「しばらくは会社の飲み会とかは出た方がいいっすよ…
その方が人の名前も覚えるしさ」

斜め前に座るカツタ君(37歳・2歳の子持ち)がリコに言った。

…っつーことで、22日金曜日、
リコは他営業所で働く顔も名前も知らないオジサマの定年退職飲み会に参加してきた。

2週連続の週末飲み会。
さすが体育会系のメンバー揃いのこの会社。
そして、30人近くが揃うってのもなるほど的だった。

ノミホーということでアルコール類は水の如く常にオーダーフル回転。

なんか、こういうノリ…久しぶりっす。

46歳の新人リコはもちろん幹事カツタ君のアシスタントっちゅうことで
集金、計算などを手伝い、しばらくカツタ君の隣で呑んでいた。

職場では席は近くともなかなか話すときがなかったが
何かと会話のパスをリコに放ってくれることも多く明るくてやさしい印象だった。

「リコさん、アオキさんにエトウの面倒も見なきゃならないしさ一番大変だと思うよ…」
カツタ君がリコに言った。

正直、未だ自分の仕事という仕事が迷走中である今
こう言われてもピンと来ないのが事実だったが
ほかの人からも同様のことをよく言われることを思うと
行く末にどんな恐ろしい展開が待っているのかと思うと怖くてならなかった。

アオキさんとエトウさん。

アオキさん(44歳・独身)…
チンピラ風で酒やけした声で思ったことを何でも口にする。
不平不満は感情的に大声で吐き出す。

エトウさん(31歳・独身)…
勝手な推測だとクラブミュージックもしくはレゲエが好きそうな雰囲気。
こちらもアオキさんに次ぐやんちゃ風だがアオキさんよりはマシな感じ。

モチヅキ課長が「みんな子どもだから困っちゃうんだよ…」と嘆いているが
その厄介な”子ども”ツートップがアオキさん、エトウさんと言ったところだろう。

本当の”子育て”もしたことがないリコが
この暴れ馬2頭の手綱をどうやって操ればいいというのか。


というか、私の仕事って本当になんなんだろうか。

しばらくするとリコの側にモチヅキ課長が席を移してきた。

「課長…未だに自分の立ち位置がわからなくて困惑する毎日なんですけど
私、一体どうしたらいいのでしょうか。
自分の役目が今ひとつ把握できず…申し訳ない気持ちです」

リコはモチヅキさんに不安げに言うと

「…そう思わせてしまうことは会社側の責任だから、こちらこそ申し訳ない。
でも思い詰めないでね。大丈夫だから」

モチヅキさんがサムズアップのポーズを見せた。

なにが、どう”大丈夫”なのだろうか?

ここできっと仕事がデキる人なら
その方針に近づけるように自分からいろいろと提案してやっていくのだろうが…。

いろいろと複雑な製造工程がある工具のことを何も知らないリコが
とてもそんなことまでできるワケもなく。

どうしたらいいものやら…と答えが出ないまま
リコはビールから焼酎に切り替えた。

すると今度はカツタ君がこの会社の裏事情を教えてれた。

「ハナオカさんは一番古いけど
派閥作りたがって面倒くさいから気をつけた方がいいっすよ」

ほぼオールムッシュの職場にはリコの他にマダム2人がいる。
狭い部屋だが在籍部署も異なることから仕事で関わることはほとんどなく
彼女たちとはランチタイムに集まる会議室で雑談を少々交わすことくらいしかなかった。

ハナオカさん(59歳・社員)…
女性では唯一の生え抜き社員で趣味は旅行。請求書の処理などをやっている。勤続20年。

ナガノさん(59歳・パート社員)…
リコ同様に知り合いのコネで欠員補充で関連会社からやってきた。勤続5年。どちらかと言うとナガノさんの方が話しやすい。

そにしても、派閥ねぇ。
どうしてオンナは群れたがるのか。
でも事務所3人で派閥も何もないわな。
現場の人間巻き込んで派閥態勢でも取りたがっているのだろうか。
へぇ、全然そんな風に見えなかったな。
…って見てる人は見るもんなんだな。

「あとこの会社、コネ入社者ばっかりだからさ。
俺もそうだし、コイツのオヤジも親会社の偉いさんでコネ入社だし
アイツも親が『息子がプータローしてるから使ってやってくれ』で入ってきてさ」


だから、この会社にはロクなヤツいないんだよ。

と、カツタ君が笑った。




ど。
(-_-;)



…さてさて、自分の立ち位置を手探るのも今週乗り切ればGWだ。
チキショー、今年のGWはバイトには行かねーぞ!






◆長い目、長い目。


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