堂山物語 第85話 | エラー|Ameba(アメーバーブログ)

堂山物語 第85話

僕はミキの二股に参戦してからRには行かなくなった。



同時期にふぐふぐのバイトも繁忙期を終えて終了した。



また堂山町へ舞い戻る日々がやって来るかの様に思えた。



しかし、この時に本業である遮那王で大きな出来事が2つ発生する。



ひとつはハマダさんの退職だった。



ヒロさんと共に僕を可愛がってくれて料理を教えてくれて一緒に遊んだハマダさん。



僕が南川店長と衝突したら止めに入ってくれたハマダさん。



イクくんの近況情報(第54話参照) を報告してくれるハマダさん。



ハマダさんは遮那王を離れホテル業界に舞い戻るらしい。

僕はハマダさんという頼れる存在がひとり居なくなることに大きな不安を覚えた。





しかし僕は天性のヒキの強さを持っているというか、もうひとつの人事が発表された。



それは南川店長の京都烏丸店への異動だった。



発表された瞬間からお店のメンバー全員がオモテには出さないが喜びに満ちるというか

俄然張り切って仕事をするようになって行った!



皮肉にも南川店長異動の発表で、この年の3月は対前年比110%の売上を上げてしまう。



しかし最後まで南川店長は


南川 「この東通で最後に、これだけの売上あげれたんだぜ!

    京都もガンガン行ってやるよ~!ダハハハハ!」


と勘違いしていた。事実、烏丸店の売上は若干であるが落ちてしまう…






そして4月になりハマダさんは退職し、

店長に天王寺店からカタヤマ店長が赴任した。



カタヤマ店長は身長160センチくらいのちっちゃいヒトだった。



見た目は良いトコの家のおぼっちゃんって感じ…



喋る声が一般男子より1オクターブ高い…



よく中学校や高校でカッターシャツの1番上のボタンまで留めていたタイプと思われる…



人間的には、イイヒトなのだが残念な点が実務能力が乏し過ぎる…



後になってわかったがカタヤマ店長の店の売上が上がるのは

カタヤマ店長に仕事を任せると不安でしょうがないので

部下が今まで以上に物凄い頑張るので売上が上がるのであった。



東通店も例に外れることなく3月の好調をそのままに

4月も好業績を残すことができた。



ヒロ 「あかんわ~カタヤマ店長に案内は任せられへんわ~!」



いくらヒマな日だからといって、

8人掛けのテーブルにカップルを案内したカタヤマ店長は

お客様を案内することをヒロさんに拒否られた…




そして、ドリンクに回ってきてドリンクを一生懸命作っていた。




しかし、なんせ遅い!遅すぎるのだった。




オオサキ 「堂山くん!ちょっと手伝って来たって!」



オオサキ厨房長に言われ一番ホール業務もこなしていた僕がホールに出た時だ。



堂山 「店長?手伝いましょうか?」



カタヤマ 「お~ぅ!ゴメンね!たのむよ~ぉ!」



1オクターブ高い声で既にテンパっていた!



当時は焼酎はドリンクメニューの主力でなくカクテルが生ビールに次ぐ主力商品だった。



カタヤマ 「ねえ!堂山くん!?チャイナブルーってどうやって作るの?」



堂山 「え!?パライソとブルーキュラソにグレープフルーツ(ジュース)ですよ!」



カタヤマ 「えっチャイナは入れないの?」



堂山 「いや!だからチャイナっていうリキュールなんか無いでしょ!?

     ええから!はやく作って下さいよーーーーーーーーー!」



大丈夫なんだろうか・・・?このひとは・・・

そう思いながらも僕はドリンクを手伝い続けた。



ホールの女の子も手伝ってくれて、ちょっとドリンクが落ち着いて来た時、



カタヤマ 「ドリンクお願いしま~す!」



堂山 「店長?何作ったんすか!?」



カタヤマ 「え!?カシスオレンジだよ~ぉ!」



堂山 「何と何入れたんですか!?」



カタヤマ 「お前バカにするなよ~ぉ!!カシスにオレンジジュースだよ~ぉ!!」



どうやらカクテルの名称がそのままレシピになっているメジャーな物は作れるようだった。



そして、カタヤマ店長がまたドリンクを完成させた…



カタヤマ 「ドリンクお願いしま~す!」



堂山 「店長何作ったんすか!?」



カタヤマ 「コレはジンバックだよ~!」



堂山 「店長!?ジンバックのバックって何か知ってます?」



カタヤマ 「お前バカにするなよ~ぉ!!

       ジンジャーエールで割ることだろ!?わかるよぉ~!それくらい!」



するとそこへ、ヒロさんが一つのドリンクを持って戻ってきた。



ヒロ 「店長!?このドリンクお客様が違うって言ってますよ!!!」



ヒロさんが持ってきたドリンク。それはジンバックだった!



堂山 「店長!?ちょっともう一回ジンバック作ってみて下さいよ」



カタヤマ 「お~ぅ。わかったよ!」



堂山 「まずね。ジンバックのジンって、どれですか?」



カタヤマ 「お前なめるなよ~!コレの略だろ!?」






∑(゚Д゚)へっ!?






驚く事にカタヤマ店長の中では、ジンバックの 「ジン」 は


ジンジャーエール の 「ジン」 だったらしく誇らしげにジンジャーエールを手にしていた!







そのまま見ていると 「ジン」 (ジンジャー)を30mlいれて 

それを別のジンジャーエールで割っていた…



堂山 「って、

   それジンジャーエールやん!」



カタヤマ 「だからバックはジンジャーの事だろ!?」



堂山 「じゃなくて、

  ジンジャーをジンジャーで割ったら

  只のジンジャーでしょ!ヽ(`Д´)ノ」



カタヤマ 「え!?違うの!?」


このヒトの凄いところは

最初のジンジャーとは別に割る用の別のジンジャーエールを使っていた所だ…


っていうか普通は気付くだろ!?


このように遮那王の3年目は、天才的な店長の下で働く事になったのである。


続く