ECRRの低線量被曝リスク評価には、付き合いきれない(今中哲二先生) | クラスタ民主主義システム研究室

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反原発の人々は、放射線被曝に関するECRRのリスク評価を論拠としています。


そして、チェルノブイリ原発事故での死亡者が、一説には数万~100万人にのぼると言う流言飛語が続いています。


では、その論拠を確認してみましょう。


欧州放射線リスク委員会(ECRR)勧告2010 序文

http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nuclear/articles/ECRR_Recommendations_2010_Preface.html


この中で、スウェーデン北部のがんについてのマーチン・トンデル氏の疫学研究が取上げられています。


このマーチン・トンデル氏の論文には、本当は何と書いてあるかというと・・・


京都大学原子炉実験所の方々のサイト「原子炉安全研究グループ」に、真実が書かれています。

http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/tyt2004/


これは、小出裕章先生も参加されているグループです。


北スウェーデン地域でのガン発生率増加はチェルノブイリ事故が原因か?
マーチン・トンデル (リンショーピン大学病院、スウェーデン)
http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/tyt2004/tondel.pdf


反原発グループの人々が論拠としている論文には、実際には、何と書いてあるのか・・・

読むと、驚愕します。


それで、京都大学原子炉実験所の信頼できる先生方は、ECRRリスク評価を信じていません。


以下、抜粋

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3kBq/m2 以下を対照群とした場合、全ガンの相対リスクは、いずれの被曝区分においてもわずかに増加している。全被曝区分に対する平均的な値として、100kBq/m2 のセシウム137 汚染当り0.11(95%信頼域0.03-0.20)という過剰相対リスク値が得られた。また、発生率変動を求めるにあたっては、集団が高年齢化することを考慮して年齢を5-59 歳に限定し、1 万3823 件のガンを解析の対象とした。対照群での発生率変動10 万人当り30.3 件は、この間の時間傾向であり、チェルノブイリ事故とは関係ない増加と見なされる(表1)。相対リスクと発生率変動のいずれも、各区分での喫煙傾向では説明できない。また、放射線感受性で潜伏期間が短い白血病や甲状腺ガンが、チェルノブイリ事故以降にスウェーデン北部で増加しているということはなかった。


(中略)


我々の解析によると、2 万2409 件のガンのうち、849 件がチェルノブイリからの放射能汚染によるものである。


(中略)


我々の調査の追跡期間はまだ短いものであり、スウェーデンでの放射能汚染とガン発生との因果関係について結論的なことを述べるには、もっと長期間の調査が必要である。もしも我々が、ガン発生プロセスの終わりでの促進効果を観察したのであれば、これからガン発生率が減少し、長い調査期間全体では平常値におさまるといったことが起きるかも知れない。こうした考えも、将来の研究によって明らかにされるべき推測である。

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なぜか、事故後の短期間のうちにガン発生率が上ったが、その後は未だ判っていない・・・という結果でした。


しかも、白血病も甲状腺ガンも増えていません。


ウクライナからの最近の報告を除き、旧ソ連内のもっとも大きな汚染をうけた地域においても、白血病の増加は観察されていない。


実際には、ガン発生率が、10万人あたり30人から56人に増えていた。


実数では、114万3182人中849人において、低線量被曝によってガンが発生した可能性があるという事です。


つまり、114万2333人は、放射能の影響を受けない。


しかも、これは、統計学的処理であって、誰が放射能の影響のガンで死んだかは、判らないんです。


反原発の人々は、よく誤解していますが、過剰相対リスクが0.11増えるということは、11%ガンが増えるという意味ではないんですよね・・・


そして、マーチン・トンデル博士は「事故後の短い追跡期間だけ増加傾向にあるから、今は結論が出ない」と言っています。


また、この研究は、ガン発生率の違いが、放射能汚染の違いではなく、都市と地方など生活様式の地域差に起因する可能性も否定できないと、私は思います。


こんな論文を論拠にして、低線量被曝の危険性が高いと証明することは出来ません。




というわけで、京都大学原子炉実験所の原子力安全グループの諸先生方は、下記のように言っています。


低線量被曝リスク評価に関する話題紹介と問題整理(今中哲二先生)

http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/seminar/No99/imanaka041215m.pdf


以下、転載

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ECRRのリスク評価は、「ミソもクソも一緒」になっていて付き合いきれない.

ECRRに安易に乗っかると、なんでもかんでも「よく分からない内部被曝が原因」となってしまう.

湾岸戦争でのDU弾使用とその後のバスラ住民の「健康悪化との相関関係」に関するデータはたくさんあるが、「放射線被爆との因果関係」を示唆するデータはほとんどない.

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また、次のようにも言っています。


線量放射線被曝とその発ガンリスク(今中哲二先生)

http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/seminar/No110/kagaku050711.pdf


以下、転載

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ECRRは、線量・効果関係が極低線量でいったん極大値を示すという「2相(Biphasic)モデル」(図2)を提唱するとともに、ウランやストロンチウムといった核種の内部被曝はICRP の評価より300~1000 倍危険であると主張している。英国セラフィールド再処理工場、フランスのラアーグ再処理工場、ドイツのクリュンメル原発周辺などで観察されている小児白血病の増加がECRRのモデルで説明できるとしているが、そのモデルを実証するデータが十分に示されているとは言い難い。

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以上のように、ECRRモデルは、世界的にみても、科学的には論拠に乏しく信頼性が低いわけです。


つまり、低線量被曝の危険性を高く見積もっているから、正しいわけではありません。


「原発推進だから、低線量被曝の危険性を低く見積もる」という色眼鏡で見ない方が良いと思います。


放射線の危険性を過大評価したECRRモデルを論拠に下記のように裁判を起こしても、科学的に否定されるでしょう。


広瀬隆氏が山下教授や高木大臣、東電幹部らを刑事告発

http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1169


そして、ECRRモデルを論拠に間違った活動をしていたら・・・


社会を恐怖のどん底に落とし入れておいて、将来、ガンや奇形が大発生しなかったら・・・


ブログに書き綴った事やネット上の映像によって受けた精神的被害を、逆に刑事告発されるでしょう。


今中哲二先生が言われるとおり、ECRRモデルには、安易に乗っからない方がいいです。


一応、ご忠告しておきます。