ばーちゃん 第2話 | 恋せよ乙女
本日2度目の更新です合格

 

ばーちゃん 第2話


ばーちゃんとの思い出。

たくさんたくさんある。


「 ばーちゃん仁王立ち事件 」

これは私が16歳の頃。

初めて彼氏というものができ
(すべてはここから始まったのお話しの頃)

私は毎晩家に帰るのが0時を過ぎていた。

まだ未成年の娘がこんなに夜遅くまで、

まぁ大抵の親が怒るように

ばーちゃんも毎日口うるさく怒っていた。

そんな日がずっと続いたある日

バイトが終わって一度家に帰った私が出かけようとすると

普段物静かなばーちゃんが


「 今日は行かせへんで! 」


と玄関のドアの前に絵に描いたように両手両足を広げ

仁王立ちになった。


「 どいてよ! 」

「 いいや、どかへん! 一回お父さんに言うでな! 」


とすごい剣幕で怒ってきた。

私は彼氏のところへ行きたい一心だったので

靴をすかさずさっと手に取ると

ばーちゃんに背中を向けベランダから外に飛び出し

彼氏の元へ向かった。

今思えば、あの上品で物腰の柔らかいばーちゃんが

仁王立ちした姿は

なんだかすごく可笑しくて、そして可愛い。

当時も少しそんなふうに感じていたかもしれない。

だって、少しも腹がたたなかったんだから。



「 鍋のふた事件 」

ある日の夕食。

仕事から帰ってきてばーちゃんと2人で夕飯の支度。

その日あったことや、他愛のない話をしながら

出来上がった夕食を2人で食べていた。


「 不思議なこともあるもんやけど、

  片手鍋のふたについとるゴムの持つボッチが

  どっこ探してもないんさなぁ 」

と言う。


「 洗ったときに緩んで取れて捨てたんちゃうの 」

「 そうやろか 」


その瞬間、私が食べようとすくったスプーンの中に

黒い塊が・・・。


「 うわっ ここから出てきた! きったなぁーー 」


何故だか無くなったそのボッチが

私の食事から出てきたと言うオチ。

この後汚い、汚いを連発しながら

2人ですごく可笑しくなって笑い転げました。



「 初めてのお弁当 」

中学1年になって初めての春の遠足。

当時おばさんが短期入院をしていたので

ばーちゃんがお弁当を作ってくれることに。

遠足前日


「 何がいれて欲しい? 」


と聞くので


「 玉子焼きかなー 」


と言った。 確かに言った。

遠足に行って友達5~6人と芝生の上にシートをひき、

いざお弁当を開くと目に飛び込んできたのは

お弁当箱いっぱいに広がる一面の黄色。


えっ・・・


漫画のように2度見した。

その瞬間私はふたを閉めた。

そう、玉子焼きとは言った。

しかし、玉子焼きだけとは言わなかった。

しかもすごく恥ずかしいことに

その場面を隣に座っていた友達に見られていた。

友達が何気なく


「 私から揚げあんまり好きじゃないであげる 」


と言ってきた。

私は苦笑いで ありがとう・・ と言ったが

とにかく恥ずかしくて恥ずかしくて

穴があったら入りたいくらいだった。

家に帰ってから


「 ばーちゃん! 玉子焼きしか入ってへんだやん! 」


と怒りをぶつけると


「 だってお弁当なんて作ったことないし、

  だから何入れたらええか聞いたやん 」


と、さらりと悪びれもせず言ってのけた。

この事件後、お弁当は自分で作るようになった。

そしてばーちゃんも、悪いと思ったのか、

お弁当の本を買ってきていた。


余談だけど、

お弁当はどんな家庭にいるかの象徴だと思う。

幼稚園の頃、

同じクラスの男の子のお弁当のご飯の部分

いろんな色のふりかけが虹のようにかかっていて

それを見てすごくショックだった記憶がある。

私のお弁当は煮物などの

ほぼ茶色で詰められていたから。


中学の頃、

またクラスの男の子が言った言葉が忘れられない。


「 あー、今日のべんとうめずらしー。

  レンジでチンしたのがはいっとるー 」


その子のお弁当はいつも

母親の手作りしか入ってなかったんだなと

これまた○十年たった今でも思い出す一言だ。





                 



 第3話に続く


ばーちゃん第1話はここから合格