堂山物語 第26話 | エラー|Ameba(アメーバーブログ)

堂山物語 第26話

僕は工業高校に進学した。


特に将来なりたいモノが無かったので

ラグビーのまあまあ強い高校に入った。



練習は今思えばキ○ガイと思えるくらいの猛練習量。



本当にあっという間に3年間が過ぎていったかに思える。



ひょっとしたら僕の人生で一番無心で

頑張っていた時期かもしれない。



只、無心が故に練習の為の練習の繰り返しにはしる。

試合を想定し自分が何をしなければならないのか?

そういう事は考えずに練習していたので結果は出せなかった。



最後の大会の最後の試合でも僕はベンチだった。

まあカッコよく言えばリザーブだ。

部員が80人くらいいた中での22人に選ばれてはいたので

まあまあといったところか…



この最後の大会を迎える前に僕は堂山町に足を踏み入れる。

(第1話参照)

この時は文字どおり足を踏みいれただけ。

いわゆる堂山の住人になったわけでは、ない。







3年間続けたクラブの最後の大会。

準決勝までは余裕でコマを進める事は抽選の時点から明確だった。



只、準決勝で対戦するのは昨年度の全国覇者。





僕達レギュラーじゃない奴らが全員

「さすがに勝てへんやろぅ~」

と思っていた。





試合結果は残り3分で逆点され準決勝敗退だった。

そう、とても惜しかった試合だったのだ。





ノーサイドのホイッスルが鳴ると同時に

同じリザーブで隣に座っていたオオサキが泣き崩れた。

みんな泣いていたけど、僕の目からは涙は出なかった。





やはり僕は小学校の終わりの会の時といい(第16話参照)

どこか冷めた感じだったのだと思う。



「さすがに勝てへんやろぅ~」って言ってた

泣いているリザーブ連中を凄く冷静に抱きかかえてた僕がいた。





そしてクラブを引退した…





兎にも角にもクラブ第一で学校に行っていたので

何かをしないと腐ってしまうような気がしたので

とりあえずバイトをさがすことにした。



この時は大スポのようなスポーツ新聞ではなく

ちゃんとしたアルバイト雑誌に目をやる。



みつけたのは梅田から電車でふた駅の所にある

「ふぐふぐ」という、てっちり屋さんだった。


動機は食事付きの欄

「ふぐが食べれるかもしれない!」



面接には社長なるオッサンがでてきた。



でもジーパンに白いロンTに長靴スタイル…



持参した履歴書を渡し面接が始まる。


社長「君が堂山君か?」


堂山「はい…」


社長「なんかバイトしたことあるか?」


堂山「あのチラシ配りなら短期でちょっと…」


社長「ピンサロか!?」


堂山「ち・違いますけど…」


社長「ピンサロ行った事あるか!?」


堂山「イヤ…無いですけど…」


社長「そうか…ヨシ!ほんなら来てみるか!」


堂山「はい。ヨロシクお願いします。」




今、思い出してもこの面接での採用基準が理解できない。

本当にコレだけの会話だったのだ。


モチロン週に何日は入れるとかの話もあったのだが

それはバイト初日に社長の奥さんとした。


確実に面接時の会話はコレだけ…



この時、僕の嗅覚というかカンというものが確実に働いた。


「この店はアヤシイ…」


晴れて僕は「ふぐふぐ」でアルバイトをする事が決定した。


この時には僕のカンどおりに、この店は

いろんなヒトと出会い、学び、気付かされた

僕の人生を左右した、てっちり屋さんになるとは

もちろん想像だにしておらず、


「やった!ふぐが食べれる!ふぐが食べれる!」


今だかつて食べたことの無いふぐだけに思いをよせているだけだった。


続く