ピンクサーモンを釣り、第一の任務を完了した私は、コーホーサーモンを釣るというこの旅の第二の任務を遂行すべく、ナスリバーの支流やスキーナリバー本流の支流出口などを攻めたものの、丸二日間全くコーホーの顔を拝むことはできなかった。そして迎えた旅の最終日、私はキティマットリバーに戻り、別のプールで早朝から釣り始めた。

タックルはシマノのコンバージェンスというミディアムパワーのサーモンロッドにオクマのインスティンクト 400LX ベイトリール、50 ポンド PE ライン、15 ポンドモノラインリーダー約 60 センチで、ルアーはギブスコーホー 45 (ブルースケールファイヤーオレンジバック) というスプーンを使った。

コーホーは入り潮時に遡上するので、この日は朝と夕方がチャンスだった。朝のチャンスは逃したものの、夕方になって再びコーホーがプールに入って来た。そして4時前に、リトリーブしていると突然ドンという感じでスプーンにヒットした。反射的にロッドを立てる。その瞬間プールの後端付近でコーホーが顔を出し、2回ジャンプした。

魚は右に見えるのにラインは左に向いており、本当にかかっている魚がジャンプしたのか、一瞬迷うほどの超速の走りだった。ドラグが滑りっぱなしでリーリングしても空回りした。やがて魚は下流に下り始めた。これは瀬に下られたら事だと思い、スプールに親指を当てて止めた。しかし魚はなおも力に任せて下ろうとした。これはヤバいなと思った瞬間、案の定バレた。痛恨のバラシだった。

巻き取ってみると、なぜかリーダーはルアーのアイの所で切れているのにルアーはついていた。フックがちょうどラインとリーダーをつなぐスイベルに引っかかっていたのだ。こんなマジックみたいなこともあるんだなと思ったが、とにかく貴重なコーホー 45 を失わずに済んだ。リーダーをリオの 15 ポンドからマキシマのカメレオン 25 ポンドに替えた。

そして何もないまま1時間近くが過ぎたが、水面に頻繁にコーホーが顔を出すようになった。そこで、ひょっとして表層を引いた方がいいのではないかという考えが浮かび、キャスト後にロッドを立てたままリトリーブするようにした。そして二投目、またドンといったアタリでロッドが引っ張られた。反射的にアワセる。直感的にコーホー、しかも最後のチャンスになるコーホーだと思った。

そして本格的なファイト開始。何度かのアクロバティックなジャンプ。必死でラインのテンションを保ちながらバレないことを祈った。幸いフッキングは大丈夫なようだった。寄せに入ることにし、ポンピングを繰り返してなんとか近くまで寄せてきた。そしていよいよ取り込み。

隣で釣っていた東欧系のおじさんが大きなネットを持ってやって来てくれた。彼はコーホーの方に自分から近寄って早めに取り込もうとしてくれたが、なかなかうまく行かず、そうしているうちにもコーホーはめちゃくちゃに暴れ回り、水面でローリングして冷や冷やさせられた。そして仕切り直しの取り込みも空振りに終わったので、水に立ちこんでいた私は岸に歩み寄ってネットの方に再び魚を誘導した。

そしてコーホーが巨大なネットに吸い込まれる瞬間を確認すると、歓喜の感情がわき上がった。彼がネットを持ち上げると同時に自分はロッドを下げて安堵と感謝の意を表した。両拳を突き上げて大声を上げたい気分だった。三日半の日程の最終日の最後の一時間でかけたドラマチックな一尾だった。

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初めて釣ったコーホーサーモン、70 センチ




初コーホーサーモンの近影と別影


サケ目サケ科タイヘイヨウサケ属。標準和名ギンザケ。別名シルバーサーモン。河川で孵化後、1年以上河川にとどまった後に降海し、2年間海洋で過ごした後で母川に帰って来る。最大全長 108 センチ。カナダでの原産分布はブリティッシュコロンビア州とユーコン準州の太平洋岸だが、五大湖へ漁業資源として導入され、全ての湖で定着した。

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2007 年 11 月にフレイザーリバー支流で釣ったコーホーサーモン


同個体の別影

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コーカワレイクで釣った陸封コーホーサーモン


コーホーサーモンが遡上する川