日産、無資格者が検査=国内全工場・車種で不正-リコール100万台超も
 日産自動車は29日、新車を出荷する際の完成検査を、資格を持たない者が行っていたと発表した。同社が..........≪続きを読む≫

 

このニュースについて、無知な報道機関が悪意をもとに報道しているその内容や国土交通省の大げさすぎる日産への批判の真意を正確に理解するためには、日本の保守的な自動車行政や自動車登録制度について正しく把握しておく必要があります。

 

まず順に則り、そもそも「完成検査」とはなんなのかを説明しましょう。

 

日本では、自動車メーカー以外が製作した車や(例えば)自作した車などを合法的に車検を取って公道を走らせる手段がほとんどありません。

 

逆説的な話になってしまいますが、ほとんどの車は国土交通省が認可した自動車メーカーが製造し、メーカーが所定の手続きを経て「型式認定」というその車種独自のお墨付きを得ることで、晴れて車として売ったり乗ったり道路を走らせたりすることができるのです。

 

型式というのはわかりやすくいうとハチロクレビンが「E-AE86」だったり、同じレビンでも111レビンは「GF-AE111」であったり、現行の86やBRZだと「DBA-ZN6」とか「DBA-ZC6」と命名されているように車の名前とは別に車検証上に記載されている「型式」のことです。

 

自動車メーカーの開発した新型車がその型式認定を受けるためには、途方もない労力やコストをつぎ込まなければならないのです。

 

その一部を挙げると、まず何台も試作車を作って、それをわざとぶつけて壊すことにより安全性を確認するテストとか。

 

 

排気ガス規制に適合しているかの詳細なテスト(いわゆるガスレポート)、つい最近もスズキがテスト結果の申告より実際の燃費のほうが良かったとして何故かバッシングを受けた燃費算定テスト、もちろん保安基準やらその他膨大な規制に適合しているかといった点や量産時の品質管理が適切かどうかなどなどなど、国土交通省をはじめとしてその天下り団体である一般社団法人日本自動車工業会やら独立行政法人自動車技術総合機構やらありとあらゆる機関の審査を通過して、ようやく型式認定が受けられるのです。

 

形式認定が受けられた車に関しては、新車完成から9ヶ月の間はいわゆる車検を受けずに、自動車メーカーが発行する完成検査修了証をもって車検を受けずに登録することができます。しかしその完成検査修了証を発行するためには「検査に必要な知識及び技能を有する者のうち、あらかじめ指名された者」が検査をしなければならないと国土交通省が定めているのです。

 

ここで注意しなければならないことは、その指名された検査員とは各自動車メーカー独自でそれぞれ指定すればよいだけということです。つまり自動車整備士のような国家資格とは別物なのです。

 

そして完成検査といっても、完成した車体に対する検査というものは本当に最後の確認のようなもので、それ以前に製造段階では極めて厳しい品質管理がなされています。そうでなければ困ります。まさか完成検査で車体全部の部品のボルトの締め付けトルクまで確認していると思っている人はいないと思いますが、そういう工程は製造ラインでの組み立て工程できっちりと管理するものであって、完成検査で一から十まで全部を検査するものではありません。そんなレベルでものづくりをしている自動車メーカーが万が一あったとしても、それは絶対に日本のメーカーではありません。

 

そして完成検査の内容も一般的な車検の内容と重複している部分が相当数あり、そういう簡単な部分の検査はそれこそテスト機器さえあれば「ユーザー車検」でユーザーがチェックできるレベルの検査と何ら変わりがないのです。

 

要はメーカーが自社の車の品質に自信を持って出荷できるかどうかという話であって、今回の一件は日産が意図的に何らかの不正を働いたという性質の話とはまったく異なる事案だということです。

 

ところが巷の報道ではあたかも無資格者が検査したので安全性に問題があるかのようなディスインフォメーションがなされています。ですが常識的に考えればおそらく日産では過去から恒常的に資格のない者が検査員として最終検査に関っていたものと推察されます。それで日産の品質に致命的な何かがあったでしょうか?いや、無いです。あったらとうの昔に日産は倒産しています。

 

そして通常最終検査は4人程度で行われるそうですが、その中に日産が事務手続き上指名をしていなかっただけの非正規検査員(ただし必要な知識や技能を有している)が一人か二人いたところで、表層的な検査をするだけの完成検査には何の影響もありませんし、メイドインジャパンのクオリティに何の影響もありません。そんなことは輸入車や海外生産日本車のぶっ壊れ率を知っている業界人なら百も承知の話なのです。いやいや、別に生産拠点がほぼ100%国外にあるスズキの車を批判しているわけではありませんからね、念の為。私はスズキの車が大好きです。新型スイフトスポーツ良いですね!あとジムニーは世界最強です。スズキの広報さんお仕事ください(笑)

 

かなり脱線しましたが、自動車産業は許認可と利権の集合体です。国土交通省は外部団体やメーカーに、メーカーはタカタのエアバッグの例を出すまでもなく部品メーカーや、不適切な使用方法を行ったユーザーに、何か起きた時の責任を転嫁しやすい構造になっています。もちろん自動車の点検や整備は最終的に使用者の責任ですが、それならそれで勝手にやらせて欲しいものですし、本田宗一郎の有名なエピソードを持ち出すまでもなく国が勝手にあれこれ規制を掛けてもろくな事にならないというのはわかりきった話です。事実、国内に対して規制を掛けるのはお得意でも外国から圧力が掛かったとたんにそのルールが変わるだなんてよくある話じゃないですか?

 

 

今回の行政主導の恣意的な報道スタンスの裏には一体何が潜んでいるのか、私達はよく注視していく必要があるでしょう。