H7N9鳥インフルエンザウィルスの現状と危険性 | クラスタ民主主義システム研究室

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久しぶりにインフルエンザ・パンデミックの話題です。




日本における感染症コントロールの第一人者である東北大学微生物学講座、押谷教授の講演を記録しておきます。

講演の副題は「何がわかっていて何がわかっていないのか」

今日はH7N9とMERSコロナウィルスという二つの感染症のお話。これらのウィルスは非常に危ない…

A型H7N9とは?

インフルエンザウィルスには、A、B、Cの三種類がある。パンデミックを起こすのはA型だけ。多くの動物に感染し、多くの亜型あるのでパンデミックを起こす。

16種類のHAと9種類のNAが見つかっている。最近、コウモリに全く新しいインフルエンザウィルスが見つかっている。

インフルエンザには8本のRNAがあるので変化しやすい。

2009年H1N1は四種類のウィルスが混ざり合って発生した。

普通は鳥インフルエンザは鳥から人に直接感染しにくいが、H5N1で散発的に発生していた。その他にH9N2が中国、H7H7がオランダで発生していた。

H5N1は致死率が高いが、人から人への感染は非常に限定的で、感染しても家族内感染だった。夫婦で感染する事は少なく、同じ血族で感染が広がるので、遺伝的素因が影響していると思われる。

H7H9の感染年齢は50から70代で高齢者が多い。非常に重症のウィルス性肺炎を起こす。

種の特異性をきめているのはレセプターのHAとウィルス増殖温度を左右するPB2。

上気道の温度33度で感染しやすくなると危ない…
H7N9は既に人に感染しやすいタイプになっている。

今のところ致死率は27%前後だが、今後は軽症例や無症候例が増えるだろうと予測される。

H7N9に対しては人類の殆どが免疫を持っていないと思われる。

また、重症化し遷延した症例では、Arg292Lys変異がみつかり、タミフル・リレンザ耐性を持っていたので、悪いニュースといえる。

5月になって減ってきたのは気温が下がったからと考えられるので、この秋以降が心配である。

新型インフルエンザ対策特別措置法が施行された。ワクチンと抗ウィルス薬剤は重症化を防ぐ効果は期待できるが、ワクチン製造までは6ヶ月を要する。

抗インフルエンザ薬を早期投与すると40%位は死亡を回避できるが、残りの人々には薬が効かない場合もある…

1918年のパンデミック程度のような致死率が2%程度の新型インフルエンザでも危険性が高い。

致死率が高い感染症が発生して医療体制が破綻すると、適切に対処することができなくなるかもしれない。

2、3ヶ月程度でワクチンを製造したり、新薬を早急に投与する体制を整えることも大切だろう。

MERS…

最初はヨルダンで発生した院内感染だった。13例中で2例死亡。

SARSと同様に高齢者の男性に多い。原因は不明。

中東からヨーロッパへの輸出例があり、明らかな人-人感染があり、院内感染も頻発している。

H7N9やMERSでは、H1N1ほどのヒトーヒト感染はないのでまだ安心。


迅速な的確な判断・決断が大切。

H1N1では、5000万人分の輸入ワクチンをGSKとノバルティスから輸入したが、実際に使用されたのは2500人だけだったため、輸入の経費853億円が無駄となった。

ワクチン接種も一回接種でいいとしていたのに、一人の政務官によって覆されて二回接種にされてしまった。

危機管理体制の確立と、本当に能力がある専門家による助言が内閣の危機管理に反映される仕組みが大切。




追記:

H7N9ウィルスに関する必要な情報を中国政府は適切に出しているのでしょうか?という質問に対しての回答…

中国の危機管理と情報提供は日本以上であり、日本の方が改善する必要があるというご意見でした。

中国政府はWHOと上手く連係して適切に対応していた。日本政府ではできなかっただろう。

中国の研究者たちも最新の情報を英語論文でどんどん発表している。

原発事故では放射能汚染に関する英文による情報提供が非常に不足していた事に対して諸外国から沢山の批判が寄せられた事を知っておくべき。

今の日本政府の危機管理体制では、同じ事が日本で発生したとしても中国政府のようには対応できないだろう…というご意見でした。

日本と中国で流行しているダニ由来の致死率が高いウィルスについても、中国からは盛んに論文発表があるが、日本は劣っている。

様々な分野で既に中国に追い抜かれつつある…、日本は伸び悩み、中国は昇竜…。考えないといけませんね。