これからの「正義」の話をしよう、読了。 | うじのブログ

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文句なしに面白かった。…とかいう感想で良いのかどうかは別として。


流し読み型を自認する私であるので少々見当違いな事を書くかもしれないが、と予め逃げ道を用意しておくが。


読後感としては、思ったよりも突っ込んだ話をしている反面、突っ込み不足な部分もまた存在。


突っ込んだ話。


アメリカの現在の状況に踏み込んで「こういう議論をすべき」という話まで書かれていた。(多分)一般的には「自分はこう考える」までにとどめるものだと思っていたから、具体的な提言まで少しなりとも書かれていたのに驚いた。


ある意味で時事問題の本であるのかもしれない。


突っ込み不足な話。


具体的なアメリカの現状にフォーカスした議論を行っているためか、極端なところまで踏み込めていない印象がある。例えば殺人は無条件で悪であるという前提が議論の端々に出てくるが、人を殺すことが経済活動の一部に組み込まれているような組織であれば、その前提は崩れるのでは無かろうか。そういう社会があるかどうかは別として。


個人的な考えを述べさせてもらうと、道徳や善の問題を論ずるならば、その運営組織(主に政府にフォーカスされているが)の存在目的と方法に関した議論が必要になると考える。そして、これは全ての組織に言えることだが、大抵は明示されないが一番の目的はその組織の存続なのだ。この点からどういう手段を用いて(どういう目的を標榜して)存続を目指しているか、どういう組織運営をしているか、等々を考えていかないと、その組織にとっての道徳や善は見えてこない。


社会組織などに対して進化論的な適者生存による淘汰(環境に適応するものが生き残るのではなく、たまたま有利な形態になっていたものが生き残って、あるいは勢力を拡大していく)という見方をするのは最早特殊な考え方ではないだろうと思っている。私が思いつける程度の話であるぐらいだから。


だからこそ、そこまで踏み込んだ議論が哲学の領域には必要なのではないだろうか。


・・・ともあれ、良書であるという認識は揺るがない。機会があれば友人に貸し出して読んでもらおうと思っています。相手が読むと言ってくれれば、ですが。