富士通の凄まじい人事抗争。
世界的に知られる富士通の人事抗争が兜町で酒の肴になっている。
同社が小野敏彦副社長(60)の辞任を発表したのは4月初めのことだった。唐突な辞任劇がさまざまな憶測を呼んだ。3月末に分社して発足した半導体部門の富士通マイクロエレクトロニクスの社長を兼務したばかりだったからだ。
ところが日をおかず富士通本体、富士通マイクロの両者からリタイア。噂が噂を呼んだ。
しかし当時は辞任の理由を「一身上の理由」としか説明されていなかった。そして迎えた株主総会(6月23日)である。
席上、異例ともいえる副社長辞任の真相が公表されたというのだ。
「一身上の都合で辞任したのではありませんでした」に詰め掛けた株主の多くは「何事だ」と驚いたという。
黒川博昭社長(64)=総会後に相談役=は手形偽造問題に関係した財団法人「科学技術教育協会」の理事長を小野氏が兼務していた事を公表。これは看過できないというのだ。
質疑応答の中で黒川社長は株主にこう説明したという。
「小野副社長が会社に無断で財団の理事長に就任した事、会社の規定の手続きを踏まなかったこと、また、財団が偽造手形問題に巻き込まれていたと指摘。小野氏に辞任を求めたところ、謝罪し辞任届けを提出した。だから本人が主張する解任には当たらない」と。
なぜ、こんな事態になったのか。
実は会社側は小野氏から株主としての質問状を事前に受けていたのだ。
「一身上の都合」を繰り返す会社側に対して小野氏は「事実上の解任で、単なる辞任ではない」と開き直ったのだ。
黒川社長の株主への真相公表はそうした経緯があったのだ。
関係者は同社のドロドロした根深い内紛体質を指摘する。
「富士通は財団スキャンダルが炸裂することを恐れたんです。総会直前に古巣の富士通に質問状を叩きつけた小野氏の本当の狙いはなにか。仰天するような隠し玉でももっているのか。その辺りが、今後の関心事です」(経済誌記者)
3月27日にトップ人事を発表したが、黒川社長は相談役に退き、後任には野副州旦・上席執行役常務(60)が就き、会長には間塚道義副社長(64)が就任し、秋草直之会長(69)は取締役相談役という布陣だ。株主総会後の役員会で承認された。
当初は、黒川氏の会長説もあったが、取締役からもはずれ一介の相談役に退いたことが社内外であれこれと取り沙汰されているという。
1部の週刊誌は「富士通の内紛勃発」と報じている。
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