昨日のデートは予想を超えて苦かった。
幾度となくしょーもないデートを重ねてるあたしだけど、昨日のデートは想像をずっとずっと超えて傷ついた。
不機嫌そうな口調
苦笑いのあとのため息
わざとあたしが嫌がりそうな女の話
突き放す態度
硬い雰囲気
思い出すと泣けてくる。
全部わざとにすごく近いところで彼がやってるんだと思うと、ほんと、悲しい。
ステーキ食べたいというあたしのリクエストで、アウトバックでステーキを食べてる途中ずっと、あたしは「一生懸命」会話を探していて、
こういう手ごたえのときはもう、絶対的に全然ほんとうにダメ決定…なんて思いながら
夜9時15分に東急東横線の改札口前であたしはみけんにしわを寄せてひざを抱え込みながら考え込んだ。
すごく色んなことを集中して考えたので、考えきったあとはぐったりしていた。
早急に答えを出したいのはあたしの悪いクセだと知ってる。
けど、もう、ダメって分かってる、このまま放り投げておくとどんどん腐って傷んでいくしかない事実を、
不完全燃焼で終らせずに、ちゃんと、きちんと、処理したかったのだ。
もう自分の素直な気持ち全部を盛ったドストレートのメールを気になってしかたなかった彼に送って、
渋谷に住んでる高校の同級生に電話した。色んなことを考えて集中しすぎて、手が少し震えてた。
金曜日の夜だったからもしかしたら飲んでるかなーと思って電話したんだけど、
「なにしてんのー?」「家にいるー」とゆるい返事が返ってきて、
あたしはとても安心した気持ちで、彼女のうちに向かった。
彼女の家に行くと、数回会ったことがある恋人がベッドでゴロゴロ寝ていて、
「こんばんわ」なんて低すぎるテンションで挨拶すると、
少し顔を上げた彼は、ニヘラと笑って「俺はお客さんが来ても起きる気はないからねー、なになに、U子、デート?渋谷で何してたの?」とあっけらかんと明るく質問されたので笑ってしまった。
ほんと、あたし、渋谷で何してたんだろ。
友人とその彼にあたしのしょーもないデートの話と送ったメールの内容を軽く伝えて、
「返信がおそらく来てるんだけど、怖くてあけらんないの…」と重々しく言うと、2人して「えー!見てあげるから、かして!かして!」などと明るく手をだすので、さらになんかバカらしくて救われた。
どんな人なの?という質問から、どこがいいの?という質問に答えてるうちに、彼はわたしがツタヤで購入したワンピース最新刊をもくもくと読み出し、
どこからともなくその話をはずれたりして、あたしはもちろん笑ったり、つっこみをいれたり、少しおもしろいようなことを言ったりしていて、
東横線の改札口でただ呆然とショックで足が前に進まなかった1時間前のことを思い出すと、
そしてもし友人といっしょではなく、1人で呆然としたまま横浜に帰り、そうして1人で気になる彼からのメールを開封することを思うと、考えたくないような気持ちだった。
見たくない自分と言うか、あまりに、バカだし、不器用すぎて。
ダラダラしていたら終電の時間で、「もう今日とまってもいい?」ときくと、友人は彼氏が来てるのに、もちろん全然いいよ、などと気軽に承諾してくれて、
おまけに友人とその彼氏は、横須賀の無人島・猿島で、みんなでバーベキューする予定があるから、U子も行こうよ、と誘ってくれた。
心の脊髄やられてるから、誰かとワイワイするテンションじゃないもん…なんてウジウジしていたんだけど、
「そういうのはめんどくせーと思ってても、とりあえず参加してみたほうが楽しいよ」と言う友人の言葉を聞いて、
まぁ横浜のうちに帰宅しても、どうせうじうじしながら心重く掃除とかするだけだろうし、
そんな一日を過ごすって分かってるんだったら、ちょっと参加してみるか!という気分になり、今日は横須賀の海でバーベキューをしてきた。
横須賀は仲良しの後輩Sちゃんの地元で、「まじ猿島超いいっすから、遊びにきてください!!」としつこく何度も言っていたとおり、「猿島はまじ超いいっす」の言葉通りだった。
「さすが24時間営業のスーパーがあたりまえの顔してあるなんて渋谷は眠らない町だな」と言いながら夜中に買出しに出かけ、
友人が野菜を切ってる間にあたしはワンピースの最新刊を読み出し、
ゴロゴロしながら様子をうかがい、
3時前にテレビを見ながらそれとなく眠り、6時に彼氏の電話で起こされた。
あわててシャワーに入り化粧をして、彼氏の友人4人で、渋谷を出た。
朝6時のきょうの東京は、快晴で、キラキラしていて、高層ビルがたくさんあって、東京タワーが見えて、
あたしはつい先日、このまちを、まったく別の気持ちで昨日の夜フラれた人と酔っ払いながら歩いてることを思うと、なんか泣きそうになった。
彼が住んでる町。そうそう、こういう、こういう道をあの車で送ってもらったんだった。
横須賀に向かう途中、バーベキューの物品を横浜にあるレストランに借りに行くというので、一度うちに寄ってもらい、水着やタオルを引っ張り出して、白のロングのワンピースを着て海にいく準備をした。
本当は昨日のうちに気持ちを引きずりながら重い気持ちで帰宅して、熱帯夜で寝苦しくて汗だくで起きて、そうやって始まる一日のはずだったのに、
朝日がふりそそぐ中で、思いがけず夏の準備をしているあたしはなかなか悪くなくて、元気が出た。
今日の海は快晴で、雲は夏を象徴したような真っ白い、もくもくとしたあれで、海がキラキラ反射していて、
パラソルがたくさん立っていて、みんな水着で、笑っていて、お肉はとても美味しくて、ビールは冷たくて、ジュースは甘かった。
スピーカーから音楽が流れてて、髪の毛は潮風のにおいがして、太陽はギラギラしてた。
暗くどん底に落ちるかも…とぶらんとした気持ちで思った昨夜は幻想だったかのように、
あたしは初対面の恋人同士にブラジルのビナグレッチェというソースの作り方をおそわったり、ほかの人に男の好みが不細工専門であることを指摘されて笑い、クーラーボックスから誰かのために飲み物を取り出した。
友人と「探検に行こう」と言いながら登った猿島の山側は、木々が生い茂っていて、風が涼しくて、いままで経験したことのないような蝉時雨。
すげーなんて見上げた空は青くて、木漏れ日は、ほんと、もう、超あったりまえにキレイで、
結局、自分を追い込んだり、嫌な気分になったり、そうしているのはデートをした彼じゃなく、誰かでもなく、自分なんだよな。
そう思ったら、なんとなく気分が変わった。よし、大丈夫。
男にふられたって、もうふられるのにも慣れてきたし、大丈夫。
遊びすぎたときの疲労感を全身に感じながら、船にのって横須賀に戻り、みんなで気軽にお別れをして、横浜に帰宅。
はーつかれた、なんてシャワーに入ったら、肩と背中と太ももが赤く、水着の後がついてた。
誰かのことを好きだといって、一直線にぶっこんで、粉砕して、それでもすぐに立ち直って友人とバカな話をして、ごろつきながらワンピースを読んで、
次の日は海でバーベキューして水着の後がつくほどリラックスして、ブログ書いてすぐ熟睡。
今日が今日みたいな日になって本当によかった。
帰りの船に乗る前、友人の彼に「U子、今日来てよかったべ!」とにこにこ言われたけど、うん、ほんと、まじでよかった。
いろんなことに救われた日。
みんなありがとう。そんでいつもすみません。また次もよろしくお願いします。