セラピーも、カウンセリングも、
だいたい何回通えばすっきりするのかしら?
・・・と思われている方がいらっしゃるかもしれませんね。
「クロノスの時」という言葉を聞いたことがありますか?
クロノスは神話に登場する時間の神様の名前ですが、
時計で正確に計れる時間を、
「クロノスの時」と呼ぶそうです。
明日は朝8時の電車に乗るから、
6時には起きて、朝ごはんを食べたり支度して、
7時15分には家を出て・・・
というように、私たちは時間を気にしながら生きています。
現代社会で生きる限り、
カレンダーや時計のお世話にならざるを得ません。
そして、毎日の生活や自分の人生、
もしかすると家族の時間までも、
きっちりスケジューリングできるような気がしてきます。
予定通りにいかないと、
イライラしたりすることもあるかもしれませんね。
でも、
そういう“ 時 ”とは別に、
「タイミング」って呼ぶとちょうどいいような時間もあります。
たとえば、お腹がすくとき、眠くなるとき、
赤ちゃんがが歩けるようになるとき、
運命の人に出会うとき・・・など、
正確に○時○分とは言えない“ 時 ”です。
それを「カイロスの時」と呼ぶそうです。
カイロスはやはり神話に登場する神様ですが、
ギリシャ語で「チャンス」の意味もあるそうで、
「チャンスの神様は前髪しかない」ということわざも、
このカイロスに由来しています。
心が立ち止まってしまったときに、
また動き出すのにも、やはりタイミングがあります。
昨日カウンセリングを終了された方が、
「不思議なタイミングでここを見つけて」
「いろいろな縁があって」
「なんだか流れがあって」
「それでこんな風に思えるようになった」
とおっしゃっていました。
自分でスケジューリングしたわけではない、
ものごとの流れがあって、
不思議といろいろなことがつながって、
その人が動き出す“ 時 ”がきたのです。
臨床心理士の皆藤章氏は、
「カウンセリング、心理療法というのは、
『カイロスのとき』を待つ作業である、
といえると思います。」
と言われています。
また、
「『カイロスのとき』は、その『とき』を生きる人が、
受動的にではなく、
自らのこころに能動的に向き合うことを通して
はじめて動き始めると言える」
とも言われています。*
最初に書いた、何回通えば・・・ということに話を戻すと、
1回ですっきりする方もあれば、
しばらくかかる方もあるので、
「それはわかりません」というのが答えですが、
上に引用した皆藤氏のことばに、ヒントが隠れていると思います。
自分の心に向き合うって、
なかなか難しいけれどたいせつなことなのですね。
*「四天王寺カウンセリング講座6」より引用