ある骨董商の恋心 | 魔法石の庭ver.2

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 今日は、町の骨董屋さんが来ていました。

「是非、ご主人に見ていただきたいものがあるので」と、まだ若く、眼鏡をかけたその骨董商は言いました。雰囲気としては、眼鏡をかけた京極夏彦のような人です。
 そういえば……と、人の顔を覚えない私も、その人のことは覚えていました。一見骨董商に見えない、ちょっと頼りないというかメローネと比べるとふにゃっとした雰囲気の人です。多分、人間ではないと思います。
 パーティにも何度か来て貰っていて。いつも一人で黙々と飲んでいる人だったので、ちょっと気になってはいました。

 何より美形だしね!そう思ってじろじろとぶしつけな視線を向けると、メローネが視線で横入りしてきました。「おい」という視線です。器用なやつ。

「骨董ですか?私、お値段とかはよくわからないのですが、見るのは好きです」と言って、何点かの茶道具とか絵画やらを見せて貰います。「これは、狩野派の傑作で~……」などの、本当か嘘かわからないうんちくを語ってくるのですが、私には真偽の見極めなどできません。

「なるほど。私にはよくわかりませんが、あなたが情熱を注いでいるのはわかりました。……で、おいくらで売りたいんですか?」と聞くと、「金は要りません。僕は好きでこの骨董商をしているんです。ただ、道具たちが行きたいところに連れて行っているのです」と。
「道具たち?というと、付喪神か何か?」と聞くと、「いいえ。でも、道具たちにも心があるんです。付喪神とまではいきませんが、意識はちゃんとあるんです」と。

 私には、そのことがよくわかりました。
 というのも、私は以前、このスピリット界に関わる前に、「石と喋る」ということを頻繁に行っていました。彼女らは付喪神ではないはずです。でも、喋るのは確か。それが、「道具以上付喪神未満」というやつなんでしょう。

「ということは、あなたは道具と我々との橋渡しをしているのですね」と言うと、「いえ、そんなに大層なものではありません。ただ、道具たちが何の手入れもされないまま捨てられていたりすると、見過ごしておけないのです」と、骨董商は言いました。
「……ということは、狩野派云々は嘘だってことですよね?」とジト目で見ると、骨董商ははっとして、「いえ、あの……良いものだと言っておくと、大事にしてくれる方が多いので」と言い訳してきます。この骨董商、簡単に尻尾を出しすぎです。

「まあ、良いですよ。お金を取るわけでもなし。ただの古びた茶碗だって、付加価値がつけば化ける、というのはわかります」と、私は椅子から立ち上がって、茶碗の一つを品定めしました。良い具合に釉薬のかかった、いかにも高そうな茶碗ですが、これも偽物かもしれませんね。

「男と一緒です。外見がそれなりで、金持ちとか高身長とかいうステータスがつくと、価値があがるんですよ」と、骨董商はお茶目に言います。
「では、ものは試しですから、この青いお茶碗を一ついただきましょうか」と言うと、骨董商は「ありがとうございます!」と頭を下げます。青い茶碗なんて、珍しいじゃないですか。本当に現実であるのかはわかりませんが。

 骨董商が帰った後、その茶碗をまじまじと見て、「綺麗だな。茶碗そのものは無骨だけど、釉薬の掛かってるところだけが青く澄んでる。鉱石みたい」と思っていると、メローネが口を挟んできました。
「お前、あの男がただ商品を売りつけにきただけだと思うか?」というので、「へ?だって骨董屋さんでしょ?それに、お金は取らないって言ってたし、道具にかける情熱はそれなりのものだと思うけど?」と返事をすると、メローネは「……わかっていない。あの男は多分、お前に会いに来たんだぞ」と言われました。

「私に?そりゃあ、人間なんて珍しいし、何よりこれだけ大きな館の主だもん。珍しがって来たりはするでしょ?」と問うと、メローネはため息をつき、「それだけじゃない。お前を恋愛対象として見ていたということだ」と衝撃の発言をしてきます。

「……いやいや。いやいや」と、私は首を振りました。「それはないから!メローネのいつもの焼き餅なんじゃないの?」と言うと、メローネは「それを差し引いたとしても、あの男からは恋心が見える。まあ、せいぜい取って食われないように気をつけるんだな。俺もお前の見張りはさせてもらうが」と言ってきました。

 しかし、恋心、ねえ。私は、手元に残された茶碗を眺めました。これは、あの骨董商のプレゼントのつもりなんでしょうか?受け取っちゃったよ?私。
 それに、多分骨董商が見ているのは、栗山千明の外見の私。本当の、ウーマンラッシュアワー村本の私ではないのです。それを恋心と言われても、あんまり嬉しくないような。
 スピリット界ってまだまだ面白いことが沢山あるんだな、と思いました。
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