ドリルトレーニングのデメリット | 坪井健太郎のブログ from スペインバルセロナ

坪井健太郎のブログ from スペインバルセロナ

2008年からバルセロナでサッカー指導者。プレサッカーチーム代表: サッカー指導者の育成アカデミーを運営。
オンラインコミュニティ「サッカーの新しい研究所」運営

こんにちは。
昨日は、エスパルスサッカースクールのスタッフの何人かと共にサッカーをして軽く汗を流し、サッカーについてのディスカッションをしました。テーマはもちろん、「スペインサッカーと日本サッカー」について。
日本の中でのスペインでの指導のイメージというと「低年齢から戦術練習を教え込む」というもの。事実、スペインの育成現場では8,9歳から「広がる」といった簡単な戦術を教えることは当たり前のように教えています。議論のポイントは日本では「いつから戦術トレーニングを始めるべきか?」「テクニックがおぼつかないレベルの選手に戦術トレーニングをするのは難しいのではないか?」と考えられていること。

このような考え方がでてくるのはなぜなのでしょう?

おそらく(というか自分もそうでしたが) まずは技術(実行動作)を向上させて、次にその使い方を習得し判断を向上させてプレーの向上を狙う という考え方が一般的に日本で考えられていることです。また、理想は戦術とテクニックがリンクしたトレーニング形態を取りたいのだけれど年齢が低くテクニックレベルが低いからドリルトレーニングを行う。という話が出てきました。

もちろん、僕もあまりにも実行のレベルが低い選手であればトレーニングの割合はテクニックの反復の多いドリル形式のトレーニングは必要だと思います。しかし、そのトレーニング形態を選択するということは認識・分析・判断のプレーのプロセスを経験せずに時間を過ごすことを選択したということを見逃してはいけないと思います。

1、P=Percepcion(状況の認識)
2、A=Analisis(その状況においてのメリットとデメリットの分析)
3、T=Toma de decision(どのプレーをするかの決断)

4、E=Ejeccion(決断したプレーの実行)

人間が頭で考えて、行動を起こす時には上記の1から4のプロセスを経て行動を起こします。サッカー選手も例外ではなく、これが頭の中で起こり神経回路を伝わり(1から3)、筋肉が動き、目に見える実行(4)がなされます。
もしも、実行の部分だけを数年繰り返し向上させたとしていわゆるパーフェクトスキルを習得したとしても、1~3の部分が整理させていなかったら優秀なサッカー選手は育つのでしょうか?中学に入ってから1~3の向上を始めてプロになる時には間にあうのか?そして、1~4を同時に鍛えられるトレーニング方法が存在していると知っていながらも、それでもドリル形式を選択するのか?
というのが、昨日ディスカッションをしていて浮かんできたことでした。

また、1~3と4は切り離されて進行するわけではなく鎖のように繋がって起こっています。ですから、トレーニングをする時もこのプロセスは繋がっている必要があります。また、4を行いながらももう次のサイクルの1が始まっていることも多々あります。
ですから、ドリルを行うということはこのようなプレーのプロセスを習得する機会を失ってしまっているデメリットがあることを知っている必要があります。スペインで、低年齢から始まる「ロンド」というボール回しにはこのプロセスが詰まっています。小さなころから遊びでも繰り返し反復していると自然とプレーのプロセスが自動化されて身に着いているのかもしれませんね。

ディスカッションからドリルトレーニングについて考えさせられました。