祇園の姉妹 | キネマの天地 ~映画雑食主義~

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内容:社会にも男にも批判的で勝気な態度の芸者おもちゃ。社会にも男にも従順な姉の梅吉にも批判的なまなざしで見つめる…。男の愚かさ、人間の愚かさ、人間模様を描いた人間喜劇。(goo映画より)


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はい!今週の溝口健二 監督枠は、「浪華悲歌」 と同じく1936(昭和11)年に

製作された作品ですね、「祇園の姉妹」です。




京都・祇園の街に生きる芸者姉妹の梅吉とおもちゃ。何事も当世風で計算高いおもちゃは、今ではすっかり落ちぶれたかつての馴染み客・古沢を家に居候させて面倒を見ている姉・梅吉の古風な生き方に反発、計略で古沢を家から追い出そうとするが・・・(WOWOWオンラインより)





・・・いやぁ~~、やっぱり面白いなぁ~~♪:*:・( ̄∀ ̄)・:*:

先日お届けした「浪華悲歌」と同年に製作された本作。脚本には溝口監督とともに多くの

作品を残した依田義賢を、主演には山田五十鈴を迎えているところも一緒ですし、

関西を舞台としているところも同様。何より内容自体に共通する部分がありますからね、

まるで姉妹篇のような感じになってますよ。

祇園に暮らす芸妓姉妹、梅吉おもちゃ。義理人情に篤く欲の無い姉・梅吉とは

対称的に、妹のおもちゃは女を“慰み者”としか見做さない男達を憎み、彼らを踏み台に

貧しい生活から抜け出そうと常々目論んでいた。

そんなある日、反物問屋の番頭が自分に気があると噂に聞いたおもちゃは一計を案じ…

ってなお話です。



「浪華悲歌」と同様にどことなくコミカルな空気が漂っていますが、本作もやはり喜劇では

ありません、メインとなるのはあくまで一人の芸妓の生き様であり、そこから見えてくる

当時の女性たちの社会的立場の弱さです。

男どもを手玉に取るおもちゃの手練手管は一見巧妙なようですが、人の口に戸を

立てる事までは出来ず…。

人様から後ろ指を指されるような方法以外に現状から抜け出す術がなかった女の悲哀を、

リアリティたっぷりに描き出しています。



残念な箇所もこれまた「浪華悲歌」と同様ですね、映像・音声のノイズが激しいです。

加えて本作は一部のフィルムが消失してしまっているらしく、現在観ることができるのは

公開当時よりも十数分短い物のようですし、作品冒頭の数分間は民衆の喧騒が

大き過ぎて台詞を聞き取るのも非常に困難になっています。

もし溝口作品を観た事が無い方が最初に本作を手にしたとしたら、最初の数分間で

諦めちゃうんじゃないかなぁ・・・・?( ̄□ ̄;)



それともうひとつ、キャストについて。

おもちゃを演じる山田五十鈴さんは女の強かさと脆さを巧みに表現していてやはり

素晴らしいのですが、男性キャストはまたまた「浪華悲歌」と同じで見分けが非常に

付きづらいんですね。まぁ状況から判断する事は出来るんだけど、序盤は

ちょっと苦労するかも知れませんね(;´▽`A``





総評。

ともあれ、やはり面白いです! 依田義賢による巧みな脚本、ワンシーン=ワンカットの

手法で長回しを多用しながら決してリズムを失わない溝口監督の巧みな演出、

そして山田五十鈴さんを初めとする演者たちの巧みな演技。

人生の可笑しみ苦味が絶妙のバランスで配合された映画の醍醐味溢れる本作、

やはりオススメです。