先日のエントリーの続き、です。





最初に挙げた失敗は、『意思決定』に関する失敗でした。

しかし、その話をしているうちに、本当にそれが大きな

失敗だったのかと自問自答するうちにもっと大きな失敗が

あったことを思い出した。






それは起業してから6-7年ほどは、今ほど『採用』に

重きを置いてこなかったということ。

これは今考えると考えられないくらいの大失敗。






コンサル上がりで頭でっかちな自分としては

何をやるか、どうやるか、といった事業領域の選定と

事業戦略、そしてその実行が大事だと考えていた。

そしてそれに対してそれなりにうまくやれている自信も

あった。







でも2005年にそれが間違いで、浅い考えだったとわかった。







その時に何があったかというと、2005年から

サイバーエージェントの取締役になったこと。

これによってECナビという会社を代表として経営する傍らで

藤田が経営するサイバーエージェントという会社の経営にも

取締役として携わらせて頂くことで、よりECナビという会社を

客観的にも見れるようになった。






それと同時にずっと疑問だったこと、『同じネットベンチャーとして

ほぼ同じタイミング(サイバーの設立時期は1998年で約1年違い)で

起業して、どこでこんなに差が出たんだろう?』ということを

徹底して観察し、考えるようになった。






その結果、自分自身ハラ落ちしたのは経営においては、

戦略よりも戦術よりももっと大事なものがある、ということ。





それが『人』であり、『カルチャー』。

これをこだわりぬくことが結果として戦略レベルでの差や

戦術レベルでの差を打ち消すほどの効果を持つんだという確信を

持つようになった







確かにこういうことって「ビジョナリーカンパニー」などの

経営本には書いてあった。でも頭でわかってもそれを実際の

経営にどのレベルで落とし込んでいくか、という実感値が

無かったけれど、それを役員として内側から見てみることで

僕自身にとってもかなり腹落ちした。






そして頭でっかちに戦略を語って実行して結果を出すことよりも、

そもそもそういった小難しい戦略や戦術を駆使しなくても

長期的に企業を成長させ続けることが出来る経営こそが

今の僕が目指す経営者像となった。







そのためには先日のエントリーにも書いたように、

採用に拘り抜くことが重要だと考え、新卒採用・中途採用を

2006年ぐらいから徹底的に強化し始めた。






更に採用を強化しただけではそういった優秀な人が

入ってくれない。若しくは入った後に結局辞めてしまう。

そういった優秀な人が更に一緒に働きたいと思える

カルチャーが大事だと考え、経営理念の見直しを

行い、我々が大事にしたい想い(SOUL)とCREED(価値観)を

明文化してきた。






で、冒頭に戻るけれど一番の大失敗は今ほど『人財』に

力を入れてこなかったこと。

でもなんでそうだったのか、ということをもう少し

深く考えてみると、会社の方向を決めるうえでの

上位概念が『戦略』から出発していたからだと思う。






この『戦略』ってのは実は日本語としては非常にあいまい。

先日紹介した「戦略論の原点」の中に戦略をこのように

整理していた。


戦略論の原点(普及版)/J C ワイリー

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戦略の階層
世界観(ビジョン)

国家政策(ポリシー)

大戦略(Grand Strategy)

軍事戦略(Military Strategy)

作戦(Operation)

戦術(Tactics)

技術(Technique)






これに合わせて考えてみると起業当時から起業して5-6年目くらい

までは、僕が考えていた『戦略』とは所詮は「作戦」

「戦術」レベルだった。

いくら「作戦」「戦術」が得意だとしても、競争(Battle)には

勝てても、総力戦となる戦争(War)では勝てない。








そういう意味で一番大きな失敗とは、そういった上位概念の

存在に気づかなかったことかもしれない。

会社経営とは、終わりのない総力戦。

その意識が弱かったために、結果として戦略を過度に

重視してしまい、もっと上位概念である

世界観(ビジョン)

国家政策(ポリシー)

大戦略(Grand Strategy)

といった部分の存在に気づかなかった。







ここ最近の採用強化、ビジョンの見直し、

Soulの設定、クリードの見直しはまさにこういった

問題意識の延長に実はあります。






こうやって見ると本当に大きな失敗とは、何かチャレンジして

うまくいかなかったことなんてことではなく、むしろ

何かをやらなかったことによる失敗であることなんだなぁ。







という訳で引き続き、クリードにもあるように

『挑戦し続ける』、『本質を追い求める』ことを

意識していきたい。