実は、東アジアは売春に関して寛容な地域です。
昔から多くの日本人は売春ツアーに出かけていました。1990年代まで韓国へのキーセン観光がありましたし、台湾のホテルに行くと売春婦がホテルの部屋を訪れるのが常識だったからです。タイへの売春ツアーへも多くの日本人が通いました。今でも風俗産業が盛んですから、日本人が売春に抵抗がないのは仕方ありません。このように東アジアでは寛容ですから、未だに韓国人男女が売春目的で国外に出向くことが続いているわけです。それで日本には売春に抵抗がない男女が諸外国より多いようですし、近年は風俗や援助交際が増えて、ますます日本では売買春への抵抗が無くなってきたようです。
ただし、これほど売春に抵抗を持たない感覚は東アジアの特異的な価値観と考えるべきでしょう。
確かに諸外国で売春行為が合法となりつつありますが、これは個人の意志に基づいた売春が合法なだけであり、民間や国営の組織的な売春宿(娼館)が許されている国家は極少数です。これは業者による強制的な売春を排除するためと言えるでしょう。(wikiの売春 を参照)
こうした世界的な売春斡旋業への認識に基づいて、日本でも国外への業者による売春婦の輸出を制限する廃娼令が1920年から施行されています。これによって、それまで続いていた東南アジアやアメリカ大陸に向けた「からゆきさん」が廃止されていきました。
ここで大切な点は、個人の自由の下に地元で行う売春行為と、業者が斡旋して国外に派遣して行う売春行為は、全く別次元のものという点です。個人の選択で行う売春行為と、業者が強制する可能性がある売春斡旋行為は、1920年以前から別々のものと考えられており、前者は世界的に容認され、後者は日本政府も取り締まったわけです。
したがって、業者が組織的に国外に派遣した従軍慰安婦制度と、個人が自由意志で売春している風俗業とを混同して議論してはいけません。その辺りが、国際社会の認識と日本人の認識とが乖離している原因でしょう。
また、個人の自由意志による売春行為が合法化されていても、多くの人々が持っているモラルでは売春行為は容認されていない事は知っておくべきです。売春が合法化されているが業者による売春斡旋は非合法のブラジルでも「64% of the population (according to a 1998 poll) think prostitution is immoral and should be made illegal, 29% see it as a job as any other. Fifty nine percent (64% of women) believe that prostitutes do what they do because they like it.」との調査結果があります。wikiより 。
いま神道を信仰する人々の中では「戦時中は従軍慰安婦制度は必要だった」とか「派遣先での強姦事件を無くすために現代でも軍隊は公娼制度を持つべき」とする人々が増えています。私には全く理解できませんが…
ここで再び強調しておきたいことは、軍人が現地で個人売春を利用することと、業者や軍組織が組織的に売春婦を雇用して国外へ提供することとは、全く別次元の話だということです。国際社会では、前者は合法でも、後者は1920年以降から現代まで非合法が殆どであることは知っておくべきでしょう。
したがって、日本の神道やキリスト教信仰者が国外に向けて「軍隊は公娼制度を持つべき」と訴える論理が国際社会で受け入れられることはありません。論理的に、個人の売春と売春斡旋業は別ものだからです。神道本庁が「現代でも日本の軍隊は公娼制度を持つべき」というモラルを持つことは無いでしょう。
できれば、神道の信仰と日本の真心のためにも下記の一群の記事を良く読んでみて頂きたいと思います。
「ガラパゴス化」する慰安婦論争 ―― なぜに日本の議論は受入れられないか
http://synodos.jp/politics/4347
政治家のあまりに情けない従軍慰安婦発言一流国政治家の心得~初心忘るべからず(番外編)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/37846
日本人全体の品位を著しく貶めた橋下発言ブラジル移民の苦労に学ぶ~初心忘るべからず(番外編その2)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/37890
無知な政治家の発言で、日本が負った重大事国連の拷問禁止委員会が日本に対して勧告まとめる
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/37957
海兵隊は「荒くれ者」集団なのか?橋下市長“暴言”の誤った認識
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/37822
ネット上の一方の諸説だけではなく、地球的視点から書かれた他方の論説にもぜひ先入観を捨てて目を通してみてください。
下手な議論が日本の尊厳を倫理的に貶めていることに気付いていただきたいと思います。