ギリシャと日本、そして放射能汚染が拡がる世界で暮らすために必要なこと | クラスタ民主主義システム研究室

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☆教育ディベートを推進しよう☆ ☆「complex system」で思考してみよう☆「ネットワークデモクラシー(Demoex)研究室」からタイトル改題しました。 

今朝、ちらっとテレビを見たら、ギリシャの公務員ストの様子を放映していました。デモ隊が警官隊と衝突していて、投石と火炎瓶対催涙弾で争っていて、日本の70年安保闘争を彷彿とさせました。


テロップでは、日本とギリシャの公務員の総人口比が出て、日本の4.8%に対してギリシャは20~25%くらいと出ていました。このデータを信じれば、日本の公務員数は多くはないことになります。ですから、一部の人々は日本の公務員を増やして失業対策とすべきだと言います。


ここで問題になるのは、データの信憑性です。本当に日本の公務員数は少ないのか?、本当に日本の公務員給与は高いのか?・・・、こうした問題は、日本の行く末を左右する重要な論拠ですから、正しい情報が必要です。しかし、公務員や準公務員、そして天下り公益法人の従業員が何処まで参入されているのか不明確です。天下り法人の総数が明らかではないですし、判断する材料が不足しています。


参考資料として図表で見る政府2009度版 図解:公務員数の国際比較 をリンクしておきます。やはり、物事を正しく判断するためには、正確な論拠に基く必要があるでしょう。


ギリシャでは盛んにストをしているわけですが、その主張している事を聞くと日本の情況に酷似しています。「なぜ公務員にだけシワ寄せがくるんだ」「政治家や金持ちばかりが儲けている」とテレビのインタビューに対して訴えていました。


そして、驚いたのは、ゴミ回収がストップして道端がゴミの山になっているばかりではなく、財務省の中でもストしていたことです。入口や階段で財務省の職員が座り込みのストをしていました。行政改革を推進し財政再建すべき財務省自体がストで麻痺しているわけで、もう行政が機能しなくなって来ていると言えるでしょう。


公務員のストで行政が麻痺する。ストで街の治安が悪化すると観光客が来なくなり、主要産業である観光産業が打撃を受ける。財政再建のために公務員給与を削減するとともに増税すると、景気が低迷し税収が下がる悪循環に陥る。日系人のギリシャ人は、真剣にオーストラリアかカナダに移民することを多くの人々が考えていると言っていました。


こうした事態を見ていると、国民が自らの思いをストなどを通じて主張するだけでは国家を破壊してしまうのではないかと思うわけです。では、日本の現状は、どうでしょう・・・・


いま、東北大震災と原発事故が日本を襲いました。


原発事故への対応で最大の失敗は、日本政府が全権を掌握して事故対策に乗り出さなかったことです。逆に言えば、日本政府に原発事故に対して対処する能力が無かった事です。保安院も原子力安全委員会も原発事故に対して実働する能力は無く、東京電力に事故対応を任せました。


事故対応を東電にさせることは、政府にとっても都合が良かったわけです。事故対応の不備の矛先は東電に向い、国民からの非難が政府に向かう割合を減らす効果がありました。それもあって、政府は東電を解体して国有化しようとはしないのでしょう。


本来であれば、政府は東電を解体して、全財産、株式、社債、リストラ、企業年金などを原発処理に充当し、新会社なり国営企業として再出発し、発電事業を行わせるべきだと思います。こうすることによって、東電が有する全資産を超える放射能汚染対策に要する費用は、税金から支出するしかないという原発事故の実態が国民にも明確に判るようになります。


実は、現実的には、原発事故処理の全てを東電が行うのは不可能です。事故処理費用の大半は国税でしょう。


原発事故による広範囲の放射能汚染が発生すると、食糧には「この基準値以下なら安全」といえる基準などはありません。基準値が10ベクレル/kg以下でも5ベクレル/kg以下でも危険はあります。飲料水に放射性セシウムが5デシベル/kg入っている水だと判っていて、乳児に飲ませ続ける人がいるでしょうか?


放射能に食糧が汚染されたら、この基準以下なら安全という基準値は存在しません。本当は、基準値が0デシベル/kgでないと安全とは言えないのです。ですから、専門家は絶対に「暫定基準値」という言葉を使います。安全ではない基準値だから、暫定基準値なのです。


どの基準値以下なら安全なのか、基準値以下を食べろと言うのは食べて安全と言っているのだろう・・・と私を問い詰める人がいますが、そういう人々は、放射能汚染の本当の深刻さを知らないだけです。


また、危険な食品は全て調べて全部廃棄すべし、廃棄する食糧は全部東電が買い取るべき・・・と主張する人々がいます。では、そうした事が実現可能でしょうか?



まず、全食糧を10ベクレル/kg以下の感度で放射能測定することは機器の数と感度の問題で不可能です。


仮に測定できたとして、汚染が10デシベル/kg以上の食品を全て廃棄したら、廃棄食糧の買取と廃棄に要する経費は膨大な金額になるでしょう。その上、食糧が不足すれば物価の高騰を招くでしょう。不足する食糧を調達する経費も必要になります。これらの経費は、正しく東電を破たん処理したなら、国税から支出しなければならず、さらなる増税を要することになります。




自己のためにストを続け、投石と火炎瓶を投げ、財務省まで麻痺させ、国を崩壊に向かわせる国民。


数ベクレル/kg以下の殆ど危険がない食品だけを流通させる事ができると信じ、膨大な数の200万~1500万円の精密測定器を揃え、昼夜を問わず大多数の人員を投入し、汚染が見つかった全ての農作物や海産物を廃棄し、生ゴミ処理し、食糧が高騰し、不足した食料を輸入してでも、国税を限りなく投入せよという国民。


そんな姿を見ると考えてしまうわけです。


ただ、国民が自分の要求を主張してさえいれば、国家は成立するのでしょうか?


相手を論破できないと、影で個人の人格批判をするのが議論なのでしょうか?


自分の主張を押し通すことが「民主主義(minshushugi)」なのか?





【報告】平成23年10月21日午後2時45分に一部改変しました。


「基準値が10ベクレル/kg以下でも5ベクレル/kg以下でも危険です。」という記述を「基準値が10ベクレル/kg以下でも5ベクレル/kg以下でも危険はあります。」に変更しました。


今こそ民主主義(デモクラシー)に必要な真髄について人間が考えるべき時だと思うのです。