真冬のロッキー山脈と言っても、ハイウエーの大部分は除雪車がしょっちゅう雪をどけていたので、その点は走行に問題はなかったが、ヘッドライトの暗さには参った。

もともとチェロキーはヘッドライトが暗いのだが、それが5年以上の使用によってさらに暗くなっていた。その上、前を走る車のはねる融雪剤がヘッドライトにこびりついてさらに暗くしたので、頻繁に止まってヘッドランプを拭かなくてはならなかった。

外灯一つない真っ暗なロッキー山中でほとんど前が見えずに、前の車のテールランプを頼りにしたり、勘で運転していた状態だった。オンタリオを発つ前に新しいヘッドライトと交換しなかったことを大いに悔やんだ。

ロッキー越えのちょうど中間地点あたりがゴールデンという町だが、その10マイル (約14キロ) ほど手前にあるパークブリッジという橋が当時まだ建設中だったので、キッキングホースリバーを渡るためには渓谷を降りて行かなければならなかった。その道はハイウエーとはとても思えない狭い下り坂で、雪にスリップする恐怖と、暗くて前がよく見えない二重の恐怖におびえながらの走行だった。よく事故を起こさなかったものだと今でも思う。

のろのろと走っていたので、地元のピックアップの兄ちゃんに入れ替わり立ち替わりテールゲート (すぐ後ろにつけられること) されたが、そのヘッドライトの灯りを助けに走っていたという面もあった。もっともそれ以来ピックアップにはいい印象は持たなくなってしまったが。それにしても彼らの雪上とは思えないスピードには驚いた。タイヤの違いだろう。私も少なくともオールシーズンタイヤには替えておくべきだった。

とにもかくにもロッキー山脈を降りて来て、最初の大きな町がカムループスだった。それまではハイウエー1を走っていればいずれバンクーバーに着くと思っていたが、カムループスからホープまで有料のハイウエー5を通れば近道となることに気付いた。このルートの場合、カムループスの次の大きな町がメリットで、心もとなくなっていた燃料をようやくここで補給できて人心地着いた。

この後、一気に夜通し走って31日の朝にバンクーバーへ入ればアパートも探せると思っていた。そうしないと元日は不動産屋も休みだったからだ。ところがメリットから山中へ入ると強い雪になり、断念せざるを得なかった。這々の体でメリットに引き返し、午前1時か2時だったがモーテルを探した。一軒目はちょうど私の前に入った客が最後の一室だった。二軒目で眠っていた経営者を起こしてしまったが、なんとか部屋をゲットできて長い長い一日が終わった。

翌朝は除雪車がきれいに雪を片付けていたので、問題なく山を越えることができた。夜と昼とでは大違いだった。山を越えてホープの町に降りて来るとガラリと気候が変わり、雪がないどころか、路肩に緑の草が生えていることに驚いた。噂に聞いていた大河フレイザーリバーを右手に見ながら、ラリーのビクトリーランのような気分でハイウエー1を進み、バンクーバー近くに31日の午後2時頃、ついに到着した。

結局5日間かかった大陸横断の旅だった。費用は、モーテルに泊まったのが2回だけだったのでガソリン代がほとんどで、1000ドルほどだった。それよりも車をブリティッシュコロンビア州で新たに登録するための車検のせいで、あちこち修理せざるを得ず、3000ドルもかかってしまった。ただし後に税金の確定申告の際に、引っ越し費用控除という形でこの分は取り返せた。

その後はロッキー越えも何度かこなし、何千キロのドライブや車中泊にも慣れた。今度は西から東へ同じルートでオンタリオまで行ってみたい。その時は、新しい目 (もく) を釣らなければ次へ進めないといった、すごろく方式の釣りの旅にしたいと考えている。