サスマウントキット
来週からボチボチと思っていたのですが
ありがたい事にブログの更新を楽しみに待っておられる方もいらっしやいますので
予定より早くアップして行く事にしました。
さて今回はUPS-TAKUで長年製造販売しているサスマウントキットと
合わせてステム換装、ハンドルポストフィッティング加工について紹介します。
http://www1.odn.ne.jp/cch05150/rz3makit.html
サスマウントキットはRZRに3MAのリヤ回りをフィッティングさせるためのものですが
過去に3回ほど改良を加えて今日に至っております。
(単純に材質の選択から車高設定まで)
今まではあえてHP上でも詳細な画像は載せていなかったのですが
昨今出回っている類似品の違いを確認して頂くためにも
まずブログの方でアップしたいと思います。
まずはサスマウントキットに含まれる
3MAスイングアームピポット部の加工です。
(足回りのパーツはお持ち込み頂きます)
↑ 加工前のピポット内部を撮影しました。
大抵のスイングアームは各パーツの溶接が終わった後で
ジグに乗せてピポットベアリングを圧入する部分(凹)のボーリングを行っていると思われます。
上の写真を見れば判ると思いますが、
凹の奥の段付き面の厚みが前後で異なっていますよね?
どの3MAアームを見ても前側は薄く、後ろ側は厚いのです。
つまりアームの各パーツを溶接して組み上がった時点で、
ヒポットのメインパイプは左右のアームに引っ張られて
微妙に湾曲している所にボーリンクするとこうなるわけです。
なのでピポット両端面はごくわずかに逆ハの字となっております。
これを踏まえた上で加工します。
アームの先端の開き具合は実際かなりの個体差がありますが
それらはメーカー許容範囲という事になるのでしょう。
ピポットパイプか湾曲している上に
アームの開き具合にもミリ単位の個体差があるとなると
ピポットの幅詰めもどこを基準にして良いのか判らなくなりますよね。
そこで当店では↑の状態でアームをフライス盤に固定し、
片面を加工したらひっくり返して反対側を加工する方法を取っています。
先に説明した通り、
アームピポット両端面はごくわずかに逆八の字になっているわけですから
片面を基準にしてもう片面を加工すると
厳密には逆ハの字から平行四辺形となってしまいますが
すべて許容範囲に収まりますので問題ありません。
↑こうやってゲージで確認しながら加工してきます。
次にピポットベアリングについてです。
キットの最初期物は、3MAのピポットベアリングをそのまま使って
ヒポットブッシュ(パイプ)をワンオフしておりましたが、
熱処理した際の精度確保は大変難しかったため
かなり早い段階で↑の構成になりました。
ピポットブッシュ(パイプ)は51L以降のRZR純正品を使えるように、
ベアリングのサイズを変更させます。
(1KTやR1Zのものと同サイズ)
3MAに比べてベアリング外径が小さくなりますので
それを補うためのジュラルミン製精密級スペーサーブッシュ。
このスペーサーブッシュを製作する時の注意事項ですが、
通常ホイールハブなどに使用されるベアリングは
実寸で外径がマイナス公差ですが、
ピポットベアリングなどに使用させるニードルベアリングは
実寸でプラス公差なのです。
それらを考慮した上でスペーサーブッシュを製作します。
と言ってもこの精密級スペーサーブッシュは
安定した精度で製作できる外注先に発注しております。
↑ 面取りが多い方をアームピポットへ挿入させます。
↑最終的にピポットブッシュ(パイプ)を仮組みして確認。
ベアリング内のピボットブッシュ(パイプ)は
スイングアームの全幅よりわずかに出ています。
この(出)が足りないと
スラストカバーやシムを取り付けて圧力をかけた時、
たわんだシムがアーム側面に強く干渉して
スイングアーム上下の動きを止めてしまいますし、
(出)が大きすぎるとガタが出ます。
細かい数値類は省略
↑チェンガイドとスラストカバーも小加工。
スラストカバー内に入るシムは内径をRZRのピポットシャフトに合わせてたものをチョイス。
因みに3HMや1KT/R1Zなどのシムを使用すると外径が小さすぎて使い辛いのです。
↑3MAのリヤキャリパーサポートですが
トルクロット固定部には写真のようにピロボールが取り付けられています。
3MAのトルクロットを使用するのであればこのままでよいのでしょうが、
キット付属のピロボール付きトルクロットを使用する場合、
ピロ+ピロでは具合が良くないため、
↑ こちらがキット付属の専用カラーを装着した状態です。
↑各ワッシャーを仮組するとこんな感じです。
ワッシャーの大きさと取り付け位置にはそれぞれ理由がありますが
↑キット付属のトルクロットです。
ステンレス製でちょっと重たいですが、
3MAの純正流用や細いアルミ製トルクロットでのトラブルを
↑ こちらがサスマウントプレートです。
こちらは一貫して5mm厚のステンプレートから
NCフライスで1セットずつ削り出して製作しております。
もしもスチールやアルミで手作り感丸だしのサスマウントプレートを
採用している車両がありましたら
それは当店のキット使用車ではありません。
それからサスアッパー両サイドに配置するカラーです。
こちらも初期の頃から一貫してジュラルミン2017S+アルマイト処理済みの
カラーを採用しております。
普段なかなか手を入れられない部分ですので
防腐に関しては初期の頃から気を使っております。
付属のボルト類です。
↑リンク先端部に配置するカラーです。
まずリンク先端両脇のカラーはジュラルミン2017+アルマイト処理済。
リンクセンターのニードルベアリング内に入るカラーは
熱処理をしたスチール製で耐久性を高めております。
熱処理を行っていないカラーを
ニードルベアリング内に使用した場合は
早期に(カジリ)が発生してしまう事があります。
↑このボルトはトルクロットとフレームを
ステッププレートを挟んで連結させるものです。
実際に使用するのは一本ですが、何故長さの異なるものを付属させているかと言いますと
ステッププレートがノーマルの場合と、
市販バックステップとでは厚みが異なるため、
単純にノーマルステップ用のボルト一本のみ付属では
市販ステップを採用している場合に長さが足りなくなる恐れがあるためです。
しかもネジピッチが細目(M10-1.25)であるため
一般にユーザー様では単品でボルトを手に入れるのが
困難なケースが多々あります。
初期の頃は長さが足りない場合は、
フレーム側のネジをつぶしてP1.5のボルトを使用して頂く等
色々と思案したのですが、現在はこの仕様で落ち着いております。
↑ こちらはキット付属のオイルタンクオフセットブッシュとボルトです。
サスマウントを取り付けるとオイルタンクを若干外側にオフセットさせる必要があるため
付属させております。
RZRの1~2型までと、3~4型まででは
ブッシュの組み合わせが異なります。
以上の他に3MAサスの別体タンク固定タイラップ、
クランクケース左側の樹脂カバーの加工、
取り付け説明書等を含めて
サスマウントキットとして受注生産しております。
まぁ中古の足回り自体が年々減ってきている中で
いつまで販売できるかは分りませんが、
内容的には把握して頂けたかなぁ~と思います。
フロントオフセットスプロケットです。
ザムジャパン(旧アファム)製のRZ用をRZR用に加工し直したものです。
http://www1.odn.ne.jp/cch05150/originalparts5.html
↑ それと専用リヤブレーキホースやスプロケット、そしてチェンです。
UPS-TAKUではメンテやカスタムオーダー時に
同時にオーダーして頂いた市販パーツに関しては
できるだけ割引販売を心がけております。
という事でサスマウントキットにつてはこれで終了。
次にステム編です。
今回はあるお客様がこれらを同時にオーダーしてくれましたので
まとめてこちらアップしてしまいます。
今回オーダーして頂いたステム回りについててすが
1WG(FZR400)の三又をRZRのボルトオンできる様にする事と
トップブリッジにポッシュのハンドルポストを取り付ける事です。
1WGのフロント流用というのは
RZ系のカスタムショップでかなり前から行われている事ですが
1WGのステムシャフトは長いので
そのままではRZRのフレームに対応できません。
そこで今回の場合ですと、
RZRのステムシフトを引き抜いて
1WGのアンダーブラケットに換装させるわけですが
一見同じに見えるシャフトエンド外径が
実は1WGの方がわずかに太いのです。
つまりRZRのシャフトエンドそのままでは、
1WGのアンダーブラケットに挿入した場合、
微妙にゆるくてそのまま溶接したらシャフトが傾いてしまうわけです。
これがコンマ0.2くらいの誤差ならはなからNGなのですが
100分台の誤差というのがまた微妙なところです。
そこで予めシャフトエンドに細工を施した上で
挿入→固定→溶接という手順となる事をまずご理解ください。
↑上の写真はRZRのフレームに合わせて
新規ストッパーピンを立てるために、
ノーマルのストッパーを切除して面だしを行ったものです。
この時点ではステムシャフトはまだ仮止めです。
この後ストッパーピン位置を決め
ボルト穴を開けたらステムシャフトの溶接に入ります。
ステムシャフトの溶接は三又をダミーフォークに固定した状態で行います。
溶接終了。
錆止めのために簡易ペイントを行います。
ベアリングを圧入して作業終了。
ストッパーピンは外径の異なるものを3種類用意しました。
次にトップブリッジの加工です。
ご覧のように1WGのトップは平らではありません。
テーパー部を完全に避けてポストを立てると
左右のポストピッチが広がり過ぎてハンドルバーの選択が難しくなります。
普段テーパーがついたトップブリッジへのポスト取り付け加工はお断りするのですが、
今回は特別にお引き受けしました。
↑まずどうやってトップブリッジをフライス盤に固定しようかと悩んでいたところ、
あるワンオフトップブリッジを製作した時に造ったジグが
フォーク径及びピッチとも同一である事が判明。
こうなればしめたものです。
早速そのジグの不要な部分を切り取って流用する事にしました。
↑こんな感じです。
ジグをフライス盤のテーブルに固定した時点で
平行はバッチリ出しておりますので、
後はトップブリッジを乗せ、
シャフト貫通穴に位置決めピンを当ててセンター出せば
一先ず段取りは完了。
もしもこのジグがなければ
この段取りだけで相当な時間が消耗するのです。
トップブリッジ自体が鋳造品でそれほど精度が高くないので
こうて単純にジグに固定しただけでは微妙な狂いがでるかもしれませんが
そこでの精度は必要ないでしょう。
フライス盤には原点と移動位置を示すカウンターが表示されますので
トップブリッジの平行とセンターさえ出てしまえば
↑まずはテーパー部を落としながら座面造り。
裏側にはけっこうな肉抜きがされておりますので
次にポストの形状を把握して穴位置を決めドリリング。
この時にボール盤などで一気に貫通させますと
大抵は楕円になってしまいます。
トップブリッジの裏側にはリブが立っていますので
ドリルの歯先がリブが外れてしまいますと
ドリルそのものがよれてしまうからです。
今回は座面を造った上での穴あけ加工でしたので
どうしてもトップブリッジの表面から穴あけを行う必要がありましたが、
写真の用に歯先が外れるギリギリで止めて
その後裏側から凹加工に入る事で問題無く対処できました。
狙った位置にぴったり収まってホッと一息 ! !
長くなりましたが今回オーダーして頂いたお客様に
こういう事も行いましたという報告も兼ねて紹介させて頂きました。