堂山物語 第84話 | エラー|Ameba(アメーバーブログ)

堂山物語 第84話

僕とミキはいつから付き合いだしたのかは曖昧だった。



当時、ミキは4年半も付き合った同い年の彼氏がいた。

ミキの話によれば歯科技工士というカッコイイ?仕事をしていたらしい。



一方の僕は、中華料理屋とてっちり屋で働くウリセンボーイ…



普通の人間なら間違いなく歯科技工士を選ぶだろう。



というより、そんな中華屋くずれのウリセンボーイなんか目にもくれないだろう。



しかし決定的だったのはミキも僕も第六感というか


あっこのヒト!合う!


と通じるものがあったのだろうか…



気が付いたら普通に一度、外で食事をする約束をしていた。


2月の中旬には、ふぐふぐもようやく繁忙期を終えてバイトも休みをくれる事があった。



堂山 「今度さぁ、どっか行きたいとこある?」



ミキ 「うーん、前に言ってた飛行場かな・・・?」



Rの店内で何回か話したことがある伊丹空港の滑走路のことだった。

僕は子供の頃から、この川沿いの飛行機が真上を飛んでいる場所が好きだったのだ。



堂山 「はぁって、そんなゴハンはタコヤキやで?駅前の!」



ミキ 「もっと、なんかイイのないの!?」



堂山 「じゃあ、ローソンのジャイアントフランクとカラアゲくんの赤もつけるわ。」




僕らの初デートは駅から30分以上も歩いていく飛行場見学だった。



しかも季節は真冬。



待ち合わせをした阪急電車の駅でも夜は、かなり寒かった。



飛行場なんて極寒だった。



こんな寒くて歩きつかれるデートなんて普通は男も女も絶対イヤだと思う。



けど、僕とミキはマニアなのだ。

結構、この飛行場デートを楽しんでいた。



飛行場には、その他カップルが数組いた。

その中の1組の高校生らしきカップルが大声ではしゃいでいた。



女の子 「ねえねえ!ココのおまじないって知ってる?」



男の子 「何それ?」



女の子 「その日の最後に着陸する飛行機に向かってお祈りすると叶うねんて!」



男の子 「でも、どれが最後なんかわからんやん!」



女の子 「だから、おまじないなんよー。

      間違えて最後から2番目とかやったら、もう、その日は無効やねんて!」



大阪伊丹空港は住宅地に隣接している為に

飛行機の離着陸は午後9時以降は禁止されている。



8時半くらいから9時までに着陸するどれかが最終便なのだ。



ヤマを張って8時45分くらいの飛行機にお祈りしたら、もう1本くる事もあるし、

もう1本くると思ってボーッとしてたら、それで最終便だったりもする。




ミキ 「聞いた?今の?」



堂山 「聞いた聞いた!っていうか昔、そんなん言うてたような気がするわ!」



ミキ 「やってみようよ!」



堂山 「OK!OK!ってさっぶいの~!」



そして、その日の8時50分頃の飛行機に僕達はお祈りした。

幸運にも、それがその日の最終便だった。



そして、震えながら僕らはキスをした。



こうして、この日を境にして僕はミキの二股関係に参戦したのであった。


続く