今回は、ヴィンテージガラスボタンの中でも、特に私のお気に入りのご紹介です
今日のテーマは、”ムーングロウボタン”です。
(本日は少し長いので、歴史背景の部分は読み飛ばしていただいても・・・^^;)
動画でもご覧いただけます↓
どんなボタンかというと・・・
このような感じの、とても綺麗で光沢のあるボタンたちです。
市場には1954年~1969年の間に現れていました。
<少しだけ、歴史のお話>
そんなムーングロウボタンなどのガラスボタンたちですが、ガラスボタンの昔からの産地は、
ヨーロッパはボヘミア地方、ガブロンツ(チェコ語ではヤブロネツ・ナド・ニソウ)
という場所でした。
現在もガラスと宝飾品の産地として有名です。
その当時は第一次、二次大戦という背景がある中で、ガブロンツも色々な歴史的な
出来事が起こります。
元々ガブロンツは、ドイツ人が居住していた場所でした。
ざっくり言うと、
・第一次大戦後半頃 ⇒ チェコスロバキアの一部
・ヒトラー台頭により1939年 ⇒ ドイツ領になる
・第二次大戦後1945年 ⇒ チェコ人が入植。ロシア圏チェコスロバキアの一部へ
このとき、名前をガブロンツ⇒ヤブロネツに変更
・同年、ガブロンツを追われたドイツ人は、わずか300マイル(約480キロ)しか
離れていないところ(旧西ドイツ)に、ノイガブロンツ(新しいガブロンツ)を設立
つまり、新旧両方のガブロンツでガラスボタンは生産されていました。
旧ガブロンツ(現ヤブロネツ)はチェコガラスボタンが、
新しいガブロンツではドイツガラスボタンが作られます。
チェコとドイツは20世紀最大のガラスボタンの産地でした。
ムーングロウガラスもこれらの場所で生み出されました。
とても長かったですが・・・^^;
さて、ムーングロウガラスとはどんなものでしょうか?
ペーパーウェイト(ガラスの文鎮)と似ており、
透明または半透明のガラスベースに、主に表面(時には底まで及ぶような)に
クリアガラスの層を重ねたものです。
ドーム型のものを横から見ると分かりやすいですが、
色のついた面の上をクリアガラスの層が覆っているのが分かります。
そして、見た目の最大の特徴は、この美しい色味です。
キャッツアイ効果と呼ばれるもので、猫の目のような光の帯が表面に見られるものが多いです。
他にはこんな感じの大きくうねった見え方のものも。
アメリカの文献には”pillowy”=ぐにゃり なんて表現もされていました。
ここからは、色々ムーングロウたち。
ボーダー柄。パッと見それとわかりにくいですが、懐中電灯などの光を当てて
横から注意深く見てみると、透明のガラスの層で覆われているのがわかります。
リアリスティックなもの。かわいい形ですが、なんだか上品です。
女性の顔のモチーフのもの。
こんな感じの模様のものも見つかりました。繊細で、ゴージャス
同じくラスターで、今度は縁取りになっているもの。
ラインストーンを施したもの。宝石のような綺麗さです。
さて、ムーングロウですが、第二次大戦後、復興が進む中、
キラキラ光る素材が女性の憧れになっていた時代、1954年に世の中に売り出されます。
当初は”ムーンストーン”、”イリス(ギリシャ語の虹)”、”ムーングロウ”として
広告宣伝されましたが、その後”ムーングロウ”という名前で定着します。
最後に、ガラスボタンが盛んに世界中の店頭に並んでいたのは、
1950年代半ばくらいまでです。
その後、少しずつガラスボタン産業は衰退していきます。
戦後の(特に西側諸国は)目覚ましい復興の中で、ガラス職人よりもさらによい仕事に
つきたい人であふれていたこと、また家庭にも洗濯機が登場し、
これに耐えうるプラスチックやメタルなどのボタン素材が求められるようになったことなどから、
ガラスボタンは次第にその役割を終えていきます。
そんな揺れ動く時代に出てきたムーングロウボタンも、
1954年~1969年のわずか15年くらいの間に、次第に作られなくなっていきます。
ガラスボタンは職人によるハンドメイドが非常に多いのが特徴です。
今私たちが手にしているムーングロウガラスボタンは、
そんな時代に作られた手仕事による美しいボタンたちです。