口蹄疫流行での防疫ラインについて考察します | クラスタ民主主義システム研究室

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ウィルスの流行を食い止めるためには、防疫ラインを設定しなければなりません。


昨年の新型インフルエンザでは、海外で流行が始まった時、日本の国際線の空港で防疫ラインが設定され、サーモグラフィを使って入国者の体温測定が行われたことは記憶に新しいと思います。


しかし、この空港での防疫ラインは、WHOのマニュアルにはなく、現時点では殆ど効果が無かったという評価になっています。防疫ラインでは、確実にウィルスを遮断しなければ防疫ラインの意味がありませんが、新型インフルエンザの流行では、体温測定しても、潜伏期だった人々がチェックをすり抜けたからです。


では、現在の口蹄疫での防疫ラインは、どうでしょう。


宮崎県の県境で車両の消毒が行われ、九州各県の県境で車両の消毒が行われています。中には、消毒槽を通過させてタイヤだけを消毒している消毒ポイントもあります。こうした消毒ポイントは、乗っている人や荷物は消毒していないようです。また、載せている家畜が潜伏期なら消毒しても効果はありません。


中には、遠く離れた本州や北海道の空港で、靴だけ消毒マットで消毒を試みている場合もあるようですが、この時、手荷物や服は消毒していません。


こういう、ウィルスの遮断が甘い防疫ラインでは、新型インフルエンザの時と同様にチェックをすり抜けてしまい、殆ど実効性はありません。


では、どこに防疫ラインを設けたら、一番効果的なのでしょう?


オーストラリアでは、国際空港で手荷物を全部開けて、口蹄疫ウィルスが潜んでいるような食べ物が無いか、徹底的にチェックしています。防疫ラインを設定するのであれば、徹底的に行う必要があります。


イギリスでは、口蹄疫が発生した畜産農場の周囲に「KEEP OUT」の黄色いテープを張り巡らせて、車両、人、家畜の移動を徹底的に制限しています。


ですから、今後は、口蹄疫が発生したら、イギリスのように、直ちに発生場所の周辺を完全に封鎖すべきです。


発生場所の周辺、何キロで遮断するか・・・決めるためには、疫学調査結果を参考にしなければなりません。これまでの伝染状況を見ると、ほとんどの例で農場と農場の距離は1km以下です。


中には、数キロから数十キロ離れて伝染していますが、これは、車両を介した伝染ですから、車両を介さない伝染範囲と考えれる半径1~1.5キロの同心円で農場周辺を遮断することが必要です。


理論的には、発生農場周辺を巨大なテントで覆い、空気も虫も鳥も人も車両も遮断すれば、口蹄疫ウィルスが他の地域に伝染することは無くなるわけですが、現実的には不可能です。(今は、ブルーシートで覆っているようですが・・・)


では、次善の策はというと、発生農場の周囲1kmで全ての道を検問で遮断することです。中に入る時には、防疫用の服を着て入り、外に出るときには服を脱ぎ捨て、ウィルスを外に出さないようにします。出入りする車両は徹底的に洗浄消毒し、人も手足や靴など同様に洗浄消毒します。


この発生農場周辺1キロの防疫ラインで徹底的に遮断すれば、外部に口蹄疫ウィルスが伝染する可能性を確実に低くすることが出来ます。このように、どれだけの距離で防疫ラインを敷くべきか検討するために、疫学調査は大切です。


防疫ラインを、1キロではなく、5キロや10キロに設定すると、円周が長くなりますから、実現困難です。疫学調査で、日本の畜産状況において、車両や人の移動以外の要因、すなわち、風や虫や鳥によって伝染していく距離を推測し、できるだけ狭い範囲の防疫ラインを設定することが重要となります。


もちろん、これまでの半径10kmの移動制限区域や半径20kmの搬出制限は続ける必要があるでしょう。


こうした実効性がある防疫ラインを敷けば、県境の消毒や、遠く離れた空港の消毒など必要なくなるのです。


新型インフルエンザでもそうだったように、目に見えないウィルスが相手の戦いで、何処にいるか判らないウィルスを消毒だけで防ぐことは不可能なのです。


無闇に消毒して廻るより、発病する人(家畜)を早期発見して隔離すことこそが、最善の策なんですが、リーダーが岡本先生などの専門家の意見を聞かないから「消毒、消毒」というプロパガンダが流れて、皆さん、無用な出費と労働を強いられています。


ウサギ