今回のお題は政治ネタ?
固そうなおはなし

花き振興法案(通称フラワー法案)が創設されるそうです
議員立法で年明けの通常国会に出される予定
「秘密保護法案」や「集団的自衛権」のように国会で紛糾することも
マスコミにとりあげられることもなく
ひっそりと全会一致で成立するのでしょう

現在は自民党の農林部会(坂本哲志座長:衆 熊本3区)で法律案を取りまとめ中

法案創設の中心は
野党時代の自民党が結成した「フラワー産業議員連盟」

会長 河村健夫 衆・山口3区(現自民党選挙対策委員長 元内閣官房長官、文部科学大臣など歴任)
幹事長 江藤 拓 衆・宮崎2区
事務局長 佐藤ゆかり 参

野党時代は53名だったが、自民党が選挙に勝って一挙に126名に倍増
江藤 拓幹事長は農水副大臣に

ほとんどの生産者、花屋さんは「そんなこと関係ない!」と感じられるでしょう
しかし、けっこう花産業に大きな追い風になりそう

古い人には感慨深いものがあります
1909年(明治42年)東京中野で近代的花生産がはじまって104年
やっと花産業が世間から認知されたことになります

戦前
田に稲を植え、麦をまき
額に汗して一途に働き抜くことが農家の範とされた時代

投機性の強い花づくりは
「道楽者、なまけ者、欲かき」とさげすまれた
成功してもバクチに勝ったといわれた

1941年(昭和16年)太平洋戦争勃発
食糧生産に邁進
国家総動員法、価格統制令、作付け統制令が発令され
「花づくりは非国民・国賊」
花卉棄却命令
花をつくることを禁止
畑に植わっている花は抜き取り
花田畑はさつまいもや麦に
温室は空襲の目標になるガラスをはずし
鉄骨は供出

地域によっては
倉庫、納屋を家捜しされ
保管していた花のたね、球根を焼却

明治末から発展してきた花づくりは壊滅

$宇田明のウダウダ言います
画像 「実際園芸」昭和16年3月号
   華やかだった表紙は町内会が空き地でいもをつくる白黒写真に
   この年の12月号でついに休刊
   戦後「農耕と園芸」として再開

1945年(昭和20年)8月終戦

満を持して花づくりを再開
物置のすみからたねや球根を探しだしてきた
山に捨てた球根が元気に生きていた
墓のなかにたねを隠していた人もいた
畑のすみでこぼれだねが芽をだしているのを見つけ
そっと植えかえた

房州和田町真浦 半農半漁の村で
先駆者 間宮七郎平に薫陶をうけ花づくりをはじめた川名りんをモデルに
田宮虎彦は「花」(新潮社 1972年)を著した
高橋恵子主演で映画にもなった

$宇田明のウダウダ言います


「1945年8月15日正午 天皇の詔勅が終わると
りんは山道を駈けのぼり
地蔵堂の中から油紙で包んだ金盞花のたねとアイリスの球根をとりだした」

川名家のすっかり茶色になった「荷出売上簿」は
1947年(昭和22年)1月25日日付で再開した
初日はエリカ16束、小ギク110本

空襲で焼け出され、荒廃した東京の人たちの心をなごませた
(愛されつづけて100年 カーネーション生産の歴史 日本花き生産協会2009)

$宇田明のウダウダ言います
画像 「間宮七郎平と和田の花」(和田小学校社会科研究部 18983) 

和田町花園に間宮七郎平の功労碑がある
「わが和田浦は、四季百花繚乱のお花畑である。
その華麗なる陰に老輩の歩んだ苦難の道の残ることを銘記すべきである。
間宮七郎平は世人が花卉栽培に無関心だった大正初期、
いち早く将来性あるを認め、
敢然周囲の反対と嘲笑を排除して普及発達をはかったために
一時疲弊その極みに陥った郷土を救い得た。
中略
ここに諸先輩の偉業を讃え、
碑を建立し後生にながく功績を伝える。
昭和32年 和田浦生花組合」

$宇田明のウダウダ言います
画像 和田町花園に建つ間宮七郎平の功労碑

ときは流れ
いま「花き振興法」創設

勢いのあるときには振興する法律など必要ない
下り坂を止められないいま
生産が減りつづけるいま
法律の後押しが必要かもしれない

お役人には大きな力になる
都道府県は「花き振興策」をつくり
花き産業、花き文化を振興しなければならない
県庁に花担当を配置する根拠法になる
花の予算を取りやすくなる
生産者、花店、市場など花産業に直接、間接の利益
生け花、フラワーデザインなど花文化の振興
花の消費拡大活動

だからといって
生産者、花店、生け花、花産業
保護されるコウノトリやトキのような
絶滅危惧種になってはいけない

自らがえさをとり、外敵と戦い、生きる気力、気概
花き振興法は花産業の生活保護法ではない

嘲笑されても
非国民といわれても
花をつくりつづけた先駆者

花き振興といわれても
やめざるをえない現在の花生産者
儲からないから仕方がないのか

いま必要なものは
花をつくりつづけた先駆者の気力、気概、信念
そしてハングリー精神、向上心

花き振興法が創設されようとするいま
3代目、4代目に代替わりした花づくり
郷土の先駆者の苦労を偲び
はらをくくって花づくりにとりくみましょう

$宇田明のウダウダ言います
画像 先人の苦労があっていまの花づくりがある
   カーネーションの先駆者
   鰐部さん(愛知)、鮎沢さん(長野)、青地さん(滋賀)、真鍋さん(香川)、惣林坊さん(兵庫)
   現在は二代目、三代目の時代

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$宇田明のウダウダ言います