏の甲子園初出場初優勝する第55話まで続けて観てしまった。

ただこのストーリーでは、柔道の面白さはあまり出てこない。柔道着はもともと地味だが、みんながみんなつぎはぎがあってとても貧しいイメージだ。

私の中学には柔道部がなかったが、近くの道場に通っていたし高校から柔道部で柔道をやっていた。そのためのちに野球マンガになってしまうこの作品にも入り込めた。

sanshiro

「一・二の三四郎」
このマンガは、中学生の頃同級生が、私はこれに登場する「とんちゃん」に似ているぞ、と教えてくれて知ったのだ。このキャラは角刈りしていて、当時私も角刈りだったからだ。

「ドカベン」では、チラッと出てきた柔道という武道でのちに野球という球技だが、この作品は最初に球技のラグビーで、のちに武道の柔道、そしてプロレスとなる。
柔道を描くマンガでは断然面白く、彼らが創立する「総合格闘部」は、当時武道に励むものたちのお気に入りだった。実際、高校柔道部の顧問が柔道は経験なしだがカラテの達人、そしてこのマンガの読者でもあったので、柔道部をいっそ「総合格闘部」にしよう、なんて話していたぐらいだ。

今でこそ、サッカーが花形スポーツとなり、国内はJリーグをはじめ、海外の試合も観られるようになったし、スポーツもいろいろマンガにもテレビやファッションにも取り上げられるようになった。でもあの頃誰もが野球しか考えていない頃に柔道や他の武道、格闘技を日の当たるところに出してくれた作品で、私にとってお気に入り「思い出に残るマンガ」だと言える。