機械の翼とドクター | 魔法石の庭ver.2

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スピリチュアル界と、ちょっとパワーストーンブログになっています。

 スピリット界ネタですけどね。

 最近、肩甲骨の辺りが痛くてですね。
 ちょうど、神獣から翼を貰った時のような痛みがあるので、スピリット界に飛んできました。

「姉様……」と、真理矢が心配そうに寄り添ってきます。茨は、「あちゃー」という顔をしています。
 何だ?この2体の式神のリアクション?と思っていると……。

 鏡台の前に立ったとき、私は少しめまいがしました。
 背中には、神獣の虹色の翼の下に真っ黒な、ツバメの羽のような翼が生えていて、しかも途中から折れた傷口からは、電源コードや歯車が覗いています。
 明らかに、生物に生えてはいけないものですよね……。

 で、茨に向かって「何かこの羽について知ってるの?」と聞くと、茨は嫌そうに「まあね。でも、あんまり会わない方が良いヤツだよ」と答えます。
「でも、このままじゃなんともならないし……この羽の神様に会いに行かないと」というと、「神じゃないよ。まあ、人間でもないけどね」と茨は小指で耳を掻きながら言います。

 なんだかよくわからないので、「この翼の主の所に」と強く願ってジャンプすると、ぐるりと景色が反転しました。これは、私がフォーカスエリアを移動した証です。
 でも、フォーカス100ではないような……もっと下の方?と思っていると、周りは木も生えないような山。切り立った崖の途中に、ぽっかりと洞窟のような穴が開いています。

 そこからそっと中を覗くと、ジジ、バチバチと、溶接のような音がしています。
 そして、そこには、スターウォーズのC-3POみたいな、人体模型の骨だけのやつみたいな、銀色に光るアンドロイドがせっせと何かを造っています。

 そして、ふと目が合ってしまい、その機械は「ああ」と声を発しました。声帯があるのか!?

「これはこれは、かみな様。待っていましたよ」と、そのアンドロイドは両手を広げます。声は、人間の声じゃなくて、ボーカロイドをさらに機械化させたような、無機質な声です。

「あの、あなたは……」と私がおそるおそる洞窟に入ると、中はそこら中に電源コードが張り巡らされており、まるで蜘蛛の巣のようです。
「私は、ここのラボ(研究室)に住んでいる、『ドクター』と呼ばれている者ですよ」と、その機械声が答えます。

「ど、ドクター……」と、私はなんとなく納得します。それで、「この翼なんですけど……」と後ろを向いて折れた翼を見せると、ドクターは「ああ!メンテナンスをしないからだ!私の『作品』は常に完璧で美しくなくてはいけないのに!」と急に嘆きだします。
「さ、作品?」と私が問うと、ドクターはてきぱきと作業中の機械を片付けて、私にうつぶせに台の上に寝るように指示します。
「作品は作品ですよ。私の体も、完璧に無駄をそぎ落とした素晴らしい体でしょう?食料も要らず、燃料も要らない、完璧なソーラーシステムの体だ。かみな様の体も、全てを美しい作品に替えてあげようと思ったのに、他の連中に反対されましてね。結局翼だけを私に任されたのですよ」と、ドクターは手早く作業を始めています。

 ……人間の体をいじるのに、してはいけないような音がっが。あえて言うなら、歯医者のキュイーンみたいな音?

「おい」と、真理矢が口を挟みます。「もし、姉様の体に余計なものを入れるようだったら、その首、半分にするぞ」と、何故かいきなりキレています。
「うーん。かみな様の体もサイボーグ化すれば、もっと効率よく動けるのに……」と、ドクターが言うので、「あ、そういうのは要らないから」と答えます。
 
「それにしても、こんなところで、一人で何をしてるんです?」と聞いてみると、ドクターは「色々とね。神々は機械化に懐疑的ですから。しかし、地上は既に様々な分野で科学は発達し、機械化の波が押し寄せているでしょう。その、メカニックの部分を担当しているのが我々『ドクター』というわけですよ」とか。
「え?『ドクター』って、個人名じゃないんですか?」と言うと、「個人名って何のためにあるのか我々には理解不明ですからねえ。普段はID番号で呼び合っていますよ」と答えます。

 しばらくして、「さあできた。少し羽を動かしてみてください」と、ドクターが言うので、言われたとおりに2枚目の羽だけが動くようにと念じて動かします。
 すると、音もなく、ぎしぎしという金属のすれる音すらなく、真っ黒な機械の羽が揺れています。

「おお。我ながら素晴らしい。どうです?静音機能付きの機械翼は」と、ドクターはやり遂げた顔をしています。……いや、表情はわからなくて、声も機械ですから、多分、ですけど。
「うん……悪くないけど、あれですね。なんか、勝手に機械装置を背中に作られるっていうのはどうなんでしょうね」と言うと、「はは。倫理的問題ですか。そんなもの、スピリット界にはありませんよ」と軽く答えられます。

 そして、「これからは、折れる前にメンテナンスに来てくださいね-。じゃあ、そういうことで」と、あしらわれます。
「ええと……?こうなった経緯の説明とかは……?」と聞くと、「長くなる上に、あなたが生まれる前の魂だった頃に話したことをもう一度話すのは合理的ではないでしょう」と言われます。つまりは、思い出せってことですか。

 そのまま館に帰ると、茨が門の前で出迎えてくれ、「な?あたしが行ったらケンカになりそうな相手だったろ?」と言われました。
 まあ、茨とは相性良くなさそうですけどね。

 ということで、翼が増えました。機械ですけど。うーん、この世に生まれる前の私、あのドクターと何を約束してこの翼をもらったのやら……。謎です。