Patentの試験が、火曜日に迫っています。
というわけで、クラスメートとどのあたりが出題されるかヤマはり大会(笑)。
まったく、やってることは日本の大学生時代となんら変わりません


ヤマの大本命のひとつは、Quanta Computer Inc. v. LG Electronics Inc.という特許消尽論に関する判例。連邦最高裁による最近の一連のプロパテント政策見直しのトドメをさすかのようなこの判例、昨年6月に出たばかりゆえ、commercial outline(ロー生が使う市販の参考書)などに入ってるはずもなく、出題可能性はかなり高そうです。
あらためて読んでみると、この判例、みっつ興味深いところがあるように思います(要約してる時間がないので、すみませんが事案はどこかで調べてください)。


ひとつ目は、方法特許について消尽を認めたということ。
これは論旨も明快で、先例としての拘束性はかなりカタイでしょう。
この判例はさらに一歩踏み込んで、方法特許の重要構成部品の販売も製品自体の販売と同視してこれによる(方法特許の)消尽を認めてよい、というようなことも述べています。これについては、本来の意味の方法特許、つまり構成部品自体はありきたりでも方法が革新的な場合はどうよ?というギモンも若干ありますが、一般論としてはまあそうかなという気がします。


ふたつ目は、特許製品の条件付販売の「条件」は消尽により第三者に及ばないとした点。
これは、判決文を読む限り、「特許権は特許製品の譲渡により消尽し、当該特許製品の再譲渡を受けた第三者は、特許権者によって第一譲受人間に対して課された実施上の制約の影響を受けない」とか、あるいは「ライセンス契約においてライセンシーに課された条件は、消尽により、ライセンシーから製品を譲り受けた第三者を拘束しない」(本件は実は特許権者が製造した特許製品の販売&再販売という典型的な消尽のパターンではなく、原告LGEが訴外Intelに対してライセンスし、Intelが製造した製品を被告Quantaに販売し、QuantaがLGE・Intel間の契約に反する形でIntel製品を組み込んだ製品を製造販売した、という事案だった)とかいうような形で一般化することには、かなり問題があろうかと思います
というのも、連邦最高裁は「ぶっちゃけ問題の条件はライセンス契約とは別個の契約に書いてあって、ライセンス契約上は制約ないじゃん。ライセンス契約上に制約ないんだから、ライセンシーと取引した第三者がライセンス契約上の制約なんか受けるわけないじゃん。」みたいなことを述べているのです。
要は、LGEは契約書の書き方がマズかったから負けた、と言われてるようなもんでして、企業法務担当者としては、おおいに他山の石とすべきところかと思います(判決文にどう書き方がマズかったのかわかりやすく指摘されていますので、ライセンス契約実務に携わる方はぜひお読みになってみてください)。


みっつ目は、特許消尽と黙示のライセンスとはまったく別モノであるということ。
私はいつのころからか、消尽というのは特許権が行使できなくなる現象であって、その理論的根拠(のひとつ)として譲受人に対しては黙示のライセンスが与えられ、その後の第三者にもその黙示のライセンスが引き継がれるから、というように理解していたのですが、私の見た限りいろいろな評釈でもだれもこの点に触れてないことからしても、どうやらこれは勝手な思い込みだったようです。
少なくとも、どうやら連邦最高裁は両者をまったく別モノとして捉えているらしいことが、この判例から明らかになりました。
たしかに、権利がなくなるという話である消尽と、権利があることを前提とした黙示のライセンスとでは、違う気もしてきますね。
いまひとつスッキリしない感も残りますが、試験前にあまり悩みすぎると自分自身が消尽してしまいかねないので、このへんで止めておきます(笑)。