スペインの育成年代から外国人が消える ~FIFAからバルサへの制裁から~ | 坪井健太郎のブログ from スペインバルセロナ

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2008年からバルセロナでサッカー指導者。プレサッカーチーム代表: サッカー指導者の育成アカデミーを運営。
オンラインコミュニティ「サッカーの新しい研究所」運営

昨日、インパクトのあるニュースがサッカー会に流れました。

FIFA、バルセロナに移籍禁止処分

情報によると2015年まで一切の選手獲得をできないということです。

ビクトル・バルデスが怪我をしてしまった今、GKを獲得できないのはかなり痛いのではないでしょうか。

さすがにピントで1シーズンを乗り切るのは厳しいですからね。

さて、この制裁がなぜ下されたかというのが今日僕がお伝えしたい論点です。

この原因は「FCバルセロナの育成組織が未成年の外国人選手と登録しプレーさせていた」というものになります。

FIFAからの制裁に、バルサは以下のように対応。

http://www.fcbarcelona.jp/club/detail/article/press-release-of-fc-barcelona-about-sanction-imposed-by-disciplinary-commission-of-fifa

今後の展開に注目です。


当事者としての見解

さて、実はではありますが僕は今回のこのゴタゴタの当事者でもありますのでその視点から意見を述べさせていただこうと思います。

まず、関わった経緯としては今シーズン僕が所属しているコルネージャユースCにはシーズン開幕当時FCバルセロナからレンタルで韓国人の選手が来てプレーしていました。

今回のケースに思いっきりマッチする外国人選手です。

当時はユースの1,2部は外国人はプレーできないということが言われていましたので3部でプレーする彼は大丈夫だと思っていました。

しかし、4節が終わった時点でカタルーニャサッカー協会側から「その韓国人選手は今後リーグ戦でプレーできない」、という通達が「いきなり」来て彼の今シーズンは終わったのです。

バルサから来ていた貴重な戦力でもありましたし、一選手としてプレーの機会を失ってしまったのは非常に残念なことでした。

そこでゴンサロと話していたのが「なぜこのタイミングでこんなことが起こるのか?」ということでした。

おそらく、うちのリーグの同じグループの誰かがFIFAに抗議してそうなったんだろう」という話で、他チームからしたら規則違反で能力の高い選手がプレーしているのは許せないことなので当然起こってもおかしくないことでした。

実際、第1節から4節までプレーをした韓国人選手は「ああ、あれは昨年バルサに居た韓国人だな」と観客からも知れた存在でした。

僕の見解では、この事態は本当に「スペインらしい」なといえる現象です。

それはなぜかというと、昨シーズン別のFCバルサの韓国人が同じ理由で登録を抹消されていました。

それなのになぜ同じことが起こるのか?

それはスペイン人特有のメンタリティである「ばれなければいい」という悪質なものと、「財政的」な理由からです。

ここで日本の方たちはおそらく知らないであろうスペインの育成年代の登録制度について紹介します。

ユースの1,2部リーグを除いて、FCバルサを含むすべての育成年代の選手とチーム登録は各州において行われスペインサッカー協会は直接的に関与していません

バルセロナであればカタルーニャ州がそれにあたります。

昨年FIFAはスペインサッカー協会にこの育成年代の外国人の登録を厳しくするように警告を与えていますが、各州レベルまではコントロールが効かないため多くの外国人選手がプレーしているのが現実です。

そして、州単位の協会も「選手登録費」は財源になるためFIFAにばれないように受理してしまっているのが現状です。

一人当たり1万円弱の登録費が収入になり、少なくとも100人の外国人選手がプレーしていると想像はできますので100万円の収入が見込めます。

そして、一度登録を済ませてお金を受け取ったあとに今回のように誰かが直接FIFAに通告し、FIFA→スペインサッカー協会→カタルーニャサッカー協会というように登録抹消の通達がやってきたら「あ、そうだったの?ごめんなさい」と登録抹消しておしまい、というなんとも無責任かつなあなあなやり方でその場をやり過ごしています。

ですから多くの「プレーせざる選手がプレーをしていて」、目立つ選手は網に引っ掛かり痛い目に逢う、そして責任は誰も取らないという「ザ・スペイン式システム」が見事に機能しているのです。

バルセロナでも12歳から18歳の日本人の選手がプレーしていますが本当はルール上はプレーできません(ただ見つかっていないだけです)。

今回のケースはFCバルサも見事にこのシステムにはまってしまった形ですね。



カタルーニャの未成年外国人の登録条件

今シーズンは100%は適用されていませんが来シーズンからはこの外国人選手への規制はもっと厳しくなるという情報が入ってきています。

ヨーロッパ外の国の12歳から18歳の選手
ヨーロッパ内の国の12歳から16歳の選手

両親がスペインに在住し、税金を納めていないと協会には登録できないことになるようです。

この税金を納めるとは「居住権Permiso de residencia」を持っていることを意味し、労働ビザを持っていたり、親がスペイン人、永住許可証を持っていることを意味します(学生ビザにはついていません)。

ちなみに代理人や後見人の制度も認めないそうです。

この管理も今まで通りなあなあでやっていくのか、態度を変えていくのかも見所です。

僕は個人的にはこのような誠実さの無い一部の人間が既得権益を守るような、正直者がバカを見ることは大嫌いなのでピシッと規制してほしいです。

ザ・スペイン式システムでここまでダメになった経済状況から反省できないようでは国としてもやばいでしょうし、サッカーもダメになっていってしまうのではないかと心配しています。

そして何よりもスペインでプレーできることを夢見て留学に来ようとしている日本人の人たちにはこのような現実があることを知ってほしいと思って今回このような記事を書きました。

全てがポジティブなわけではなく、リスクや犠牲になってしまうこともあることも事前の知識として持っていて欲しいと思います。

そのうえでスペインにきてチャレンジするのであれば良いとは思いますし、海外の生活では大きな学びがあるので来ない方が良いと言っているわけではありません。

事実、こちらにきて大きな人間的成長をしている日本人サッカー少年もいますからね。

僕個人の思いとしては、スペインに来なくても日本国内でしっかりとしたサッカーができる環境、と指導者のレベルがあれば良いというものがあります。

他国に依存せずに自国での育成システムの整備が進むことを切実に願いますし、そのためには指導者が海外に少しでも出て世界で何が起こっているかを見ることが今は大事だと思います。