今回レビューさせていただくのは『つぶやき進化論 「140字」がGoogleを超える!』

R+ (レビュープラス)様から献本いただきました。感謝申し上げます。

多様なコミュニケーションツールが生み出され、普及し、組み合わされる中で、みんなが主役、ふつうの人こそが主役となる新しい経済は生まれた。それが「みんなの経済=ソーシャルノミクス」である。本書は、ソーシャルノミクスの時代というものを、アメリカ大統領選やFacebookのアプリケーション開発などの事例を使いながら説明し、企業戦略の在り方、消費者としての在り方に焦点を当て、ツールを上手に利用する術を提供してくれている。

消費者は常に自分のニーズに合った本当に良いものを欲し、それを手に入れるために必要な情報を求めている。これまで、そのような情報は企業を中心に発信されてきた。しかしながら、FacebookやTwitter、Youtubeなどのツールが普及したことにより、そのような独占体系やこれまでの大量広告の垂れ流しという手法は時代遅れなものとなっている。消費者は、消費者同士のネットワークによって、企業と消費者という関係よりもより信頼のおける関係を構築し、自分にとってより有益な情報を手に入れることができるのである。では、企業はどのように情報を発信していくべきか、本書ではその示唆が得られるだろう。

気になったことは、本書に出てくる事例がほとんど欧米のものであることだ。これは何を意味しているのだろうか。もちろん著者の使用言語が関係しているのだろうとも思うが、日本やその他の地域がソーシャルノミクスの時代に取り残されているのではないかという懸念が残る。日本のガラパゴス化が進んでいると言われているが、この分野でもガラパゴス化が進むことになるのだとしたら、日本は大きく世界に後れをとるのではないだろうか。本書は、私にとって日本は今どのような位置づけにあるのか改めて再考してみるきっかけとなった。油断がならないと構えたり、古い手法に固執したりすることなく、よく理解したうえで活用していく術を考案し、独創力や姿勢を育む必要性を感じた。

ソーシャルノミクス時代では個人のつぶやきが世界へと発信されていく。つまりは、個人の影響力が強まる時代なのである。それは同時に個人の行為がより直接的に個人に還元される時代でもある。それが利益となるか不利益となるかは自分次第。ソーシャルメディアが、私たちに対して時に思慮深く、時に大胆に行動することを要求するという視点が興味深い。

企業にとっても、個人にとっても「つぶやき進化」はまだまだ発展途上にあり、さらなる可能性を感じさせてくれる書籍であった。