靖国問題再考 | クラスタ民主主義システム研究室

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まず確認しておくべきことは、靖国神社は軍部と政治がつくったパタン・ランゲージだということです。


軍すなわち武士や戦士を祀る施設だからこそ遊就館がある…、これは間違いないでしょう。


その「靖国」というイメージで各方面に影響が及ぶように施政者が造った…。これも間違いありません。


当初は「東京招魂社」というイメージパタンでしたが、招魂はまずいということで靖国に改変された経緯があります。このため、今ある各地の護国神社は戦前の昭和14年まで招魂社のままだったわけです。そして、靖国や護国の神社で行われているのは今でも招魂祭であり、決して鎮魂祭ではないのです。


このように、靖国は国家と政治に直結した宗教組織であり、信奉者の中では日本における国教の意味合いが強く、彼らはよくイングランド国教会と対比させますが、日本国憲法でも靖国や神道が国教と定められているわけではありませんから、この点は論理上はっきりさせておくべきです。日本では、戦前に神道が事実上国教として扱われた戦前の弊害に対する反省から、憲法上でも信仰の自由を掲げ、イギリスのような国教制度を廃したわけであり、単なる一民間宗教法人である靖国と国家は近づいてはいけません。


しかしながら、一部の政治集団は靖国を信奉しようとしますし、靖国と国家を繋げようとします。


なぜでしょう?


何故、国家(政治)と軍と靖国が一つのイメージの中に重なる必要があるのか?


そこには靖国神社を建立した軍部や政治家の思惑があるわけです。


国民に施政者と軍が流布したかったパタン・ランゲージが組み込まれた建築物、それが靖国であり、靖国には一般的な神道とは違ったランゲージが存在しているのです。


だからこそ招魂祭なわけです。普通の神社は招魂はしませんから、一般的な神社とは違う…。


では、どう違うのか?


山本五十六神社といった軍神の神社ではなく、多数の英霊を祀る靖国神社でなければならないのは、なぜなのか?


なぜ250万柱にも及ぶ英霊を強制的に祀る必要があるのか?





本来、日本人は信仰が曖昧です。適当なんです。神道でも、仏教でも、儒教でも何でもいい…


だから、普段は信仰の根幹が何処にあるか…考えません。


それで、昔から伝統がある靖国神社を変えることは出来ない…、日本の伝統だと固執します。


でも、日本人は、本来は、神社でも、寺院でも、教会でも、何でも良いのです。


なぜなら、日本は神仏習合だからです。


日本人なら、信仰上、靖国神社を護国寺にしても何の問題もありません。



仏教




明治政府は神道の国教化政策を行うため、明治元年3月から、神社から仏教的な要素を排除しようとして「神仏分離令」を出しました。その結果、廃仏毀釈(きしやく)運動が拡がり、多くの寺院が神社へと建て替えられました。


寺院でも、神社でも、どうでも良いのが、日本人の本来の信仰です。

つまり、明治に寺院を神社にしたのですから、現代で神社を寺院にしても何の罰も当たりません。


日本人の信仰的には靖国神社が存続する必要はないのですが、信仰の問題ではないからこそ、神道政治連盟に関与している集団は、靖国神社の存続と国家の管理下に戻すことを目指しています。


これこそが明治政府体制への復古と靖国神社が繋がったパタンランゲージなわけで、そこに日本人の伝統も信仰も存在していないと私は考えています。そこに在るのは、政治的かつ軍事的な必要性です。



靖国のパタンランゲージは「日本国が永続するよう臣民が礎となり護る」ということであり「先人たちの魂を引き継ぎ我らも報国します」という決意をすることです。したがって、靖国神社で慰霊する…、靖国神社で不戦を誓う…、といったことが主目的ではないと言えます。


ここで問題となるのが、日本国と施政者の関係性です。国家がナショナリズムに偏り、施政者が神格化したり聖者化されてしまうと、あっという間に独裁国家や圧政が訪れ戦前の二の舞になります。


また、靖国神社は施政者が権力を掌握する手段にも用いることができます。中国が反日教育や反日ドラマを行うことによって国防意識を高め軍備増強や国家存続を確かなものにするように、靖国神社への反発が高まれば高まるほど、日本でも軍備を増強し施政者への支持を高めることができるのです。



軍や施政者が利用しやすいようパタンランゲージが組み込まれた建築物…、それが靖国神社の真髄であることを私たちは憶えておくべきでしょう。靖国神社は国防力を高める力がありますが、明治以降に日本が対外戦争を繰り返した原動力でもあります。その両刃を決して忘れてはなりません。


このように靖国神社は宗教施設ではないですし、日本人は神仏習合ですから、靖国神社は靖国寺にしてしまい、ただ単に戦没者を慰霊する寺院にしてしまい、招魂祭を廃止し、私たち日本人は軍と神道と皇室との繋がりを断つべきです。新しくできた靖国寺であれば、慰霊施設ですから太平洋戦争の戦犯を慰霊しても何の問題もないでしょう。


軍と神道とを繋げ、戦士たちの魂を受け継ぎたいのであれば、新たに坂本龍馬や西郷隆盛や山本五十六といった軍神に相応しい人々を数千人選び出し、新たに設けた「国家守護神社」で招魂祭を行い、改めて21世紀の「日本国家維新」を目指してはどうでしょうか。


明治政府が靖国で伝統を造り出したように、私たちも現代に相応しい新しい伝統を創り出してこそ、日本の未来に平和が訪れると思います。


ウサギ