歌麿をめぐる五人の女 | キネマの天地 ~映画雑食主義~

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内容:巨匠・溝口健二監督が、昭和を代表する名女優・田中絹代を起用して撮り上げた時代劇。浅草観音前の水茶屋の娘おきたは、浮世絵師・歌麿に描いてもらった1枚の絵のおかげで江戸中の評判となる。ところが、勝気で嫉妬深い彼女は数々の問題を起こし…。 (Amazonより)


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はい!今週の溝口健二 監督枠は、終戦間もない1946年の製作、「歌麿をめぐる

五人の女」です。





幕府の御用絵師狩野瑩川院の門弟小出勢之助は許婚の雪江を連れて版画屋に立ち寄り、歌麿の自賛入りの絵を見て、傲慢も甚だしいと立腹し、歌麿に対して絵の勝負を申し込むが、歌麿の力倆に頭を下げ、千石の扶持と刀を放棄して民衆画家歌麿の門下に降りることを誓った。浅草観音前の水茶屋難波屋の娘おきたは歌麿に描いてもらった一枚の絵のおかげで、その名がたちまち江戸中に知れ渡った。彼女は紙問屋、仙香堂の息子庄三郎に対して激しい恋慕の情を抱いていた・・・(goo映画より)




はい、言わずもがなとは思いますが、「歌麿」とは葛飾北斎と並ぶ浮世絵の大家、

喜多川歌麿の事ですね。本作はその歌麿を主人公に、彼と縁を持つ女たちの姿を

描きだした作品です。



当代一の人気美人画師として庶民の人気を博す喜多川歌麿。

自分をモデルに一枚描いて欲しいと願いでる女たちは引きも切らず、一方で御上を恐れず

時の権力者を揶揄するかのような絵も描き続けていた彼を幕府は目の敵にしていた

ようですね、本作中でも描かれてますが、何かと難癖をつけてはたびたび制裁を

加えていたようですよ。

戦後すぐにこういった人物を題材に作品を撮るあたり、戦中の不自由に対する

溝口監督の意趣返しかしら?とか推測してみたり。(`∀´)

結構豪放磊落な方だったようですからね、監督も。



内容は、「歌麿の映画」というよりは「歌麿に所縁ある女たちの群像劇」と言った方がいいですね、

歌麿に刺青の下絵を描いてもらった女や由緒ある画派の家系に生まれた娘、

紙問屋の若旦那と駆け落ちしてしまった花魁などの姿を通じて、“女”というものの哀しい性分や

業を描きだします。

ただ・・・その点では同趣旨の「浪華悲歌」 「祇園の姉妹」 ほど胸に迫るものが

ないですし、時代劇としてみても「元禄忠臣蔵」 ほどのスケールは感じられないんですよねぇ。

まぁ前年の作品「名刀美女丸」 と比べればはるかに見応えはありましたが、もう一歩何か

決め手となるモノが欲しいところでした。

キャストの面でも、女たちの一人を溝口監督の秘蔵っ子である田中絹代さんが演じて

いるのですが、群像劇という事もあってそれほど強いインパクトは残していませんしね。





総評。

この頃は溝口監督のキャリアにおいては低迷期とされてるのですが、観てみると確かに

まぁ悪くはなかったものの戦前の作品や晩年の物と比べるとインパクトが弱いのは

否めませんね、観るのは「浪華悲歌」「雨月物語」 など代表作と言われている作品を

ひととおり観てからでいいと思いますよ。

というわけで興味のある方はドゾー。