今日はちょっと懐かしいのいってみましょう。


Nipsey Hussleの2010年のミックステープ
The Marathonよりこの曲の和訳です!




Nipsey Hussle - Keys 2 the City





〜リリックと和訳〜


[Chorus]
455, I drive by doing a hundred
And I stay blunted
('Cause I do what I need)

455に乗って100マイルでドライブバイ(※1)
常にブリブリ(※2)
(そんな気分だからな)

And that's the reason that they love me
Cause I've been making money
(I got the key to the city)

だからみんな俺のことが好き
金を稼いでるから
(この街の鍵(※3)だって持ってるぜ)

It feels good to be on top
(I got the key to the city)

頂点に立つのはいいもんだ
(この街の鍵を手に入れたんだ)

This is how it is to be a big shot
大物になるってこういうこと


[Verse 1]
Black on black Mercedes Benz
Tattoo all my lady friends

真っ黒なメルセデス・ベンツ
女友達はみんな俺のもの(※4a)

Nipsey on they titties
More game than ESPN

Nipseyがその子らの乳にいるぜ(※4b)
ESPNより人気者(※5)

I turn these hoes to lesbians
Make her fuck her best friend

こいつらをレズビアンにだってできるんだ
彼女も親友とヤるさ(※6)

Get head for one hour
Smoke a blunt and catch my second wind

1時間フェラしてもらっても(※7)
ブラントを吸えば息を吹き返す(※8)

Hopping off my tour bus
She probably just had sex with him

俺のツアーバスから降りてきたあの子も
たぶん奴とセックスしたばかり

She's out of your possession
You cannot protect her then

彼女はお前のものじゃないんだ
だから守ってなんてやれないのさ

South Central that's my residence
Deadly like them seven sins

俺の地元サウスセントラルでは
七つの大罪並みに命が危ないぜ(※9)

And if I'm not the king of this
I must be the president

俺がそこの王様じゃないなら
大統領にちがいないな

O.M.G. I'm ill as shit
Money is my medicine

OMG、俺は最高にイル(※10)
金は俺にとって薬

Shout out to my niggas in the pen text messaging
ムショ(※11)からテクスト(※12)してくれる奴らにシャウトアウト(※13)

Shout out to them bitches getting it in in they crevices
割れ目にソレ(※14)を入れてくれるビッチたちにシャウトアウト

Conjugal visits make sex seem so irrelevant
面会に来てくれればセックスなんて重要じゃない

Forget about the risk we took, I never can
俺らが冒してきたリスク、忘れられるもんか

Rebel in this white man's world until they bury him
この白人が支配した世界で最期まで反逆し続けるんだ

Being broke is so un-American
貧乏でいるなんてアメリカらしくないだろ

That's why I'm screaming "All Money In" till the end, nigga
だから俺は最期まで「金はすべて俺のもの」(※15)って叫び続けるんだ


[Chorus]


[Verse 2]
Pull up in that old school
Me and lil Shady Blue

オールドスクールな車を寄せる
俺と弟分のShady Blue

Fresh up out the county jail
They held us both without no bail

郡刑務所から出てシャバに戻ったぜ
保釈もされなかったんだ

Ten stacks to my lawyer
Said a prayer that we prevailed

弁護士に10の札束を渡して
出られるように祈った

Jealous niggas hated that
Love to see a nigga fail

ジェラスな奴らはそれを嫌った
俺が失敗するのを望んでたからな

Miss me with that "Bro I love you"
Sucka nigga be for real

会いたかったとか愛してるぜとか
物乞いみたいな奴らはマジでひどい

Fake as four dollar bills
Hit the gas, we're out of here

4ドル紙幣並みにフェイク(※16)
そんな奴らとはおさらばだ

On our way to fox hills
Spending like we got a mil

フォックス・ヒルズ(※17)に向かう途中
100万ドル持ってるみたいに金をばら撒いて

Smoking so much kush it got us feeling like we're off a pill
クッシュ(※18)を吸いまくってどうかしてるみたいな気分だ

They know we got dollars still
And bitches know they got the bill

それでも俺らが金持ちだってみんな知ってる
ビッチたちも自分が金持ちだって知ってる

Eatin benihanas daily
Drive my baby momma crazy

毎日のようにベニハナを食べて
ベイビーママ(※19)は正気じゃいられない

Name a nigga that could fade me
Pussy that does not persuade me

俺を消せる奴の名前を挙げてみろよ
プッシーだって俺を説得できないぜ

Got a swag that make em hate me
Plus we never shop at Macy's

このスワッグ(※20)のせいで奴らは俺を嫌う
それにメイシーズなんかじゃ買い物しない

Louis V and Gucci, maybe
Neiman Marcus, blue Mercedes

ルイヴィトンにしようかグッチにしようか
ニーマン・マーカスにしようか、青いメルセデスに乗って(※21a)

We was both familiar faces
Spending thousands, dodging cases

俺らお互いに顔なじみだったよな
何千ドルも使っていざこざを避けて

Fuck a bottle, bring the cases, is what we told the waitress
ボトルじゃない、ケースごと持ってこいってウェイトレスに伝えた

Then pop Clicquot for all of y'all that tried to play us
俺らをバカにしようとしたお前らのためにクリコで乾杯(※21b)


[Chorus]


[Verse 3]
Dre passed, Def Jam
Capitol, Atlantic, too

DreもDef JamもCapitolもAtlanticも
俺との契約をパスした

Thought that I'd be dead or doing life 'cause what I rap is true
俺のラップは真実だから、俺が死ぬか終身刑になると思ったんだ(※22)

Just another you-know-who
Sam had some time to do

例のあの人
Sam(※23a)はオツトメしてた

And yea, Steve is cool
But I heard Big U's an animal

それにSteve(※23b)はクールだけど
Big U(※23c)はヤバいって聞いたぜ

Fuck what they was talking about
We just did what we had to do

あいつらの話してたことなんてクソ食らえ
俺らはやるべきことをやっただけ(※24)

Became the most valuable
After I dropped Vol. 2

Vol. 2をドロップして
MVPになった

From the West Coast at least
Now for the West Coast I speak

少なくともウェストコーストではな
今はウェストコーストのために声を上げる

Cause on a level 4 with Gilbon is where I'm 'posed to be
本来俺はGilbonと一緒にレベル4にいるべきだからな(※25)

I be on some business shit
Y'all bring out the loc in me

ビジネスに取り組んでる(※26)
お前ら、俺の中のクリップを起こしたな(※27)

Like a broke weed head
My pistol will smoke for free

一文無しのウィード(※28)中毒みたいに
俺のピストルはタダで煙を上げる

Imani ain't gon' know the streets
Got to keep her close to me

Imaniはストリートを知ることなんてない
離さないようにしないと(※29)

Put that on the man that's on the cross on my rosery
ロザリオの十字架にいる男(=神)に誓うよ

Wasn't always banging but I speak about it openly
いつもギャングバングしてたわけじゃないけど包み隠さず話すぜ

No shame in my game
I did my thing on the coldest streets

恥じることなんてない
身も凍るような(※30a)ストリートで自分を貫いたんだから

Who's the hottest on the West?
All you niggas know it's me

西海岸で一番アツい(※30b)のは誰だ?
みんな俺だって知ってんだろ

So tell whoever got it locked that Nipsey Hussle stole the key
施錠した奴には俺が鍵を盗んだって伝えてくれ


[Chorus]




〜リリックと和訳〜

※1
車内から発砲することを「ドライブバイ・シューティング」といいます。通常はゆっくり近づいて標的を見定め発砲しますが、ニプシーはこれを時速100マイル(約160km/h)で走る車から行うと言っています。


※2
マリファナを吸う方法はいくつかありますが、最も一般的なのはおそらくブラント(blunt)で吸う方法でしょう。"blunt"は名詞ですが、これを動詞と捉え、さらに過去分詞にすると「マリファナでハイになった」という意味の形容詞になります。

ブラント↓



※3
"Key to the city"(直訳すれば『市への鍵』)は栄誉賞的なもので、その街出身の活躍した人物に贈られます。この曲のタイトル"Keys 2 the City"もここからきています。BETの記事で、Key to the cityを獲得したラッパー一覧があるので、よかったらご参照ください。


※4a
ここは直訳すれば「女友達全員にタトゥーを入れる」になります。いわば「烙印を押す」ような感じで、自分がいかに重要人物であるかを表現しています。

※4b
実際、女の子たちはニプシーのタトゥーをおっぱいに入れているようです。


※5
ESPNはリンクのとおりスポーツチャンネルです。一方、女の子にモテることを"have game"と言ったりします。スポーツの試合(game)が流れるESPN以上にNipseyはgameを持っている(=モテる)ということでしょう。


※6
ニプシーの力でここまで可能、ということです。※4と同様に自分がいかに力を持っているかを示しています。


※7
フェラしてもらうことを"get head"といいます。


※8
元気ですね。


※9
キリスト教では「高慢」「物欲」「嫉妬」「憤怒」「色欲」「貪食」「怠惰」を合わせて七つの大罪(Seven deadly sins)といい、これらを死に至る罪と定めています。ニプシーの地元サウスセントラルも、これと同じくらい死と隣合せの(deadly)環境です。
なお、ここで"seven sins"の前にある"them"は、文法的には通常不要ですが、口語ではしばしばこのように使われます。


※10
"ill"には「病気の」という意味もありますが、スラングで「(良い意味で)ヤバい」という意味もあります。NasのデビューアルバムIllmaticもここからきています。後ろの"as shit"は程度を強める副詞句で、"as fuck"や"as hell"などと言うこともあります。


※11
元のリリックで"pen"とあるのがそれです。"penitentiary"の略です。


※12
電話番号で送るメッセージのことです。日本ではLINE等が主流ですが、アメリカでは料金システムが異なるため、テクストを連絡手段とすることが一般的です。


※13
リスペクトを込めて名前を挙げることをシャウトアウトといい、よく"S/O"などと表記されます。


※14
ドラッグのことです。ニプシーの周囲の女性は、ニプシーが売ろうとしているドラッグを性器の中に隠してくれるようです。


※15
ニプシーのレーベルもAll Money In Recordsです。この名前には、仲介業者に搾取されることなく、自らの作品を自らの力でリスナーに届け、その対価を全部自分のものにするという哲学が込められています。

ニプシーが創設したAll Money In Recordsのロゴ↓



※16
4ドル札なんて無いですよね。金欲しさからニプシーに近づいてくる連中のフェイク(紛い物)さを4ドル札のそれになぞらえて表現しています。


※17
現在ではWestfield Culver Cityという名前のショッピングモール。以前はFox Hills Mallという名前であり、人々は未だにそう呼びます。


※18
これもマリファナです。


※19
子供のお母さんのこと。結婚していれば"wife"ですが、そうでない場合にこの単語を使います。


※20
この「スワッグ」についてはいろいろなサイトで解説されているので調べていただければと思いますが、自分としては「なんかイケてる雰囲気」くらいに捉えています。


※21a
自分の贅沢な暮らしぶりをこのように表現します。メイシーズはごく普通のデパートである一方、ニーマン・マーカスは高級デパートです。格が違うということなのでしょう。

※21b
クリコもまた、高級シャンパンです。


※22
1つ前のラインで挙げている4者(Dr. Dre, Def Jam Records, Capitol Records, Atlantic Records)はいずれもニプシーと契約しませんでした。ニプシーがラップしているギャングバンギングを主題とした内容は事実であり、そんなニプシーと契約することはリスクを伴うからです。


※23
どれもニプシーの仲間の名前です。


※24
サウスセントラルのストリートというタフな環境を生き抜くには、手段を選んでいる場合ではなかったということなのでしょう。


※25
レベル4とは、カリフォルニア州の刑務所で最も高いセキュリティレベルです。Gilbonは仲間の名前でしょう。このラインで、自分がいかに危険人物であるかを表しています。


※26
ここでの"shit"にそれほど大きな意味は無いです。"thing"のような感じで使います。


※27
LAを中心として全米には、青をシンボルカラーとするクリップス(Crips)と、赤をシンボルカラーとするブラッズ(Bloods)の二大ギャングがいて、前者のほうが大きいです。このクリップスのメンバーを"loc"と呼ぶこともあります。
ニプシーはRollin 60's Neighborhood Cripsというギャングに属しています。Rollin 60's Neighborhood CripsはLAで最も構成員の大きいセットです。


※28
これもまたマリファナです。おそらくこの呼び方が最も一般的です。


※29
Imaniはニプシーの娘の名前です。ニプシーは彼女に、危険なストリートとは関わってほしくないと考えています。

ニプシーと娘のイマニちゃん↓



※30
身も凍るような(coldest)ストリートをサヴァイヴした最もアツい(hottest)男と、2つの正反対の最上級を用いることで自分を表現しています。




〜おわりに〜


この曲にはけっこう、思い入れがあります。


ネット上でよく見かけた
「ヒップホップは90年代が黄金期」
「最近のヒップホップはゴミ」
といった声を鵜呑みにし、自分の耳で確かめることなく
最近のヒップホップはクソなんだろうなと思っていた
2011年頃にこの曲と出会いました。


オートチューンがかった声の歌っぽいラップと異なり
rawな感じのラップが気に入り、Snoopっぽい容姿も
気になり、そこから徐々に新譜を追い始めました。


リリックを読むようになったのもこの頃からです。

受験英語は得意だったとはいえ、ラップは別物。

苦心惨憺しながらいろいろ調べ、理解しようとしました。


そんなこともあり今回は、普段やらないような、
ヒップホップをある程度聴いてる人なら誰でも
知ってるレベルのスラングまで解説してます。


今ちょっとだけヒップホップに興味を持っている
当時の自分みたいな人が、これを機にリリックを
読み込むくらいまでハマってくれたら本望です。


てかNipsey Hussle、この頃はウェストコーストで
一番勢いがあって、Kendrick Lamarよりビッグに
なりえただけに、メジャーデビューしなかったの
もったいないな。。